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文字列の部屋

そして月の光

2004.4. 田野呵々士

あなたと初めて会ったとき
見えない糸で結ばれていることを知った
十分の一世紀
あなたが先に生まれたことなんて
夏の夜風に髪がなびくようなこと

気を引くために
私の親友を選んでしまったあなた
友情より愛欲を選んでしまった私
裏切り者となった二人
気がつけば夜のベンチで
激しく抱き合っていた

生きていて良かったと思えた日々
それは熱ければ熱いほど持続しないもの
あなたは私の人生の創作を試み
私はそれを受け入れられなかった
やがて笑顔は消え
それに耐えられなくなった私
そして破局は訪れた

晩秋の朝もやに霞むバス停
私が恋の終わりを宣言すると
あなたは目を吊り上げ
よくそんなことが言えるわねと言って
結んでいた髪を振りほどき姿を消した

それでもあなたは私にとって
生まれて初めて魂の底から微笑み合えた人

冷たかった肩
甘い髪の香り
そして月の光

文字列の部屋  客間

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