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だいどころ

インドカレーの醍醐味(だいごみ)

2004.03.21
更新 2017.02.16

食べ飽きしないインドカレー

沐浴場  私がパキスタン、インド、スリランカ、ネパールの四ヶ国をぐっるっと回って旅したのは三回、延べにして二年足らずの滞在だったが、その間の三度三度の食事は殆ど毎回大衆食堂で食べる現地の伝統的な料理だった。その多くは、日本で「インドカレー」と言われているものだ。
 他の旅行者との付き合いで、ツーリスト向けの食堂に入ることもあったが、そこで注文するのは、やはり現地風の料理のことが多かった。更に、比較的長期間同じ場所に滞在するような場合は、市場などで食材を買い集めて自炊することも多々あった。その土地でしか味わえないものを食べ、それを自分でも作ってみたかったからだ。
 このようにして、毎日のようにカレーのような料理を食べても、私はそれに飽きることがなかった。なぜなら、様々な食材と様々な香辛料の組み合わせのバリエーションが非常に豊富だからだ。
 このような料理を一言で「カレー」と言ってしまうことは、日本の煮る料理全てを「煮物」と一言で言うことと同じようなことだ。日本でも豆、芋、鶏、魚などの素材によって呼び方が違っているし、地方によってそれぞれ郷土色がある。しかも、その各家庭に於いても、それぞれ独自の味があることに変わりはないからだ。

インド料理の発想

 今では国民食のようになっている日本のインスタントカレー。これは、19世紀の植民地時代にインド料理を食べたイギリス人が、シチューのような自国の煮込み料理に香辛料をいろいろ加えて考案したものが元になっているようだ。そのため、ここではこれをインド料理すなわち「インドカレー」とは区別している。
 さて、このインスタントカレーというものは、より多くの人に「美味しい」と思われ、よく「売れる」ように作られている。なぜなら、その生産者と販売者の利益にならなければならないからだ。
 ところが、伝統的な家庭料理だとそうではない。日本の各家庭のお母さんはむかし、「体にいいから」「お金がかからないから」ということで、自家製の漬物や小魚の佃煮(つくだに)、海苔や旬の食材を食卓に並べてくれていた。カレー文化圏でもそれは同じことなのだが、あちらでは何千年も前からのデータを元にして体系化されており、一般家庭の人々もその断片的な知識を持ち合わせているようなのだ。
 これは元々医食同源、つまり香辛料や食材が人の体に対して及ぼす生理的医学的影響に考慮したところから始まったことらしい。そのため、食べる人の体質や体調などに考慮しながら、暑い日には身体を冷やし、寒い日には心と身体を温める料理を作るということになる。
 ここで気を付けなければならないのが、必ずしも「美味しい」=「体に良い」、「売れる」=「体に良い」とは限らないということだ。戦後の日本人の食生活の激変によって、それまで無かった健康へのさまざまな不具合があることが指摘されているということを、皆様はご存知のことだろうと思う。
 それで極端な言い方をすれば、薬効成分のある香辛料を多用した料理を常食するなら、その土地の気候風土と食べる人の体質に合った香辛料と食材とで調理することが望ましいということになる。逆に言えば、灼熱の砂漠地方の郷土料理を日本の雪国の冬に食べ続けると、身体に変調をきたす可能性があるということだ。
 このページで私は、「カレー」という言葉を使ってはいるが、伝統的なインド料理に対しては、私たち日本人が持っている「カレー」の概念を一旦捨ててしまった方が理解し易いと思う。現在の日本の一般的なカレーと伝統的なインド料理は、このようにしてその発想が異なっているのだから。
 もう一言付け加えるならば、私は日本のインスタントカレーを批判しているのではない。「商業的利益のために数々の添加物を入れている食品よりも、余計な物が入っていない自作の料理の方が好き」ということを個人的にアピールしているだけのことだ。

現地の言葉について

 インドの公用語はヒンディー語で、英語と同じく向かって左から右に読む。インドには他にも、タミール語、ベンガル語、カンナダ語など主要な言語が多数ある。英語も公用語になっている。
 パキスタンの国語はウルドゥー語で、向かって右から左へ読む。公用語は英語。
 スリランカの国語は、シンハラ語とタミール語。英語は公用語的に通じる。
 ネパールの公用語はネパール語。観光地でなら英語はわりと通じる。

主な香辛料と香味野菜

 インド系料理のベースとなるのが香辛料(英語:spice、ヒンディー語:मसाला (masala)、ウルドゥー語:(masala)مسالا)と香味野菜だ。日本のカレーで言えばルーやカレー粉の原料となっているものだ。
 現地では等級が細かく分かれていて、高い等級の物は高価になるが、その分味も香りも優れている。
 料理に使用する際は、果実や葉や種子を丸ごと用いるもの、粉末かペーストか細切れにして用いるもの、その両方が可能なものがある。この下の表の最後の項目「丸/砕」で、そのいずれかが使用可能なものは「〇」、不可能なものは「X」とし、画像があればその下に表示した。
 近頃の日本では、日本名よりも英語名で親しまれているものも少なくないと思う。
日本名
英語名
ヒンディー名
ウルドゥー名
部位特徴または性質薬効その他丸/砕
唐辛子・ナンバン
chili・red pepper
मिर्च (mirch)
लालमिर्च (lalmirch)
(mirch) مرچ
(lalmirch)لالمرچ
果実強烈な辛味と若干の甘味がある。
カレーには最も普遍的な香辛料の一つ。
世界中で多くの種類が栽培されている。日本の一味唐辛子は辛さだけが目立つので、インド料理にはふくよかな味わいのインド産を使うのが望ましい。
種子を除去して使う。
ビタミンAとビタミンCが豊富。
辛味成分のカプサイシンには発汗・強心・体脂肪の燃焼を手助けする作用がある。
一瞬身体を温める効果があるが、発汗によって最終的には冷える。
〇/〇
No Image/唐辛子粉
コエンドロの実
coriander seeds
धनिया (dhaniya)
(dhaniya) ھنیہ
種子フルーティーな香り。
カレーには最も普遍的な香辛料の一つ
身体を冷やす〇/〇
No Image/コリアンダー・パウダー
コエンドロの葉
coriander leaves
धनिया पत्ता
(dhaniya patta)
ھنیہ پتہ
(dhaniya patta)
カメムシの屁のような香りだが、アジアでは最も人気の高いハーブの一つである。
薬味として主に生で使われる
〇/〇
馬芹(うまぜり・ばきん)
cumin
जीरा (jeera)
(jeera) جیرا
種子北インドやパキスタンのカレーでは最も普遍的。
日本のインスタントカレーの香りで最も目立っているのもこれだ。
漢方では胃薬として用いられる
身体を冷やす
〇/〇
No Image/クミン・パウダー
鬱金(うこん)
turmeric
हल्दी (haldi)
(haldi) ہلدی
若干の苦味と鮮やかな黄色をしていて、カレーには欠かせない。利胆・健胃・肝機能の増進作用。X/〇
No Image/ターメリック・パウダー
黒胡椒(くろこしょう)
black pepper
काली मिर्च
(kali mirch)
کالی مرچ
(kali mirch)
種子強烈な香りと独特の辛味がある。
原産地のインドでは意外にも、料理でこれをあまり用いていない。
健胃作用
身体を温める
X/〇
黒胡椒/黒胡椒粉
茴香(ういきょう)
fennel seeds
सौंफ़ (saunf)
(saunf) سونف
種子甘い香りと爽やかな苦味がある。
インド・パキスタンでは加熱する料理よりも、アチャールという漬物に用いられたり、食堂での食後の清涼剤としてお会計伝票と一緒にサービスで出される方が多いかも。
消化促進・消臭・肥満防止や緩下作用〇/〇
茴香(ういきょう)/No Image
肉桂(にっけい)
cinnamon
दालचीनी (dalchini)
(dalchini) دالچینی
樹皮甘い芳香がある。
単独ではカレーよりも菓子類に用いられることの方が多い。
発汗・発散・健胃作用
身体を温める
X/〇
No Image/シナモン・パウダー
小荳蒄(しょうずく)
cardamon
cardamom
इलायची (ilaichi)
(ilaichi) ئلایچی
種子鋭い香り。
皮を除去して中の黒い種子を用いる。
揮発性なので、粉にする場合は調理の直前にする。
健胃作用〇/〇
カルダモン/No Image
丁子(ちょうじ)
clove
लौंग (laung)
(living) لونگ
花蕾甘く強い香りと若干の辛味。
主に肉料理や後述のガラムマサラに使用される。
健胃作用
身体を温める
〇/〇
クローブ/No Image
肉荳蒄(にくずく)
nutmeg
जायफल (jayphal)
(jayphal) جاویل
種子甘い香り。主に後述のガラムマサラに使用される。少量なら問題ないが、10g 以上摂取すると痙攣や幻覚症状を引き起こす。X/〇
ガラムマサラ
spice mixture
गरम मसाला
(garam masala)
رم مسالہ
(garam masala)
混合主に北インド料理の仕上げに、香り付けとして使われる。
シナモン・クローブ・ナツメグ・その他の混合。
各家庭や店によってその配合の割合が異なる。
各香辛料の薬効成分を参照X/〇
オオバゲッキツ
curry leaves
करीपत्ता
(karipatta)
کریپاتتا
(karipatta)
カレーの香りがする葉。
主に南インド料理に使われる。
乾燥よりも生の方が香りが鮮烈。
強壮作用〇/X
キマメ
Yellow Lentils
तूर दाल
(toor dal)
اتور دال
(atur dal)
種子豆特有の香ばしさ。
表皮を除去し、半分に割ったものを用いる。
南インドのサンバール(sambhar)には不可欠。
〇/〇
阿魏(あぎ)
asafoetida
assafoetida
हींग (hing)
(hing) ہینگ
茎の
樹脂
独特の香り。
生だと強烈な香りだが加熱するとマイルドになる。南インドのサンバール(sambhar)には不可欠。
X/〇
チョウセンモダマ
tamarind
इमली (imli)
(amlan) املن
果実強い酸味。
南インドのサンバール(sambhar)には不可欠。
食欲増進〇/X
大蒜(にんにく)
garlic
लहसुन (lahsun)
(lahsn) لہسن
球根辛味のある強い味と香り。
主に北インド料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮X/〇
にんにく/No Image
生姜(しょうが)
ginger
अदरक (adrak)
(adrak) ادرک
根茎甘味のある強い味と香り。
主に北インド料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮
身体を温める
X/〇
しょうが/No Image
玉葱(たまねぎ)
onion
प्याज (pyaj)
(piaj) پیاز
球根辛味と甘味。
主に北インド料理で使われる。
北インドではカレーの付け合わせとして、スライスした生が出されることもある。
滋養強壮〇/〇
トマト
tomato
टमाटर (tamatar)
(tamatar) ٹماٹر
果実酸味と甘味。
主に北インド料理で調味料やチャツネ(chutneys)というソースの原料として使われる。
日本の生で食べる品種よりも、イタリア料理などに使われるものが適している。
ビタミンAとCを多く含む。
リコピンには抗癌作用があると言われている。
X/〇
トマト/No Image
ココヤシ
coconut
नारियल (nariyal)
(naril) ناریل
果実甘味と香ばしさ。
主に南インドで調味料やチャツネ(chutneys)というソースの原料として使われる。
この油は南インドやスリランカの料理に不可欠。
X/〇

食材による特色

 日本のカレーのように、人参、玉葱、じゃが芋、肉といった3種類以上の食材を具にして一つの料理にするのではなく、単独か、多くても2種類の組み合わせにする。
食材ヒンディー語(読み)(読み)ウルドゥー語
野菜सब्ज़ी (sabzi)(sabzi) سبزی
मांस (maans)(gausht) گوشت
鶏肉मुरगी (murgi)(murgi) مرغی
मछली (machhli)(machhali) مچھلی
このように大別しているうえに、その食材の種類に応じて名称が細分化されていく。これは他のカレー文化の国々でも、言語は違うが大体同じようになっているようだ。
 また、一つの料理に肉と野菜、あるいは魚と野菜が具として共存していることは珍しい。

豆と野菜

 各国共に、これが料理の基本なので種類が多い。
 例えば、パキスタンと北インドの単独の食材を使った代表的なものでは、バインガン(ナス)ビンディ(オクラ)、パラク(ホウレンソウ)、チャナ(ヒヨコ豆)のカレーが挙げられる。同じく2種類の食材を組み合わせたものでは、アルー(じゃが芋)マタル(グリンピース)、アルー(じゃが芋)ゴビ(カリフラワー)が挙げられる。また、パラク(ホウレンソウ)パンニール(カッテージチーズ)も、野菜料理の中に分類される。
 ネパールではインドと同じような食材に加えて、サヤインゲンのドライカレーもごく一般的であった。

 インド全体からすると魚料理は珍しいが、こと西ベンガル州とケララ州では魚料理が一般的になっており、主にアジやサバのような青魚が汁気のあるカレーに仕上げられる。
 パキスタンでは、肉料理が発達している分、魚料理は殆ど見掛けなかった。
 スリランカには魚だけでなく、蝦や蟹料理などもあった。
 ネパールは海が無いが、川や湖の魚を食べる習慣がある。但し、汁気のあるカレーにするよりも、香辛料を塗した唐揚にしている方が多かったように思う。
 我が家のオリジナル料理では、サバのヨーグルト煮込みインド風がある。

 インド・パキスタンで最も一般的な肉は羊か山羊で、ネパールでは水牛だ。そして、いずれの国でも最も高級な肉は鶏肉で、豚や牛の肉を用いた料理は殆ど見掛けなかったのが日本とは対称的だ。
 インドとパキスタン共に最も一般的な肉料理はキーマだろう。これは、「具がマトンの挽肉だけのドライ風のカレー」と言えば、私たち日本人にはわかり易いと思う。また、挽肉を鉄の串に巻き付けて焼くシークカバーブは日本でも有名だ。

宗教による食材などの制限

 今の日本人にはあまりピンとこないことだが、明治に入る前だと日本でも、四つ足の生き物を食べることが仏教の教えで禁じられていた。ところが外国では、宗教による食材などの制限を厳格に守っている人が今でも少なくない。
 例えば、ヒンドゥー教徒は牛を食べないし菜食主義者 (Vegetarian) が多い。ここで言う菜食主義とは、不殺生の思想から来ているものだ。そのため、肉、魚、卵とそれらの加工品は食べないが、牛乳や乳製品は口にしても良いことになっている。というか、彼らはそれらを積極的に摂取しているように見える。
 イスラム教徒の場合は、その教義に基づいた方法で屠殺された肉しか口にすることはできない。その中でも、豚とその加工品はいかなる方法で屠殺されたものでも食べてはいけないことになっている。
 日本で一般的に売られている、いわゆる「合挽き肉」は牛と豚の混合なので、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が大多数を占めているインドとパキスタンのいずれの人も口にすることが出来なくなる。そのため、外国の方を家に招待してご馳走するときには、このことに気を付けなければならない。
 その一方、スリランカの仏教徒が多く住む地区ではこのような制限は無く、日本と同じような食材が用いられていた。

宗教名食材・飲料(制限の理由)
ヒンドゥー教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 卵(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
イスラム教
  • 豚(不浄)
  • イスラム教のやり方以外で死んだ動物の肉(不浄)
  • 酒(祈りの妨げになる)
シク教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 酒(不道徳)
ジャイナ教
  • 植物以外の動物全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
仏教
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
禁じられている
好ましくない


信者の多い宗教
インドヒンドゥー教・イスラム教・シク教・ジャイナ教
ネパールヒンドゥー教・仏教
パキスタンイスラム教
スリランカ仏教・ヒンドゥー教

国による特色

インド・パキスタン共通

 両国で最も一般的な肉料理といえば、やはりキーマだろう。
 国境を挟んで両国にまたがっているパンジャブ地方には、パラクと呼ばれるホウレンソウのカレーがある。日本のカレーの概念を覆す、緑色のペースト状だ。これは、材料さえ手に入れば、日本でも作れる。これを応用したのが、我が家の大根葉のインドカレーだ。

パキスタン

 この国では肉を使った料理が発達しているが、豚肉だけは肉屋に存在しない。また、魚料理も見掛けなかった。
 北から南の地方によって様々な美味しい料理があるが、中でも感激したのは、北西部にあるアフガニスタン国境に近い都市ペシャワールの街角で、夜間だけ営業している露天で食べた、ティッカというマトン料理だ。小さな平たい鉄鍋に油を敷き、香辛料香味野菜、トマトをジュッと炒めて、そこにマトンを放り込んでさっと炒めてあっという間に出来上がり。これをロティという小麦粉を練って平たく焼いたもので包んで食べるのである。とうとう病み付きになってしまい、私はこの街に滞在しているあいだ、この店に毎晩のように通った。

インド

南インドのバナナ畑  ヒンドゥー教徒が多いので、豆と野菜を用いた料理が特に発達しているが、イスラム教徒やシーク教徒も少なからずいるので肉料理もいろいろあるようだ。
 私はインド料理は全般的に好きだが、その中でも特に好きなのは、南インド料理である。日本と同じ米の文化であるせいか、とても親しみ易かった。なんと言っても、バナナの葉っぱをお皿にして、そこにまずご飯を山盛りにし、その上にサムバルという野菜入りのカレー味豆のスープをかけ、その周りに何種類かのカレーや漬物を少しずつ置いて素手で食べる、MILSという定食には特に感動した。肉気は全く無いが、豆が豊富に入ったサムバルと、最後にヨーグルトをカレーの混ざったご飯にかけて食べるので、栄養としては全く問題ないと思う。だから私は、インドで肉や魚は殆ど食べることなく、バリエーションの豊富な野菜料理で充分満足していた。
 南インド料理は、そこで使われている香辛料と食材の多くが日本では手に入りにくいのと、身体を冷やす作用が強いのが玉に傷だ。私が作れる南インド料理はサムバルとマッサーラドーサというスナックだけだが、いずれも夏季限定料理にしている。
 東インドのベンガル地方と、南インドのケララ州も、日本と同じく米を主食にしているが、こちらは魚もよく食べる文化なので、いずれも魚のカレーを食堂で食べまくった。いや、その美味かったこと! ケララ州では実際に作ってみたこともあった。

スリランカ

 人口で最も多いシンハラ族の殆どは仏教徒、次いで多いタミール人の殆どはヒンドゥー教徒である。
 この国は海に囲まれているせいか、四ヶ国のうちで最も魚料理が発達している。他の国ではメニューに存在していない、蝦や蟹などもあったのが嬉しかった。
 また、日本と同様米が主食なので、私の口に合う野菜料理もいろいろとあった。激辛の料理が多いのも嬉しい。
 それらの中で代表的なものが、「ライスアンドカリー」と呼ばれる、読んで字の如く、ご飯とカレーの定食だ。カレーの種類は店によって違うが、南インド同様、ココナッツ風味のものが多いのが特徴である。
 また、日本の鰹節と同じような「モルディブ・フィッシュ」という調味料があって、それを粉末にして入れたカレーは、魚貝類の旨味を倍増させる。
 多分中国人からの影響なのだろう、茹でた冷麦を冷ましたような「ストリングホッパー」という麺もあった。これにカレーを掛けて、手で混ぜながら食べるのが本式の食べ方だ。

ネパール

 多民族国家であるが、ヒンドゥー教徒、仏教徒が多い。その中でチベット系民族の料理は、インドカレーの範疇には入らない。
 ネパールでは、ダルバートタルカリーという定食が一般的だ。ダルという豆のスープを、バート(ご飯)にかけて、タルカリー(野菜のカレー)を添えて食べる、読んで字の如くのメニューだ。これをクッサーニという、ネパール特産の小型で激辛の青唐辛子を生で齧りながら食べると、さらに食欲が進む。シンプルなものだが、これに病み付きになってしまった私は、間借りしていた農家のおかみさんから大よその作り方を教わり、毎日自分で作って食べていた。

配膳

 主食を手前中央に置いて、その外側周辺に複数のおかずを配置するのが一般的だ。
 例えば定食を注文すると、ご飯やロティなどの主食を中心にして、その外側にナスのカレー、ホウレンソウとカッテージチーズのカレー、鶏肉のカレー、豆のスープ、アチャールという漬物などが置かれる。それらは、個別の皿に盛り付けられるのが一般的だが、「ターリー」と言う区画分けされた大皿に盛り付けられることもある。
 いずれにせよ、3種類以上の食材を一つの料理にしてしまう日本のカレーとは異なる形態だ。

食べ方

 日本だと熱々のご飯というものは最高とされるが、これらの国では主食が冷めていてもあまり問題ない。それとは逆に日本だと、カレー丼が冷めた状態で販売されているが、これらの国だとカレーは必ず熱々でなければならないようだ。
 近頃ではスプーンを使う人も増えてきたようだが、道具を使わずに右の手で直接食べるのがいずれの国でも伝統的な食べ方だ。最初私はそれに抵抗を感じたが、慣れてしまうと、ことこれらの国々の料理は、手で食べた方が断然美味しく感じるようになった。
 すると、何種類ものナイフやフォーク、スプーンなどの道具を使って食べる西洋のコース料理が、何だかロボットの食事のように感じられるようになった。
 食べるときに食器に手を添えはしても、日本でご飯や味噌汁を食べるときのように、食器を持ち上げて食べることは、これらの文化圏では、マナーに反する行為となる。また、日本で「犬食い」と言われているように、卓上に置かれた食器から直接口で食べることもマナー違反だ。
 背筋を伸ばし、卓上または地面に置かれた食器から、右手の指の第二関節から先だけに食材が付くようにして食べるのが、最も美しい食べ方とされる。実際にこれらの国の人々がそうして食べているのを見ると、確かに「美」あるいは「優雅さ」を感じる。

我が家でのレシピ

 ここでは、日本で比較的手に入りやすい香辛料と食材を使った、北インド風料理をご紹介している。

大根葉のインドカレー ナスのインドカレー オクラのインドカレー タケノコのインドカレー キーマカレー サバのヨーグルト煮込みインド風

 北インドのカレーの作り方のポイントは、まず最初に香辛料と香味野菜をたっぷりの植物油で炒めることにより、それらの香りをしっかりと油に移すことである。そして、そのとき加熱し過ぎてそれらを焦がさないということだろう。この二点に気を付ければ、殆ど失敗することはない。

だいどころ  客間


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