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文字列の部屋

メガネがない

2003.6. 田野呵々士

「メガネがない メガネどこいった?
私の場合そう言って大騒ぎすると
たいがいどっかから出てくるんだ」
君はメガネをなくすたびに
あたかも自慢するようにそう言う

「どっかから出てくる」って
まるでメガネが歩いて来るようだけど
君の大きな独り言をほっておけなくて
周りの人が探してくれたんじゃないか

見つけた人に「ありがとう」と言って
いつもそれでおしまいだけど
君は間違ってはいない
「探してください」なんて
誰にも頼んでないんだから

今度は「○がない。」
と言って大騒ぎしてたけど
結局○は見つからなかったね

だって○は
北風のように人を責め立てて
出てくるような代物じゃないもん

殻に引っ込んだ蝸牛が静寂の中
少しづつこわごわと出てくるように
裏切られた心には太陽の光を当てないと
中の○はなかなか表には出てこない

たしかに淋しさに耐えかね
君を抱き締めたのが事の始まりだったけど
君は私の心がなぜ淋しいのか
知ろうとはせず
光を当ててみることすらしなかった

「○がない。」
その独り言と大騒ぎは
山にこだまして聞こえてきたけど
私一人だけそこに参加しなかった
じっと目をつぶって

君には
自分の目で
自分の耳で
自分の鼻で
私の○を探し当ててほしかったから

その思いが何だか知ろうともせず
青い空へ猫の冬毛が舞い上がるように
君はこの手から離れていった

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