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だいどころ

インドカレーの醍醐味(だいごみ)

2004.03.21
更新 2017.07.13

食べ飽きしないインドカレー

南アジアの地図  私がパキスタン、インド、スリランカ、ネパールの四ヶ国をぐっるっと回って旅したのは三回、延べにして二年足らずの滞在だったが、その間の三度三度の食事は殆ど毎回大衆食堂で食べる現地の伝統的な料理だった。その多くは、日本で「インドカレー」と言われているものだ。
 他の旅行者との付き合いで、ツーリスト向けの食堂に入ることもあったが、そこで注文するのは、やはり現地風の料理のことが多かった。更に、比較的長期間同じ場所に滞在するような場合は、市場などで食材を買い集めて自炊することも多々あった。その土地でしか味わえないものを食べ、それを自分でも作ってみたかったからだ。
 このようにして、毎日のようにカレーのような料理を食べても、私はそれに飽きることがなかった。なぜなら、様々な食材と様々な香辛料の組み合わせのバリエーションが非常に豊富だからだ。
 このような料理を一言で「カレー」と言ってしまうことは、日本の煮る料理全てを「煮物」と一言で言うことと同じようなことだ。日本でも豆、芋、鶏、魚などの素材によって呼び方が違っているし、地方によってそれぞれ郷土色がある。しかも、その各家庭に於いても、それぞれ独自の味があることに変わりはないからだ。

インド料理の発想

 今では国民食のようになっている日本のインスタントカレー。これは、植民地時代にインド料理を食べたヨーロッパ人が、シチューのような自国の煮込み料理にインド産の香辛料をいろいろ加えて考案したものが元になっているようだ。その証拠というほどのものではないが、カレールーの「ルー」という言葉はもともとフランス語であり、インドの言葉ではない。そのため、ここではこれをインド料理すなわち「インドカレー」とは区別することにする。
 さて、このインスタントカレーというものは、その箱や袋の裏側に書いてある「作り方」の通りにやれば、誰が作っても大体同じような味になり、より多くの人に「美味しい」と思われ、よく「売れる」ように作られている。なぜなら、その製品の味を安定させ、その結果、生産者と販売者の利益になるようにしなければならないからだ。
 ところが、世界各地の伝統的な家庭料理だとそうではない。日本だって今でこそ少なくなったようだが、各家庭のお母さんは「体にいいから」「お金がかからないから」ということで、自家製の漬物や小魚の佃煮(つくだに)をはじめ、旬の食材で作られた郷土料理や家庭料理を食卓に並べてくれていた。インドカレー文化圏でもそれは同じようなことなのだが、あちらでは何千年も前からの食と健康に対する知識が体系化されており、一般家庭の人もそれを断片的ではあるが知っているようなのだ。日本でなら、「漢方」のことを断片的にでも知っている人がいるのと同じようなものだ。
 これは医食同源、つまり香辛料などの食材が人の体に対して及ぼす生理的医学的影響に考慮したところから始まったことらしい。もう少し具体的に言うと、食べる人の体質や体調に応じて、暑い日には身体を冷やし、寒い日には身体を温める料理を作るというようなことだ。
 ここで気を付けなければならないのが、必ずしも「美味しい」=「体に良い」、「売れる」=「体に良い」とは限らないということだ。戦後の日本人の食生活の激変によって、それまで無かった健康へのさまざまな不具合があることが指摘されていることを、皆様はすでにご存知のことだろうと思う。
 それで極端な言い方をすれば、薬効成分のある香辛料を多用した料理を常食するのなら、その土地の気候風土と食べる人の体質に合った香辛料の配合と食材の組み合わせで調理することが望ましいということになる。逆に言えば、灼熱の砂漠地方の郷土料理を日本の雪国の冬に食べ続けると、身体に変調をきたす可能性があるということだ。これこそ本来のインド料理の考え方なのであって、日本のインド料理店のメニューの数々は、その考え方を元にしてはいるが、その結果生まれた傑作の展示会のようなものだと思う。
 そのため、私たちが自宅でインドカレーを作る場合には、レストランのような料理もたまにはいいが、日常的にはやはりインド料理の原点をある程度元にして作った方が、長い目で見て食べる人の健康に良いはずだと思っている。具体的に言えば、昆布や鰹のだしや醤油などを入れるのは、西洋発祥のカレーの道から外れるようではあるが、インド料理の原点に帰れば、むしろ間違っていないということだ。
 このページで私は、インドカレーと書いてはいるが、伝統的なインド料理の場合、私たち日本人が持っている「カレー」の概念を一旦捨ててしまった方がより深く理解できるように思う。現在の日本の一般的なカレーとは、このようにして発想も歴史も異なっているのだから。
 もう一言付け加えるならば、私はインスタントラーメンを月に10食くらいは食べている。というわけで、私はインスタント食品を批判しているのではない。人類の健康に貢献するような英知が存在しており、私たちの身近にあるカレーは、わりと簡単にそこに近付くことのできる料理なのだということを、もっと多くの人に知ってほしい。そして、「動物性油脂」とか「アミノ酸」とか「砂糖」とかが、判で付いたように添加されている工業製品よりも、数少ない香辛料と食材の組み合わせによってでも、様々な味のバリエーションが好きなように楽しめるということを、もっと多くの人に知ってほしいということなのだ。それは、毎日忙しく働いている人よりも、お金はあまりないが時間がたっぷりある人に向いている。例えば、この私みたいに・・・(笑)
 最後にもう一言。何かのイベント会場などでインスタントによるカレーが出されたとき、私は感謝しながら残さず食べてます(笑)

現地の言葉について

 インドの公用語はヒンディー語で、英語と同じく向かって左から右に読む。インドには他にも、タミル語、ベンガル語、カンナダ語など主要な言語が多数ある。英語も公用語になっている。
 パキスタンの国語はウルドゥー語で、向かって右から左へ読む。公用語は英語。
 スリランカの国語は、シンハラ語とタミル語。英語は公用語的に通じる。
 ネパールの公用語はネパール語。観光地でなら英語はわりと通じる。

主な香辛料

 インド系料理のベースとなるのが香辛料(英語:spice、ヒンディー語:मसाला (masala)、ウルドゥー語:(masala)مسالا、タミル語:மசாலா (macālā)だ。日本のカレーで言えば、ルーやカレー粉の主な原料となっているものだ。
 現地では等級が細かく分かれていて、高い等級の物は高価になるが、その分味も香りも優れている。
 料理に使用する際は、果実や葉や種子を丸ごと用いるもの、粉末かペーストか細切りにして用いるもの、その両方が可能なものがある。この下の表の最後の項目「丸/砕」で、そのいずれかが使用可能なものは「〇」、不可能なものは「X」とし、画像があればその下に表示した。
 香辛料によっては、日本名よりも英語名で親しまれているものも少なくないと思う。
 その他、北インド全てで一般的に通じるヒンディー語、パキスタンの国語でありインドのイスラム教徒にも通じるウルドゥー語、南インドの主要言語の一つでありスリランカでも通じるタミル語でも表記してみた。なお、ネパール語の文字はヒンディー語のものとほぼ同じだし、香辛料の単語もほぼ同じなので、知っておくと重宝する。これらの単語のどれか一つをコピペしてググると、日本のサイトではなかなか見れないような画像のオンパレードを見られるかもしれない。食材に興味のある人は是非ともお試しあれ。
日本名
英語名
ヒンディー名
ウルドゥー名
タミル名
部位特徴または性質薬効その他丸/砕
唐辛子・ナンバン
chili・red pepper
मिर्च (mirch)
लालमिर्च (lalmirch)
(mirch) مرچ
(lalmirch)لالمرچ
ரெட் மிளகு (reṭ miḷaku)
果実強烈な辛味と若干の甘味がある。
カレーには最も普遍的な香辛料の一つ。
世界中で多くの種類が栽培されている。日本の一味唐辛子は辛さだけが目立つので、インド料理にはふくよかな味わいのインド産を使うのが望ましい。
種子を除去して使う。
ビタミンAとビタミンCが豊富。
辛味成分のカプサイシンには発汗・強心・体脂肪の燃焼を手助けする作用がある。
一瞬身体を温める効果があるが、発汗によって最終的には冷える。
〇/〇
No Image/唐辛子粉
コエンドロの実
coriander seeds
धनिया (dhaniya)
(dhaniya) ھنیہ
கொத்தமல்லி விதைகள் (kottamalli vitaikaḷ)
種子フルーティーな香り。
カレーには最も普遍的な香辛料の一つ
身体を冷やす〇/〇
No Image/コリアンダー・パウダー
コエンドロの葉
coriander leaves
धनिया पत्ता (dhaniya patta)
ھنیہ پتہ (dhaniya patta)
கொத்தமல்லி இலைகள் (kottamalli ilaikaḷ)
日本ではタイ語の「パクチー」、中国語(北京語)の「香菜(シャンツァイ)」として近頃広く知られるようになってきた。
カメムシの屁のような香りなので日本では依然として好き嫌いがあるようだが、アジアでは最も人気の高いハーブの一つである。
薬味として主に生で使われる
〇/〇
馬芹(うまぜり・ばきん)
cumin
जीरा (jeera)
(jeera) جیرا
சீரகம் (cīrakam)
種子北インドやパキスタンのカレーでは最も普遍的。
日本のインスタントカレーの香りで最も目立っているのもこれだ。
漢方では胃薬として用いられる
身体を冷やす
〇/〇
No Image/クミン・パウダー
鬱金(うこん)
turmeric
हल्दी (haldi)
(haldi) ہلدی
மஞ்சள் (mañcaḷ)
若干の苦味と鮮やかな黄色をしていて、一般的なカレーの黄色は主にこれによるものだ。
身体に良いからといって入れ過ぎると、料理が苦くなるので注意が必要。
利胆・健胃・肝機能の増進作用。X/〇
No Image/ターメリック・パウダー
胡廬巴(ころは)
fenugreek
मेथी (methi)
(methi) میتھی
வெந்தய (ventaya)
種子種子を焦がさないように炒めると、甘い香りと独特の苦みが得られ、インド文化圏だけでなく、中近東でもよく使われる。
薬効成分が豊富なので、薬としてもよく用いられる。
若い葉は日本のモヤシやカイワレ大根のように、野菜として使われる。
補腎、強壮、健胃。〇/〇
黒胡椒(くろこしょう)
black pepper
काली मिर्च
(kali mirch)
کالی مرچ
(kali mirch)
மிளகு (Miḷaku)
種子強烈な香りと独特の辛味がある。
原産地のインドでは意外にも、料理でこれをあまり用いていない。
健胃作用
身体を温める
X/〇
黒胡椒/黒胡椒粉
茴香(ういきょう)
fennel seeds
सौंफ़ (saunf)
(saunf) سونف
சோம்பு (cōmpu)
種子甘い香りと爽やかな苦味がある。
インド・パキスタンでは加熱する料理よりも、ヒンディー語とウルドゥー語でアチャール अचार、اچار(achār)、タミル語ではウールカイ ஊறுகாய் (Ūṟukāy)という漬物に用いられたり、食堂での食後の清涼剤としてお会計伝票と一緒にサービスで出される方が多いかも。
消化促進・消臭・肥満防止や緩下作用〇/〇
茴香(ういきょう)/No Image
肉桂(にっけい)
cinnamon
दालचीनी (dalchini)
(dalchini) دالچینی
இலவங்கப்பட்டை (ilavaṅkappaṭṭai)
樹皮甘い芳香がある。
単独ではカレーよりも菓子類に用いられることの方が多い。
発汗・発散・健胃作用
身体を温める
X/〇
No Image/シナモン・パウダー
小荳蒄(しょうずく)
cardamom
cardamom
इलायची (ilaichi)
(ilaichi) ئلایچی
ஏலக்காய் (Ēlakkāy)
種子鋭い香り。
皮を除去して中の黒い種子を用いる。
揮発性なので、粉にする場合は調理の直前にする。
健胃作用〇/〇
カルダモン/No Image
丁子(ちょうじ)
clove
लौंग (laung)
(living) لونگ
கிராம்பு (kirāmpu)
花蕾甘く強い香りと若干の辛味。
主に肉料理や後述のガラムマサラに使用される。
健胃作用
身体を温める
〇/〇
クローブ/No Image
肉荳蒄(にくずく)
nutmeg
जायफल (jayphal)
(jayphal) جاویل
ஜாதிக்காய் (jātikkāy)
種子甘い香り。主に後述のガラムマサラに使用される。少量なら問題ないが、10g 以上摂取すると痙攣や幻覚症状を引き起こす。X/〇
ガラムマサラ
spice mixture
गरम मसाला (garam masala)
رم مسالہ (garam masala)
கரம் மசாலா (karam macālā)
混合主に北インドやパキスタンの料理の仕上げに、香り付けとして使われる。
シナモン・クローブ・ナツメグ・その他の混合。各家庭や店によってその配合の割合が異なる。
熱で香りが飛びやすいので煮込んではいけない。火を止める間際に入れる。
各香辛料の薬効成分を参照X/〇
オオバゲッキツ
curry leaves
करीपत्ता (karipatta)
کریپاتتا (karipatta)
கருவேப்பிலை (Kaṟivēppilai)
カレーの香りがする葉。
主に南インド料理に使われる。
乾燥よりも生の方が香りが鮮烈。
強壮作用〇/X
阿魏(あぎ)
asafoetida
assafoetida
हींग (hing)
(hing) ہینگ
பெருங்காயம் (peruṅkāyam)
茎の
樹脂
独特の香り。
生だと強烈な香りだが加熱するとマイルドになる。南インドのサンバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
X/〇
チョウセンモダマ
tamarind
इमली (imli)
(amlan) املن
புளி (puḷi)
果実強い酸味。
南インドのサンバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
食欲増進〇/X

主な香味野菜と調味料

 インド系料理で香辛料と共に重要なのが、香味野菜と各種調味料だ。これらも日本のカレールーには、必ずどれかが含まれているはずだ。
 料理に使用する際は、果実や葉や種子を丸ごと用いるもの、粉末かペーストか細切りにして用いるもの、その両方が可能なものがある。この下の表の最後の項目「丸/砕」で、そのいずれかが使用可能なものは「〇」、不可能なものは「X」とし、画像があればその下に表示した。

日本名
英語名
ヒンディー名
ウルドゥー名
タミル名
部位特徴または性質薬効その他丸/砕
大蒜(にんにく)
garlic
लहसुन (lahsun)
(lahsn) لہسن
பூண்டு (pūṇṭu)
球根辛味のある強い味と香り。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮X/〇
にんにく/No Image
生姜(しょうが)
ginger
अदरक (adrak)
(adrak) ادرک
இஞ்சி (iñci)
根茎甘味のある強い味と香り。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮
身体を温める
X/〇
しょうが/No Image
玉葱(たまねぎ)
onion
प्याज (pyaj)
(piaj) پیاز
வெங்காயம் (veṅkāyam)
球根辛味と甘味。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
北インドやパキスタンの定食ではカレーの付け合わせとして、生のスライスが出されることもよくある。
滋養強壮〇/〇
トマト
tomato
टमाटर (tamatar)
(tamatar) ٹماٹر
தக்காளி (takkāḷi)
果実酸味と甘味。
日本では生食されることが多いが、主に北インドやパキスタンの料理では調味料として加熱して使われることの方が多い。その場合、日本の生食品種よりもイタリア料理などに使われている品種が適している。
北インドやネパールでは、チャツネ(chatne、चटनी、چٹنی)というソースの原料としては生で使われる。
ビタミンAとCを多く含む。
リコピンには抗癌作用があると言われている。
X/〇
トマト/No Image
キマメ
Yellow Lentils
तूर दाल (toor dal)
(atur dal) اتور دال
துவரம்பருப்பு
(thuvaram paruppu)
種子豆特有の香ばしさ。
表皮を除去し、半分に割ったものを用いる。
インド系料理では、日本の味噌汁のような存在であるダール(dāl、दाल、دال )という豆のスープで最もよく用いられる。また、南インドのサンバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
〇/〇
ココヤシ
coconut
नारियल (nariyal)
(naril) ناریل
தேங்காய் (tēṅkāy)
果実甘味と香ばしさ。
主に南インドで調味料やチャツネ(ヒンディー語:चटनी(chatne)、タミル語:சட்னி(chatni))というソースの原料として使われる。
これを原料としたココナッツオイルやココナッツミルクは、南インドやスリランカの料理に不可欠。
X/〇
マスタードオイル
mustard oil
सरसों का तेल
(sarason ka tel)
(sarason ka tel)
سرسوں کے تیل
கடுகு எண்ணெய்
(kaṭuku eṇṇey)
種子から抽出美しい黄色の半透明。
北インドやパキスタンではカレーや揚げ物に不可欠。日本のインド料理店では、この下に出ているギーをよく用いているようだが、インドやパキスタンの庶民の間では、むしろこちらの方が一般的だと思う。
ギー
ghee
घी (ghī)
(ghī) گھی
நெய் (ney)
バターオイル黄色の半固体または液体。
植物油に比べて高価なので、主にちょっと高級な料理に使われる。また、ヒンドゥー教の儀礼で使われることも多い。
栄養価が高く、ビタミン類が豊富。免疫機能を高める作用があることもわかっている。
ヨーグルト
yogurt
दही(dahi)
(dahi) دہی
தயிர் (tayir)
発酵乳強い酸味とほのかな甘味。
日本でプレーンヨーグルトは砂糖をかけて生で食べることが多いが、あちらでは塩味の料理に調味料として加熱して使われることも多い。ただし、ライタ(Raita)という料理では生で使われる。
南インド料理では、カレーの付け合わせとして生のものを小鉢に入れて出されることも多い。日本人の感覚だと「デザートなのかな?」と思ってしまうが、おかずをかけたご飯にこれを混ぜ、それらを混然一体にして食べるためのものなのだ。
腸内細菌の強い味方。
インドに多いヴェジタリアン(菜食主義者)にとって重要な蛋白源となる。

食材による特色

 日本のカレーのように、人参、玉葱、じゃが芋、肉といった3種類以上の食材を具にして一つの料理にするのではなく、単独か、多くても2種類の組み合わせにする。
食材ヒンディー語(読み)(読み)ウルドゥー語タミル語(読み)
野菜सब्ज़ी (sabzi)(sabzi) سبزیகாய்கறி (kāykaṟi)
मांस (maans)(gausht) گوشتமாமிசம் (māmicam)
鶏肉मुरगी (murgi)(murgi) مرغیசிக்கன் ( cikkaṉ)
मछली (machhli)(machhali) مچھلیமீன் (mīṉ)
 このように大別しているうえに、その食材の種類に応じて名称が細分化されていく。これは他のカレー文化の国々でも、言語は違うが大体同じようになっているようだ。
 一つの料理に肉と野菜、あるいは魚と野菜が具として共存していることは珍しい。
 厳格なヒンドゥー教徒の多い南インドでは、他の地域に比べて肉を食べる人の比率がかなり低くなる。

豆と野菜

 各国共に、これが料理の基本なので種類が多い。
 例えば、パキスタンと北インドの単独の食材を使った代表的なものでは、バインガン(ナス)ビンディ(オクラ)、パラク(ホウレンソウ)、チャナ(ヒヨコ豆)のカレーが挙げられる。同じく2種類の食材を組み合わせたものでは、アルー(じゃが芋)マタル(グリンピース)、アルー(じゃが芋)ゴビ(カリフラワー)が挙げられる。また、パラク(ホウレンソウ)パンニール(カッテージチーズ)も、野菜料理の中に分類される。
 ネパールではインドと同じような食材に加えて、サヤインゲンのドライカレーもごく一般的であった。

 インド全体からすると魚料理は珍しいが、こと西ベンガル州とケララ州では魚料理が一般的になっており、主にアジやサバのような青魚が汁気のあるカレーに仕上げられる。
 パキスタンでは、肉料理が発達している分、魚料理は殆ど見掛けなかった。
 スリランカには魚だけでなく、蝦や蟹料理などもあった。
 ネパールは海が無いが、川や湖の魚を食べる習慣がある。但し、汁気のあるカレーにするよりも、香辛料を塗した唐揚にしている方が多かったように思う。
 我が家のオリジナル料理では、サバのヨーグルト煮込みインド風がある。

 インド・パキスタンで最も一般的な肉は羊か山羊で、ネパールでは水牛だ。そして、いずれの国でも最も高級な肉は鶏肉で、豚や牛の肉を用いた料理は殆ど見掛けなかったのが日本とは対称的だ。
 インドとパキスタン共に最も一般的な肉料理はキーマだろう。これは、「具がマトンの挽肉だけのドライ風のカレー」と言えば、私たち日本人にはわかり易いと思う。また、挽肉を鉄の串に巻き付けて焼くシークカバーブは日本でも有名だ。

宗教による食材などの制限

ヒンドゥー教の聖地の沐浴場  今の日本人にはあまりピンとこないことだが、明治に入る前だと日本でも、四つ足の生き物を食べることが仏教の教えで禁じられていた。ところが外国では、宗教による食材などの制限を厳格に守っている人が今でも少なくない。
 例えば、ヒンドゥー教徒は牛を食べないし菜食主義者 (Vegetarian) が多い。ここで言う菜食主義とは、不殺生の思想から来ているものだ。そのため、肉、魚、卵とそれらの加工品は食べないが、牛乳や乳製品は口にしても良いことになっている。というか、彼らはそれらを積極的に摂取しているように見える。
 イスラム教徒が肉を食べる場合は、その教義に基づいた方法で屠殺された肉(これをアラビア語でハラール (halal) حلال という。直訳すると「許された」) しか口にすることはできない。その中でも、豚とその加工品はいかなる方法で屠殺されたものでも食べてはいけないことになっている(これをアラビア語でハラーム (haraam) حرام という。直訳すると「禁じられた」)。
 日本で一般的に売られている、いわゆる「合挽き肉」は牛と豚の混合なので、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が大多数を占めているインドとパキスタンのいずれの人も口にすることが出来なくなる。そのため、外国の方を家に招待してご馳走するときには、このことに気を付けなければならない。
 その一方、スリランカの仏教徒が多く住む地区ではこのような制限は無く、日本と同じような食材が用いられていた。

宗教名食材・飲料(制限の理由)
ヒンドゥー教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 卵(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
イスラム教
  • 豚(不浄)
  • イスラム教のやり方以外で死んだ動物の肉(不浄)
  • 酒(祈りの妨げになる)
シク教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 酒(不道徳)
ジャイナ教
  • 植物以外の動物全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
仏教
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
禁じられている
好ましくない


信者の多い宗教
インドヒンドゥー教・イスラム教・シク教・ジャイナ教
ネパールヒンドゥー教・仏教
パキスタンイスラム教
スリランカ仏教・ヒンドゥー教

国による特色

インド・パキスタン共通

 両国で最も一般的な肉料理といえば、やはりキーマだろう。
 国境を挟んで両国にまたがっているパンジャブ地方には、パラクと呼ばれるホウレンソウのカレーがある。日本のカレーの概念を覆す、緑色のペースト状だ。これは、材料さえ手に入れば、日本でも作れる。これを応用したのが、我が家の大根葉のインドカレーだ。

パキスタン

 この国では肉を使った料理が発達しているが、豚肉だけは肉屋に存在しない。また、魚料理も見掛けなかった。
 北から南の地方によって様々な美味しい料理があるが、中でも感激したのは、北西部にあるアフガニスタン国境に近い都市ペシャワールの街角で、夜間だけ営業している露天で食べた、ティッカというマトン料理だ。小さな平たい鉄鍋に油を敷き、香辛料香味野菜、トマトをジュッと炒めて、そこにマトンを放り込んでさっと炒めてあっという間に出来上がり。これをロティ(roti、روٹی)という小麦粉を練って平たく焼いたもので包んで食べるのである。とうとう病み付きになってしまい、私はこの街に滞在しているあいだ、この店に毎晩のように通った。

インド

インドの地図  とても広い国なので、地域によって言葉も文化も違う。特に、麦の栽培に適した気候で、ペルシャやイスラム文化の影響が濃い北と、水が豊かでインド古来の文化をかなり保持している南とでは、料理もかなり違ってくる。
 それが顕著に表れるのが主食の違いだ。インド亜大陸を北から南へ陸路で縦断したことがあったが、そこで面白いことを発見した。滞在する各都市で食べる大衆食堂の定食の主食が、最初は小麦で作ったロティ (roti、रोटी、روٹی) だけだったが、南へ下るにしたがって、ご飯が添えられるようになる。その量はだんだんと増えてきて、それに反比例するようにロティの枚数が減ってくるのである。そしてカルナータカ州あたりからはロティは完全に姿を消し、定食の主食はご飯一筋となるのだ。
 当然のことながら、おかずはその主食に合う味付けになるわけで、それが定食の料理全体に影響を及ぼすのである。もう少し具体的に書くと、北インドでは油をたっぷりと使ったこってり料理が多いのに対して、南インドでは油はそれほど多用せず、辛みは効いているが比較的さらっとした料理が多い。これは、北と南の農産物の違いに加えて、双方の気温の違いによるものもあるようだ。
 また北インドではイスラム教徒やシク教徒の比率が比較的多い。彼らは肉をよく食べるので、北では肉料理が発達している。中でもタンドーリチキンは日本でもご存知の方が多いと思う。それに対して南では、菜食主義のヒンドゥー教徒の比率が比較的多いので、野菜や豆料理がよく発達しているように思う。
南インドのバナナ畑
南インドのバナナ畑
 私はインドのどの料理も大体好きだが、「その中でも特に?」と問われれば、「南インド料理」と答えるだろう。日本と同じ米の文化であるせいか、とても親しみ易かった。なんと言っても、長方形に切ったバナナの葉っぱをお皿にして、そこにまずご飯を山盛りにし、その上にサムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))という野菜入りのカレー味豆のスープをかけ、その周りに何種類かのカレーや漬物を少しずつ置いて素手で食べる、ミールス(meals) という定食には特に感動した。菜食主義者(vegetarian)専用の店だと肉気は全く無いが、豆が豊富に入ったサムバールと、最後にヨーグルトをカレーの混ざったご飯にかけて食べるので、栄養としては全く問題ないと思う。
 南インド料理は、そこで使われている香辛料と食材の多くが日本では手に入りにくいのと、身体を冷やす作用が強いのが玉に傷だ。私が作れる南インド料理はサムバールとマッサーラドーサというスナックだけだが、いずれも夏季限定料理にしている。
 東インドの西ベンガル州と、南インドのケララ州も、日本と同じく米を主食にしているが、こちらは魚もよく食べる文化なので、いずれも魚のカレーを食堂で食べまくった。いや、その美味かったこと! ケララ州では実際に作ってみたこともあった。

スリランカ

 人口で最も多いシンハラ族の殆どは仏教徒、次いで多いタミル人の殆どはヒンドゥー教徒である。
 この国は海に囲まれているせいか、四ヶ国のうちで最も魚料理が発達している。他の国ではメニューに存在していない、蝦や蟹などもあったのが嬉しかった。
 また、日本と同様米が主食なので、私の口に合う野菜料理もいろいろとあった。激辛の料理が多いのも嬉しい。
 それらの中で代表的なものが、「ライスアンドカリー」と呼ばれる、読んで字の如く、ご飯とカレーの定食だ。カレーの種類は店によって違うが、南インド同様、ココナッツ風味のものが多いのが特徴である。
 また、日本の鰹節と同じような「モルディブ・フィッシュ」という調味料があって、それを粉末にして入れたカレーは、魚貝類の旨味を倍増させる。
 多分中国人からの影響なのだろう、茹でた冷麦を冷ましたような「ストリングホッパー」という麺もあった。これにカレーを掛けて、手で混ぜながら食べるのが本式の食べ方だ。

ネパール

 多民族国家であるが、ヒンドゥー教徒、仏教徒が多い。その中でチベット系民族の料理は、インドカレーの範疇には入らない。
 ネパールでは、「ダルバート タルカリー (ネパール語:दालभात तरकारी (dālbhāt tarkarī)」という定食が最も一般的だ。ダルという豆のスープを、バート(ご飯)にかけて、タルカリー(野菜のカレー)を添えて食べる、読んで字の如くのメニューだ。これをネパール特産の小型で激辛の青唐辛子クッサーニ खोर्सानी (khorsānī)を生で齧りながら食べると、さらに食欲が進む。シンプルなものだが、これに病み付きになってしまった私は、間借りしていた農家のおかみさんから大よその作り方を教わり、約一か月間毎日自分で作って食べていた。香辛料・香味野菜の配分と、メインとなる野菜の分量のわずかな違いによる味のバリエーションは、感動の連続だった。この貴重な生活体験が、今の私のインドカレー情熱の基礎になっているのである。

配膳

 主食を手前中央に置いて、その外側周辺に複数のおかずを配置するのが一般的だ。
 例えば定食を注文すると、ご飯やロティなどの主食を中心にして、その外側にナスのカレー、ホウレンソウとカッテージチーズのカレー、鶏肉のカレー、ダール(dāl、दाल、دال )という豆のスープ、アチャール(achār、अचार、اچار)という漬物などが置かれる。それらは、個別の皿に盛り付けられるのが一般的だが、ターリー(thāli、थाली、تالی)と言う区画分けされた大皿に盛り付けられることもある。
 いずれにせよ、3種類以上の食材を一つの料理にしてしまう日本のカレーとは異なる形態だ。

食べ方

 日本だと熱々のご飯というものは最高とされるが、これらの国では主食が冷めていてもあまり問題ない。それとは逆に日本だと、カレー丼が冷めた状態で販売されているが、これらの国だとカレーは必ず作りたての熱々でなければならないようだ。
 近頃ではスプーンを使う人も増えてきたようだが、道具を使わずに右の手で直接食べるのがいずれの国でも伝統的な食べ方だ。なぜかというと、左手はトイレでお尻を洗うときに使われるからだ。かといって全然左手を使わないわけではなく、食事中に水を飲むときコップを持ったり、ロティなどを食べやすい大きさにちぎったりするときに補助的に使っている。
 最初私はその食べ方に抵抗を感じたが、慣れてしまうと、ことこれらの国々の料理は、手で直接食べた方が断然美味しく感じるようになった。すると、何種類ものナイフやフォーク、スプーンなどの道具を使って食べる西洋のコース料理が、何だかロボットの食事のように感じられるようになった。
 食べるときに食器に手を添えはしても、日本でご飯や味噌汁を食べるときのように、食器を持ち上げて食べることは、これらの文化圏ではマナーに反する行為となる。また、日本で「犬食い」と言われているように、卓上に置かれた食器から直接口で食べることもマナー違反だ。
 背筋を伸ばし、卓上または地面に置かれた食器から、右手の指の第二関節から先だけに食材が付くようにして食べるのが、最も美しい食べ方とされる。実際にこれらの国の人々がそうして食べているのを見ると、確かに「美」あるいは「優雅さ」を感じる。

我が家でのレシピ

 ここでは、日本で比較的手に入りやすい香辛料と食材を使った、北インド風料理をご紹介している。

大根葉のインドカレー ナスのインドカレー オクラのインドカレー タケノコのインドカレー キーマカレー サバのヨーグルト煮込みインド風

 インドのカレーの作り方のポイントは、まず最初に香辛料と香味野菜をたっぷりの植物油で炒めることにより、それらの香りをしっかりと油に移すことである。そのとき加熱し過ぎてそれらを焦がさないようにすること、そして西洋料理のシチューのように長時間煮込まないことだ。この三点に気を付ければ、ほとんど失敗することはない。

だいどころ  客間


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