竹という植物を科学的に分類すると、意外にもイネ科なのだそうで、その中のタケ亜科なのだそうだ。
周辺の広範囲にわたって地下茎を張り巡らせる性質があり、そこから出て来る芽がタケノコだ。そのため、栽培用に手入れされていない竹林なら、その中よりも、むしろその周辺に出て来る傾向がある。
ここでご紹介するタケノコが出る時期は春から夏にかけてだが、桜前線と同じく地域によっても種類によってもそれが異なっている。ちなみに、新潟地方の標高約300メートルに位置する我が家で最初に出るタケノコはモウソウチクのもので、早ければ4月末、遅くとも5月中旬には初物が採れる。その後何種類かのタケノコが7月下旬までの間に次々と出続ける。
タケ亜科には様々な種類があるようだが、日本で食用にされているのは主に、モウソウチク(孟宗竹)、ハチク(淡竹)、マダケ(真竹)の三種類だ。それは一本あたりの収量が比較的多いからで、生産性とか商業性にこだわらなければ、ここで取り上げている他のタケノコも食用となり得る。
マダケ属の大型の竹。学名:Phyllostachys pubescens Mazel
この竹は上の画像のように表面に白い粉が吹いたようになっている。
日本の竹では多分最大だろう。我が家の竹林には、上の画像のように直径約20センチ近くのものがあるが、そのように太い竹からは、やはり大きなタケノコが出る確率が高い。
我が家でまず真っ先に出るのがこれのタケノコで、早ければ4月末、遅くとも5月中旬には初物が採れる。
その皮はこげ茶色をしており、表面には細かい毛が生えているので、他のタケノコと見分けられる。
これは地上からほんの少し出た状態で収獲するのが最も良いとされているが、料亭で使うのならともかく、自家用であれば上の画像くらい出ても全く問題無い。
しかし、この上の画像くらいまで地表に出てしまったものは硬くて食べられないので、そうなる前に収穫しなければならない。「雨後の筍」という言葉の通り、雨が降った後には一挙に出て来るので、そのとき竹林周辺を巡回して一気に収穫する。
これを採るには地面の下から掘らなければならないが、その方法についてはタケノコの採り方を参照されたい。
採ってから1時間以内なら苦味が少ないので、そのまま調理することが出来る。我が家では収獲したものを新鮮なうちに全部に水煮にしてしまい、水に浸けたまま冷蔵庫で保存している。そうしておくと、必要なときにすぐ料理に使うことが出来る。
しかし、収獲してから空気に触れさせていると、時間が経つにつれて苦味が増してくる。それを抜くことを、「灰汁抜き(あくぬき)」という。
マダケ属の中型の竹。学名:Phyllostachys heterocycla
モウソウチクの突然変種で、観賞用の品種。水戸黄門様が持っておられる杖と言えば、わかる方もおられるだろう。
我が家でモウソウのすぐ後に出て来るのが、これのタケノコだ。形はモウソウのものとほぼ同じだが、皮の色がそれより薄く毛が少ない。また、普通だとモウソウよりも径が細いようだが、これが密生している場所からずっと離れたところに1本だけ出たものは、直径20センチ近くもあった。
そのタケノコを縦に切ってみると、節がやはり互い違いになっているのが面白い。
採れたてのものであれば、モウソウ同様灰汁抜きせずに調理して食べることが出来る。
味はモウソウと変わらないが、普通のものはモウソウよりも径が小さいし、なんといっても節の形が面白いので、それを目で楽しめるような切り方で調理したいものだ。
マダケ属の大型の竹。学名:Phyllostachys nigra f. henonis
これを「破竹」と書くのは間違いで、正しくは「淡竹」となる。「破竹」とは、竹が勢い良く割れることから「勢いが盛ん」という意味で、竹の品種のことではない。
原産は中国だそうだが、現在日本では野生化しているものもあり、全国に広く分布しているようだ。
モウソウチクよりもやや径が細く、マダケ(真竹)とほぼ同じ太さになる。
我が家でキッコウチクの次に出て来るのが、これのタケノコだ。早ければ5下旬には初物が採れる。
若い竹にはモウソウと同じように白い粉が噴いているが、タケノコはこの画像のように紫がかった薄茶色をしているので、他のタケノコとの見分けが付く。
地下部は硬くて食べられないので、モウソウチクのようにわざわざ鍬で掘る必要はなく、地表から30~50cmほど出たタケノコを根元からポキンと折って採ればよい。
収穫したハチクのタケノコ。ここから下は硬くて食べられない。
採ってから6時間以内のものであれば、皮を剥いてそのまま調理することが出来る。しかし、12時間ほど経ったものでは苦味を少し感じ、24時間後のものは、かなり苦くなるので、灰汁抜きが必要になる。
別名:古参竹(こさんだけ)。マダケ属の中型の竹。学名:Phyllostachys aurea
この竹は、その形状から昔はよく釣竿に加工されていたそうだ。なるほど、柄にあたる部分がちょうど滑り止めのような凹凸になっているので、これなら大物が掛かっても竿が手からすり抜けることはないだろう。
ハチクのタケノコの次に出るのがこのタケノコだ。時期にすれば大体6月の中頃。ハチクと同じく、地表から30~50cmほど出たものを根元からポキンと折って収穫する。
収穫から6時間以内なら、灰汁抜きせずに調理して食べることが出来る。
マダケ属の大型の竹。学名:Phyllostachys
モウソウチクやハチクは表面に白い粉が噴くのに対して、これはそうはならなく、特に新しいものだとつるつるして光沢があるので、主に竹細工に用いられる。
我が家で一番最後に出てくるのがこれのタケノコで、6月の下旬から7月の下旬ごろまでの間に出続ける。
竹自体の太さはハチクとよく似ているが、この画像のようにタケノコの皮はツルツルしており模様が特徴的なので、他のタケノコとの見分けを付けることが出来る。
これを採るにはハチクやホテイチク同様、地表から30~50cmほど出たものを根元からポキンと折ればよい。
採れたてであっても苦味があるので、必ず灰汁抜きしなければならない。
タケノコは、朝採りが一番エグ味が少ないということなので、モウソウチクのもので試してみた。すると、朝採りのものは5本中5本にエグ味がなく、夕採りのものは5本中3本にエグ味があったので、やはり朝採りがいいということに違いはない。しかし、いくら朝採ったものでも、すぐに調理しないで長時間放置しておくとエグ味が出てくるので、灰汁抜きが必要になる。
ここでご紹介しているタケノコのうち、ハチクとホテイチクとマダケは、地表から30~50cmほど出たものをポキンと折れば収穫出来るが、モウソウチクとキッコウチクは以下のような方法で収穫する。
ツルハシの反対側を使ってもいいが、筍鍬、唐鍬、バチグワなどといった道具があると便利だ。
まず、タケノコが養分をもらっている親竹の地下茎の方向を見定める。タケノコは、上左の図のように親竹の地下茎とつながっている。これを真上から見ると上中の図のように、そちらの方に向かって微かに湾曲しているので、地上からでも大体それを見定めることができるのだ。
次に、ここを狙って一気に鍬を振り下ろし、その地下茎を切断する。
そして、タケノコを地面からスポッと抜き取る。そうすると、タケノコ本体にも親竹の地下茎にも傷を付けずに採れるというわけだ。
タケノコの周囲を完全に掘ってこれをすれば、成功率100%になる。しかし、それには大変な労力がいるので、私は周囲の土を少し掘るだけで、あとは勘に頼っている。親竹の地下茎の深さやタケノコの太さによって、鍬を入れる位置が微妙に違うので、それだと成功するのは10%くらい。しかし、ここらへんを狙うと大体上手に掘れると思っていいだろう。
赤紫色の突起のあるあたりは多少硬くてもまだ食べられるが、そこから下の髭根が生えているあたりは固くて食べられないので、調理の際にどうせ切って捨てることになる。そのため、採ってすぐに調理するか茹でて保存するのであれば、下の画像のような程度に採れれば問題ない。
親竹から切り離したタケノコの鮮度は急速に劣化するので、収穫後はなるべく迅速に処理した方が良い。
タケノコの保存 | タケノコの灰汁抜き |