総アクセス数:

現在の閲覧者数:

だいどころ

インドカレーの楽しみ

2004.03.21
更新 2024.01.08
じゃが芋と大豆のインドカレー
自家製インドカレー(じゃが芋と大豆)

食べ飽きしないインドカレー

南アジアの地図  海外帰国子女である私は、成人してからアジアのいくつかの国を何度か団体ではなく個人で旅している。
 まず最初は船で中国へ渡り、新疆ウイグル自治区を通って陸路でパキスタンに入り、その後インド、スリランカ、ネパールをぐっるっと旅したのが1987年~1988年。
 1989年には3か月間インドのみ。
 再び船で中国へ渡り、チベット自治区を通って陸路でネパールに入り、インド、パキスタン、スリランカと旅したのが1991年~1992年だった。
 それらの旅でパキスタン・インド・スリランカ・ネパール4か国には合計二年足らず滞在したのだが、その間の食事の多くはホテルやレストランではなく現地の大衆食堂の料理だった。だから、私が現地で食べてきたのは、日本のインド料理店のようなおしゃれな高級料理ではなく、誰にでも作れるような素朴な料理が多かった。他の旅行者との付き合いでツーリスト向けのレストランに入ることもたまにあったが、そこで注文するのはやはり現地風の料理のことが多かった。さらに同じ場所に何日も滞在するようなときには、市場などで食材を買い集めて灯油コンロや薪で自炊することもあった。その土地でしか味わえないものを食べ、それを自分でも作ってみたかったからだ。
 毎回このような料理を食べても私は飽きることがなかった。なぜなら、食材と香辛料の種類が日本とは比べ物にならないほど多く、それらの組み合わせのバリエーションが非常に豊かだからだ。
 ちなみに、私は料理研究家ではないし、レストラン経営者でもない。始めは普通の旅行者だったのだが、幼少のころから食べていたスパイシーな料理が成人してからも好きで非常に興味があった結果、このような旅の仕方になってしまっただけだ。
 一般的な日本人の疑問の一つとして、「インド人は毎日カレーを食べているのか?」というものがある。これには「飽きないのか?」というニュアンスが含まれている。それはインド料理に対する偏見と誤解が原因だ。一般的な日本人にとってのカレーとは、画一化された工業製品であるインスタントカレーやレトルトカレーであって、具材や隠し味が多少違っても、基本的には同じ料理だ。それを毎日食べ続ければ飽きて当然だろう。私なら三日で嫌になると思う。
 インドでは複数のスパイスと食材の組み合わせによって、基本的には別の料理になる。香りも味も違うのだから当然のことだ。それらを一言で「カレー」と言ってしまうことは、日本の鍋料理全てを「鍋物」と一言で言ってしまうことと同じだ。日本でも素材や調味料の種類によって呼び方が違ってくるし、地方によってそれぞれ郷土色がある。しかもそれらの各家庭に於いても、それぞれ独自の味があることに変わりはないからだ。
 日本人である私は、冬のあいだ毎日「鍋物」を食べても多分飽きないと思う。それは何の野菜やキノコを使うのか。何の魚または貝または肉を具材に使うのか。湯豆腐にするのか、醤油味にするのか、味噌味にするのか、牛乳味の「飛鳥鍋」にするのか、水炊きにするのか、しゃぶしゃぶにするのか。果ては韓国風「チゲ」にするのか、中国風「火鍋」にするのか。そして、〆はうどんにするのか雑炊にするのか。というようにバリエーションが豊富だからだ。インドの一般家庭でも、同じ料理を毎日食べ続けるようなことは、まず有り得ないと思う。

インドカレーの発想

インドにカレーはない

 「インドカレー」と書いておいて矛盾するようだが、結論から先に言うとインドにカレーという料理はない。現地のツーリスト向けのレストランのメニューに「~curry(カリー)」と書いてあるのは、それがスパイスを使った料理であることを外国人に知らせるためだろうと思う。欧米人が自分たちのスパイシーな料理の多くを「curry(カリー)」と呼んでいることを、インドカレー文化圏の人々はよく知っているからだ。
 そのようなこともあって、私たち日本人には「インド料理=カレー」という、しつこいほどの思い込みがある。それを少しでも解消するため、インド系料理と日本のカレーの違いを私なりに検証して少し詳しく書いてみることにした。その際、日本のカレーと区別するために「インドカレー」として、それを日常的に食べている国々を「インドカレー文化圏」と書くことにする。バングラデシュにはまだ行っていないが、多分ここもその中に入ると思う。ベンガル地方はこの国全土とインド国境を挟んでまたがっている。インド側の西ベンガル州やその他の地域でベンガル料理を食べたことがあり、それらもインドカレーだと思えたからだ。
 カレーという言葉を使うのは、日本ではスパイスを使った料理を「カレー」と言うことがすっかり定着しており、一般の日本人のこの単語に対する強い愛着があるためだ。
 では、日本の国民食のようになっているカレーライス。その主な原料インスタント・レトルトカレーは、ヨーロッパ人がインド植民地時代に、自国のシチューのような煮込み料理に、インドの香辛料をいろいろとブレンドした、「カレー粉」というものを加えたものが元になっているようだ。その証拠というほどのものではないが、カレールーの「カリー(curry)」は英語であり、「ルー(roux)」はフランス語であり、どちらもインドの言葉ではない。またインドカレー文化圏の一般的な伝統料理では、小麦粉を炒めたり一部の例外を除いてコトコト煮込んだりカレー粉を使ったりなどしない。そのため、ここでは西洋料理として扱い、インド系料理またはインドカレーとは区別することにする。
 ヨーロッパを訪れたことがある人ならお解りになると思うが、多くの国には豊かな森林があり、化石燃料や電気が普及する前、調理には主に豊富な木材が用いられていたのだろうと思われる。一方、インドやパキスタンを訪れたことのある人は、一部の地域を除いて森林の少なさに驚かれたことと思う。そのため、宮廷やマハラジャの家ならともかく、多くの庶民の家庭では調理に高価な燃料をたくさん使わないようにするため、調理時間をなるべく短くしたのだろうと思う。
 さらに世界地図をご覧になれば一目瞭然だが、ヨーロッパとインドカレー文化圏の地理的位置が東西はともかく、南北でかなり違っているということだ。これは、山岳地帯を除く両地域の平均気温の違いに大きく影響してくる。
 ご存じの方も多いと思うが、料理にトロミを付けると冷めにくい性質を持つ。豊富な燃料を使ってコトコト煮込むトロミの付いたシチューが寒冷なヨーロッパで生まれたのに対して、気温の高いインドカレー文化圏では料理にわざわざトロミなど付けないし、あまり煮込まないという理由もお解りになると思う。
 そもそも、インドカレー文化圏の伝統的な食べ方ではスプーンなど使わず、右手の指で料理を口へ運ぶので、料理が熱々だとかえって食べにくい。そのため、カレーなどの料理はやや冷めた状態で提供されるから、わざわざトロミを付けるということは無駄な行為になるのだ。

健康のことを考えた料理

 さて、シチュー系料理である日本のインスタントカレーは、その箱の裏側に書いてある「作り方」の通りにやれば、誰が作っても大体同じような味になり、より多くの人に「美味しい」と思われ、よく「売れる」ように作られている。なぜなら、そうしなければ生産者と販売者が儲からないからだ。
 ところが世界各地の伝統的な家庭だと、私の知る限りそうではない。日本だって今でこそ少なくなったようだが、各家庭のお母さんたちは「体にいいから」「お金がかからないから」ということで、自家製の漬物や小魚の佃煮(つくだに)をはじめ、旬の食材で作られた郷土料理や家庭料理を食卓に並べてくれていた。それがいわゆる「おふくろの味」であり、各家庭にはそこのお母さんでしか出せない味があったと思う。私が小学校低学年のころまでは、漬物は自家製だったし味噌汁は煮干しでだしを取っていた。それらの味は今でも忘れられない。
 ところが、インスタント・レトルトカレーによる各家庭の味は、極端な言い方をすれば本当の「おふくろの味」ではなく、個々の「製品の味」なのだ。メーカーが提唱している「作り方」の通りにやれば、誰が作っても各製品によって同じような味になるのだから。
 インドカレー文化圏には、私の知る限りインスタント・レトルトカレーはない。その反面、あちらでは何千年も前からの食と健康に対する知識が体系化されており、一般家庭の人がそれを断片的に知っているようなのだ。日本でなら、食べ物における漢方医学の情報を断片的に知っている一般人がいるのと同じようなことだ。一般人である私も少しなら知っている。例えば、夏野菜に代表される果菜類は比較的陰性が強いので体を冷やす傾向があり、根菜類は比較的陽性が強いので、体を温める傾向があるというようなことだ。
 このようなことは、いろいろな食べ物が人の体にそれぞれ何らかの影響を及ぼすことに気が付いたところから始まったのだろう。その後、文字の発達と共に何千年かの時間を経ながら、さまざまな情報が整理されていったようだ。インドはインドで、中国は中国で発展し、そこから生まれてきた言葉である「医食同源」は、「食事は医療と同じようなことだ」だし、「薬膳」とは薬効成分の多い食材で作られた料理のことだ。もう少し具体的に言うと、食べる人の体質や体調に応じて、暑い日には身体を冷やし、寒い日には身体を温める料理を作るというようなことだ。
 ここで気を付けなければならないのが、必ずしも「美味しい=体に良い」、「売れる=体に良い」とは限らないということだ。高度成長期後の日本人の食生活の激変によって、それまで無かった健康へのさまざまな不具合が指摘されていることを、皆様はすでにご存知のことだろうと思う。
 それで極端な言い方をすれば、香辛料を多用した料理を常食するのなら、その土地の気候風土と食べる人の体質に合った香辛料の配合と食材の組み合わせで調理することが最も望ましいということになる。これは、食が人の健康を左右するということのプラスの例だ。逆に、灼熱の砂漠地方の郷土料理を日本の雪国の冬に食べ続けると身体を壊すことになる。実際にそのようなことで体調を崩した方がおられることを私は知っている。これはマイナスの例だ。
 これらこそインド料理本来の考え方なのであって、日本のインド料理店のメニューの数々は、その考え方を元にしてはいるが、その結果生まれた作品の展示会のようなものだと思う。そのため私たちが自宅でインドカレーを作る場合には、レストランのような派手な料理もたまにはいいが、日常的にはやはり医食同源という考え方を元にして食材を吟味し、香辛料をその都度調合して作った方が、食べる人の健康に良いと思っている。
 比較的近頃生まれたスパイスカレーというカテゴリーがある。これは市販のルーやカレー粉を使わないという点で、従来の日本のカレーを含めた西洋系カレーと一線を画している。不自然な食品添加物を使わないのであれば、今後一般に広まることを期待している。

インドカレーの概念

 それで。
 インドカレー文化圏の伝統的な料理に対しては、私たち日本人が持っているカレーの概念を一旦捨ててしまった方が、より深く理解できるように思う。現在の日本の一般的なカレーとは、このようにして発想も歴史も違っているのだから。
 インド旅行をした日本人が、「インドのカレーはまずい!」という発言をすることがあるが、それはカレーだと思って食べるからだ。一般の日本人が日常的に食べるカレーとは、小麦粉でとろみが付けられた「ルー」というものが必ずあり、ほぼ必ず「動物性油脂」「アミノ酸」「砂糖」「酸味料」「カラメル色素」などが添加されたインスタント・レトルトカレーであり、それは完全に日本人好みの味に調整されている。しかも、ほぼ必ず肉や魚介類などの動物系具材を入れている。現地の人で混み合っているヴェジタリアン大衆食堂(料理に肉類・魚介類・卵類は使用されない)では一度も食べていなくて、閑散とした外国人ツーリスト向けのレストランだけでしか食べていなかったとすれば、それもその原因の一つかもしれない。私が現地各地で何軒か訪れたツーリスト向けレストランで「まずい!」と思ったことは何度もあったが、現地各地で百軒以上も訪れたそれぞれのヴェジタリアン大衆食堂でそう思ったことは一度もなかったのだから。
 また日本のインド料理店も、日本人の味覚に合うような砂糖などの調味料を加えたり、刺激を減らすために香辛料の分量を減らしたりしているようだ。また日本のレストランの多くは、現地で一般的なロティではなく、高価で一般的ではない甘くてフワフワのナンを主食にしている。だからそのような店で食べ慣れてしまった日本人は、それが本物なんだと思い込んでしまっていて、現地料理を食べるとそれを裏切られ失望することになるのだ。逆に日本に来たインドの人がインド料理店で食べると、「違うよこれ!」というのはよくあることのようだ。日本人が外国の「和食」を掲げる日本料理店で食べたら、「これ違うよ!」と思うことがあるのと同じだろう。

工業製品であるか食品であるか

 日本は戦中戦後の物不足と貧困から抜け出すべく、高度成長をとげていった。その結果、安価な添加物や薬品などを用いて工場で大量生産することにより、多くの食品が工業製品化されていった。それによってほとんどの日本人が、そのような製品を安価で購入することができ、しかも短時間で料理が作れるという恩恵を受けた。それは私の親の世代からすでに始まっていた。だから、小学校中学年以降それで育ってきた私は、そのような製品に対して何の疑問も抱いていなかった。
 ところが一歩海外に出てみると、それには何かが欠けていることがわかる。それは食品に対する宗教と伝統医学の影響だ。だから現地では、日本の添加物ゴテゴテのような食品はほとんど見かけなかった。食品が工業製品ではなく、食品であり続けているのだ。
 たとえば。
 牛とその加工品を食べない敬けんなヒンドゥー教徒、豚とその加工品を食べない敬けんなイスラム教徒、彼らは日本の市販のカレールーやレトルトカレーにほぼ必ず入っている「動物性油脂」を口にすることはできない。ということは、その製品自体が食べられないということになる。また、これも日本の市販のカレールーやレトルトカレーに必ず入っている「カラメル色素」による着色は、ヒンドゥー教徒にとって全く無意味な行為となる。なぜならインド料理に欠かせないターメリックのオレンジ色は彼らにとって聖なる色だからだ、というようなことだ。
 これをただ単に「前近代的」とか「工業化の遅れ」とか「進歩がない」で片付けてしまうこともできる。しかし、高度成長期に比べて日本人の平均寿命は延びたものの、現在多くの人が自分の健康や容姿に対して何らかの不安を抱いているように感じるのは、この私だけだろうか? それは、ネットの各サイトに数多く現れる製薬会社や健康食品会社などの広告を見ればよくわかる。わざわざ投資して掲載するのだから、多くの人からの需要があり、その商品が売れて利益が出るということに企業としての自信があるのだ。ということは、多くの人が健康に問題を抱えているということになる。また、日本は戦中戦後の貧困からもうとっくに抜け出しているのに、その時代の名残の工業製食品におさらばできないのはなぜなのか? ・・・これらは「幸福とは何なのか?」とか「科学崇拝・工業崇拝によって麻痺している生命本来の色覚と味覚」といった専門的な分野の話しになっていくので、この辺で止めておくことにする。
 私はインスタントラーメンを多ければ月に20食くらいは食べている。中毒と言われても仕方ないし、好きなのでこれも仕方ない。そのため、ただ単にインスタント食品の批判をしているのではない。私たちの身近にある日本のカレーからたどり着けるインドカレーには、人の健康に貢献するような英知が内包されており、それを自分自身でわりと簡単に発見して体現することができるということ。そして、たった4種類ほどの香辛料と2種類以下の食材だけでも、手作りで手軽に香りと味のバリエーションが楽しめるというポジティブなことを私は言いたいのである。
 もう一言。何かのイベント会場などでインスタントによるカレーライスが出されたとき、私は感謝しながら残さず食べている。

現地の言葉について

 私が訪れたどの国でも、私は英語よりも現地固有の言葉を習得し話すように努めてきた。英語があまり得意ではないということもあるが、その方が現地の人とより親しくなれるし、その文化をより深く理解できると思ったからだ。そのため、これらのようなコーナーを設けることができた。
 インドの公用語はヒンディー語と英語で、どちらも向かって左から右に読む。インドには他にも、タミル語、ベンガル語、カンナダ語など主要な言語が多数ある。余談ではあるが、現地でインド人同士が英語で会話をしているのを何度か見かけたことがある。これは出身地が違う者双方が、たまたまヒンディー語よりも英語の方が話しやすかったからだろうと思う。
 パキスタンの国語はウルドゥー語で、昔の日本語の横書きのように向かって右から左へ読む。公用語は英語。
 スリランカの国語は、シンハラ語とタミル語。どちらも左から右に読む。英語は公用語的に通じる。
 ネパールの公用語はネパール語。左から右に読む。観光地でなら英語はわりと通じる。

主な香辛料(スパイス)

 インドカレー文化圏の料理のベースとなるのが香辛料(英語:spice、ヒンディー語:मसाला (masaala)、ネパール語:मसला (masala)、ウルドゥー語:(masaala)مسالا、タミル語:மசாலா (macālā)だ。日本のカレーのルーやカレー粉の主な原料となっているものだ。
 現地では等級が細かく分かれていて、高い等級の物は高価になるが、その分味も香りも優れている。
 料理に使用する際は、果実や葉や種子を丸ごと用いるもの、粉末かペーストか細切りにして用いるもの、その両方が可能なものがある。この下の表の最後の項目「丸/砕」で、そのいずれかが使用可能なものは「〇」、不可能なものは「X」とし、画像があればその下に表示した。
 日本では、むしろ英語名で親しまれているものの方が多いかもしれない。その他、北インド全てで一般的に通じるヒンディー語、パキスタンの国語であり北インドのイスラム教徒にも通じるウルドゥー語、南インドの主要言語の一つでありスリランカでも通じるタミル語でも表記してみた。なお、ネパール語の文字はヒンディー語のものとほぼ同じだし、香辛料の単語は似ているものが多い。
 これらの単語のどれか一つをコピペして画像検索すると、日本語のサイトではなかなか掲載されないような画像のオンパレードが見られるかもしれない。食材や異国情緒に興味ある方はお試しあれ。
日本名
英語名
ヒンディー名
ウルドゥー名
タミル名
部位特徴または性質薬効その他丸/砕
唐辛子・ナンバン
chili
red pepper
मिर्च (mirch)
लालमिर्च (lalmirch)
(mirch) مرچ
(lalmirch)لالمرچ
ரெட் மிளகு (reṭ miḷaku)
果実強烈な辛味と若干の甘味がある。カレーには最も普遍的な香辛料の一つ。
世界中で多くの種類が栽培されている。日本の一味唐辛子は辛さだけが目立つので、インドカレーにはふくよかな味わいのインド産を使うのが望ましい。
スパイスとしては、赤く熟したものを乾燥させ種を除去して使うが、ネパールでは小型で激辛の青唐辛子クッサーニ(ネパール語:खोर्सानी (khorsānī))が定食の付け合わせとして丸ごと生で出されることも多い。また、インドでは大型の青唐辛子を香辛料に漬けた漬物も一般的だ。
ビタミンAとビタミンCが豊富。
辛味成分のカプサイシンには発汗・強心・体脂肪の燃焼を手助けする作用がある。
一瞬身体を温める効果があるが、発汗によって最終的には冷える。
〇/〇
No Image/唐辛子粉
コエンドロの実
coriander seeds
धनिया (dhaniya)
(dhaniya) ھنیہ
கொத்தமல்லி விதைகள் (kottamalli vitaikaḷ)
種子この下の「葉」とは同じ植物だが、これはカメムシ臭は全くなくフルーティーな味と香り。
インドカレー文化圏では最も普遍的な香辛料の一つ。
消化促進・整腸・老廃物や重金属などの有害物質を排出してくれる効果など。
身体を冷やす。
〇/〇
No Image/コリアンダー・パウダー
コエンドロの葉
coriander leaves
धनिया पत्ता (dhaniya patta)
ھنیہ پتہ (dhaniya patta)
கொத்தமல்லி இலைகள் (kottamalli ilaikaḷ)
日本ではタイ語の「パクチー」、中国語(北京語)の「香菜(シャンツァイ)」として近頃広く知られるようになってきた。
カメムシの屁のような香りなので日本では依然として好き嫌いがあるようだが、中国から東南アジア・南アジアという広大な地域で最も人気の高いハーブの一つである。
薬味として主に生で使われる
〇/〇
馬芹(うまぜり・ばきん)
cumin
जीरा (jeera)
(jeera) جیرا
சீரகம் (cīrakam)
種子北インドやパキスタンのカレーでは最も普遍的。日本のインスタントカレーの香りで最も目立っているのもこれだ。
カレー作りでまず最初にこれのシードをじっくり炒め、香りと薬効成分を油に移すと、本格的な北インド料理ができる。
漢方では胃薬として用いられる。
様々なビタミンやミネラルを含み、食欲増進・体脂肪の燃焼・抗酸化作用などの様々な薬効成分があることがわかっている。
身体を冷やす作用がある。
〇/〇
No Image/クミン・パウダー
鬱金(うこん)
turmeric
हल्दी (haldi)
(haldi) ہلدی
மஞ்சள் (mañcaḷ)
若干の苦味と鮮やかな黄色をしていて、加熱するとオレンジ色になる。一般的なインドカレーの色は主にこれによるものだ。
身体に良いからといって入れ過ぎると、料理が苦くなるので注意が必要。
利胆・健胃・肝機能の増進作用。抗がん作用。X/〇
No Image/ターメリック・パウダー
胡廬巴(ころは)
fenugreek seeds
मेथी (methi)
(methi) میتھی
வெந்தய (ventaya)
種子炒めたりして加熱すると、独特の香りと甘味をともなった深い味わいを出し、お店屋さんのカレーに近付く。日本料理で例えるならば、昆布とカツオのだしに干しシイタケのだしが加わるというような香りと味の充実感だ。ただし加熱が不十分でも多過ぎても苦くなるので、これを使うのにはある程度の慣れがいる。
北インドやパキスタンの料理ではかなり普遍的。インドカレー文化圏だけでなく、中近東でもよく使われるようだ。
薬効成分が豊富なので薬としてもよく用いられる。
補腎、強壮、健胃。〇/〇
胡廬巴(ころは)シード/胡廬巴(ころは)パウダー
胡廬巴(ころは)の葉
fenugreek leaves
कसूरी मेथी (kasuri methi)
(kasuri methi) کاسیوری میٹھی
வெந்தயம் இலை (ventayam ilai)
若葉と茎上記の胡廬巴の若い葉が、日本のモヤシやカイワレ大根のように、ハーブと野菜の中間のようにして使われる。
見た目はカイワレ、味はモヤシに独特の苦味を加えた感じ。
北インドや特にパキスタンではかなり人気がある。
〇/〇
胡廬巴(ころは)の葉/No Image
黒胡椒(くろこしょう)
black pepper
काली मिर्च
(kali mirch)
کالی مرچ
(kali mirch)
மிளகு (Miḷaku)
種子強烈な香りと独特の辛味がある。
主に後述のガラムマサラに使われる。
健胃作用
身体を温める
X/〇
黒胡椒/黒胡椒粉
茴香(ういきょう)
fennel seeds
सौंफ़ (saunf)
(saunf) سونف
சோம்பு (cōmpu)
種子甘い香りと爽やかな苦味がある。
インド・パキスタンでは料理よりも漬物に用いられたり、食堂での食後の清涼剤としてお会計伝票と一緒にサービスで出される方が多いかも。
消化促進・消臭・肥満防止や緩下作用〇/〇
茴香(ういきょう)/No Image
肉桂(にっけい)
cinnamon
दालचीनी (dalchini)
(dalchini) دالچینی
இலவங்கப்பட்டை (ilavaṅkappaṭṭai)
樹皮甘い芳香がある。
下記の「ガラムマサラ」に使われる以外では、北インド・ネパール・パキスタンで最も一般的に飲まれている甘いミルクティーのチャイ (ヒンディー語 चाय(chai)、ネパール語 चिया(chiya)、ウルドゥー語 چائے(chai))や、砂糖を使った菓子類に用いられることの方が多い。
発汗・発散・健胃作用
毛細血管を拡張して血流を良くする
身体を温める
X/〇
No Image/シナモン・パウダー
小荳蒄(しょうずく)
cardamom
छोटी इलायची (choti ilaichi)
(choti alaichi) چھوٹی الائچی
சிறிய ஏலக்காய் (ciṟiya ēlakkāy ​)
種子鋭い香り。
皮を除去して中の黒い種子を用いる。
揮発性なので、粉にする場合は調理の直前にする。
健胃作用〇/〇
カルダモン/No Image
丁子(ちょうじ)
clove
लौंग (laung)
(living) لونگ
கிராம்பு (kirāmpu)
花蕾甘く強い香りと若干の辛味。
主に肉料理や後述のガラムマサラに使用される。
健胃作用
身体を温める
〇/〇
クローブ/No Image
肉荳蒄(にくずく)
nutmeg
जायफल (jayphal)
(jayphal) جاویل
ஜாதிக்காய் (jātikkāy)
種子甘い香り。主に後述のガラムマサラに使用される。少量なら問題ないが、10g 以上摂取すると痙攣や幻覚症状を引き起こす。X/〇
芥子菜(からしな)
mustard
सरसों (sarason)
(sarason) سرسوں
கடுகு (katuku)
種子色の違いで何種類かあるが、南インドでは主にブラウンマスタードシードが粒のまま使われる。
南インドのサムバールを食べた人ならわかると思うが、必ず入っているあの黒い粒々だ。
消化促進、免疫力向上〇/〇
ガラムマサラ
spice mixture
गरम मसाला (garam masala)
گرم مصالحہ (garam masala)
கரம் மசாலா (karam macālā)
混合主に北インドやパキスタンの料理の仕上げに、香り付けとして使われる。
黒胡椒・クミン・カルダモン・シナモン・クローブ・スターアニス・メース・ナツメグ・ローリエ・コリアンダー・乾燥生姜などの粉末のミックススパイス。地方によっても、各家庭や店によっても、使われるスパイスの種類と量が異なる。
熱で香りが飛びやすいので煮込んではいけない。火を止める間際か止めてから入れる。
各香辛料の薬効成分を参照X/〇
No Image/ガラムマサラ
オオバゲッキツ
curry leaves
करीपत्ता (karipatta)
کریپاتتا (karipatta)
கருவேப்பிலை (Kaṟivēppilai)
熱するとカレーのような香りに加えて独特の爽やかな香りがする不思議な葉。
主に南インドやスリランカの料理に使われる。南インドのサムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
乾燥よりも生の方が香りが濃厚なので、現地ではもっぱら生で使われている。日本では生が手に入りにくいため、自家栽培している人もいるようだ。
食欲増進・滋養強壮〇/X
阿魏(あぎ)
asafoetida
assafoetida
हींग (hing)
(hing) ہینگ
பெருங்காயம் (peruṅkāyam)
茎の
樹脂
日本語では表現できない独特の香り。
生だと強烈な香りだが加熱するとマイルドになる。いずれにせよ料理に強烈な要素を加えることになる。南インドのサムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
精神を安定させる鎮静作用・整腸作用・腸内の虫を取り除く駆虫作用X/〇
チョウセンモダマ
tamarind
इमली (imli)
(amlan) املن
புளி (puḷi)
果実現地で果実は種ごと塊で売られていることが多く、料理に種ごと入っていることも多い。
強い酸味。
南インドのサムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
食欲増進〇/X
月桂葉(げっけいよう)
bay leaf
laulel
तेज पत्ता (tej patta)
(haliichi ke patti) خلیج کی پتی
பிரியாணி இலை (piriyāṇi ilai)
日本では主に、フランス料理・イタリア料理でよく使われており、ローリエという名称で親しまれている月桂樹の葉。
原産地はヨーロッパだが、インド料理にも取り入れられている。
甘くせつない洋風料理の香り
食欲増進、抗菌・抗ウイルス、関節炎などの予防。X/〇
月桂葉/No Image
 これはほんのごく一部だが、こんなに数が多いと初めてインドカレーに接する一般の日本人は戸惑ってしまうかもしれない。でも心配いらない。最低4種類の基本的な香辛料があれば、ちゃんとしたインドカレーができる。詳しくは末尾にレシピへのリンクをいくつか張っているので、どうぞご覧ください。

香辛料(スパイス)を使う際の注意点と保存方法

 全ての香辛料は湿気に弱い! と言い切ってもいいだろう。特にホール(粒)よりもパウダー(粉)の方が弱い。常温で保存されていた種子はまだ生きており、生命としての自己防衛が出来ているのに対して、粉にしてしまったものは死んでいるのでそれが出来なくなっているからだ。
 湯気の立ち昇る鍋の上で保存容器そのものを傾けて香辛料を投入すると、中に湯気が入ってしまう。それを何度かやっているうちに中のものの香りがなくなったりカビたりすることになる。それを防ぐには専用のスプーンを用意しておき、いったんそこに移してから鍋に投入するのが望ましい。私の自家用料理はいつも目分量なので、保存容器の瓶の蓋にいったん移してから投入している。そうすると容器内部のダメージはかなり少なくてすむ。劣化が進む前に使い切ってしまうので、それで問題なくいっている。
我が家のペッパーミル
我が家のペッパーミル
 また冷蔵保存も、出し入れの際に容器が結露して中の香辛料の劣化を早めることになる。それを防ぐには、保存容器は小さいものにしておいて、出し入れは手早く行い、劣化する前に使い切ってしまうことだ。
 もっとも劣化の少ない保存方法は冷凍だ。我が家ではどの香辛料も業務用の量で安く購入し、小瓶に入れて冷蔵保存、残りは全部冷凍し、小瓶のがなくなるたびに補充するようにしている。すでに乾燥しているので、わざわざ解凍する必要はない。そうすると少なくとも5~6年はもつ。それまでに全部使ってしまうので、もっと長くもつかもしれない。我が家にはエアコンがないので夏は特に高温多湿になる。常温でも劣化のスピードが速いためにあみ出した方法だ。
 さて、コーヒー好きの人ならわかると思うが、挽きたての香りは最高だろうと思う。香辛料もそれと同じで、現地の農村部では各家庭に石臼(いしうす)があり、ホール(粒)で保存しておいた香辛料を必要なだけ挽いて使っているようだ。我が家には小さな手動式のペッパーミル(胡椒専用のミル)があるので、この中のものだけは常温、残りのホールは全部冷凍にしている。胡椒はカレーだけでなくいろいろな料理に使うので重宝する。この機械を購入したのは1990年頃だが、こちらは毎日使っているのにまだ「劣化」していない(笑)。やはり挽きたての香りは最高!

カレー粉について

 カレールーがインドの産物でないと思われることは前にも述べた通りだが、カレー粉は確実にインドの産物ではない。近頃は「curry powder(カレー粉)」と銘打ったものがインドでも販売されているが、それは逆輸入的なものだ。なぜなら、カレー粉を発明したのは19世紀のイギリスの食品会社であることが、歴史的事実としてはっきりわかっているからだ。
 インドカレー文化圏の伝統料理では先の項目でも述べた通り、ホール(粒)のままで保存している何種類かの香辛料を調理のたび別々に石臼でひいて使っている。それはなぜかと言うと、前にも述べたように香辛料はホール(粒)で保存した方が長持ちするし、その香りが最も豊かなのはひき立てだ。しかも、料理に投入するタイミングが各香辛料によって異なっている。そして、具に何を使うのかによってその香辛料と各配分も異なってくる。ナスのカレーに何と何をどれだけ使うのか、ホウレンソウとカッテージチーズのカレーに何と何をどれだけ使うのか、肉のカレーに何と何をどれだけ使うのか、魚のカレーに何と何をどれだけ使うのか、などによって各香辛料の種類と配分が違ってくるのだ。生薬の調合にちょっと似ているかもしれない。そのため、最初から全部混ぜてしまうと個別に使えなくなり、それぞれの料理の香りと味を変えるという自由がきかなくなる。だから、現地の伝統料理でカレー粉は使われない。
 それならなぜカレー粉がイギリスや日本で人気なのだろうか? それは、各香辛料の特性を把握して使いこなすのには、ある程度の知識と経験が必要なのだが、イギリスや日本の基本的な料理で香辛料はほとんど使われていない。たとえば、イギリスの朝食の定番である目玉焼きとバタートーストなどから始まって、フィッシュアンドチップスやビーフステーキに使われるのは胡椒と薬味のマスタードぐらいだ。私はロンドンなどのホテルやレストランで実際に食べたことがあるので知っている。また、日本の朝食で人気のある味噌汁と卵かけご飯から始まって、ざる蕎麦や天丼や寿司に使われるのも、せいぜい薬味の一味・七味唐辛子やワサビくらいだろう。
 つまり、子供の頃から数多くの香辛料に慣れ親しんでいるインドカレー文化圏の人々に比べると、香辛料に対する知識が少なく扱いに不慣れなので、複雑なことを習得せず手軽に使えるから、どちらの国でもカレー粉は人気があるのだろうと思う。
 カレーの中に砂糖とか動物性油脂とか化学合成物質のような余計な物を入れたくない場合、市販のカレールーではなく、安心して手軽に使えるという点でカレー粉の方が適している。しかし、本格的な香りと味を吟味したい場合は、香辛料はやはり個別に使った方が良い。
 上の黄色い表の中に「ガラムマサラ」というものがある。これは見た目はカレー粉のようだが、イギリス発祥のカレー粉とは全く別の物だ。カレー粉は、カレーに必要な全ての香辛料がブレンドされているのに対して、ガラムマサラは香り付けに必要な香辛料だけしかブレンドされていない。つまり基本的に、唐辛子粉とターメリックは入っていない。だから、カレー粉は調理の中盤で入れるのに対して、ガラムマサラは調理の仕上げに使う。

主な香味野菜と調味料

 インドカレーで香辛料と共に重要なのが、香味野菜と調味料だ。これらも日本の市販カレールーやレトルトカレーには、必ずどれかが含まれているはずだ。
 料理に使用する際は、果実や葉や種子を丸ごと用いるもの、粉末かペーストか細切りにして用いるもの、その両方が可能なものがある。この下の表の最後の項目「丸/砕」で、そのいずれかが使用可能なものは「〇」、不可能なものは「X」とし、画像があればその下に表示した。

日本名
英語名
ヒンディー名
ウルドゥー名
タミル名
部位特徴または性質薬効その他丸/砕
大蒜(にんにく)
garlic
लहसुन (lahsun)
(lahsn) لہسن
பூண்டு (pūṇṭu)
球根辛味のある強い味と香り。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮
血液サラサラ効果
X/〇
にんにく/にんにく(みじん切り)
生姜(しょうが)
ginger
अदरक (adrak)
(adrak) ادرک
இஞ்சி (iñci)
根茎甘味のある強い味と香り。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
食欲増進・滋養強壮
生では体を冷やし、加熱すると身体を温める効果がある。
X/〇
しょうが/No Image
玉葱(たまねぎ)
onion
प्याज (pyaj)
(piaj) پیاز
வெங்காயம் (veṅkāyam)
球根辛味と甘味。
主に北インドやパキスタンの料理で使われる。
シチュー系料理である日本のカレーでこれは具なので大きめに切るが、北インドやパキスタンの料理では基本的に香辛料扱いなので、細かく切って使う。また、定食ではカレーの付け合わせとして、生のスライスが出されることもよくある。その場合、日本のラッキョウのような存在だ。
滋養強壮
血液サラサラ効果
×/〇
タマネギ/タマネギみじん切り
トマト
tomato
टमाटर (tamatar)
(tamatar) ٹماٹر
தக்காளி (takkāḷi)
果実酸味と旨味と甘味。旨味成分であるグルタミン酸が多く含まれている。
日本では生食されることが多いが、主に北インドやパキスタンの料理では調味料として加熱して使われることの方が多い。その場合、やたら甘みが強調されている日本の生食用品種よりも、酸味と旨味が比較的豊富なイタリア料理などに使われている品種の方が適している。カットとかホールの缶詰のトマトがそれだ。
北インドやネパールでは、チャトニー(chatney、चटनी、چٹنی)というソースの原料としては生で使われる。
ビタミンAとCを多く含む。
リコピンには抗癌作用があると言われている。
X/〇
トマト/No Image
キマメ
Yellow Lentils
तूर दाल (toor dal)
(atur dal) اتور دال
துவரம்பருப்பு
(thuvaram paruppu)
種子豆特有の香ばしさ。
表皮を除去し、半分に割ったものを用いる。
北インドやネパールの料理で日本の味噌汁のような存在であるダル(dāl、दाल、دال )で最もよく用いられる。また、南インドのサンバル(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))には不可欠。
貴重な蛋白源。〇/〇
ココヤシ
coconut
नारियल (nariyal)
(naril) ناریل
தேங்காய் (tēṅkāy)
果実甘味と香ばしさ。
主に南インドで調味料やチャツネ(ヒンディー語:चटनी(chatne)、タミル語:சட்னி(chatni))というソースの原料として使われる。
これを原料としたココナッツオイルやココナッツミルクは、南インドやスリランカの料理に不可欠。
抗菌・抗ウイルス
免疫力向上
X/〇
-
マスタードオイル
mustard oil
सरसों का तेल
(sarason ka tel)
(sarason ka tel)
سرسوں کے تیل
கடுகு எண்ணெய்
(kaṭuku eṇṇey)
種子から抽出美しい黄色の半透明。
北インドやパキスタンではカレーや揚げ物に不可欠。日本のインド料理店では、この下に出ているギーをよく用いているようだが、インドやパキスタンの庶民の間では、むしろこちらの方が一般的だと思う。
ギー
ghee
घी (ghī)
(ghī) گھی
நெய் (ney)
バターオイル黄色の半固体または液体。
植物油に比べて高価なので、主にちょっと高級な料理に使われる。また、ヒンドゥー教の儀礼で使われることも多い。
栄養価が高く、ビタミン類が豊富。免疫機能を高める作用があることもわかっている。
ヨーグルト
yogurt
दही(dahi)
(dahi) دہی
தயிர் (tayir)
発酵乳日本でヨーグルトと言えば砂糖や果汁などで味付けされた加工食品が多いが、現地では牛乳を天然の菌で発酵させただけの菌が生きている自然食品、プレーンヨーグルトが当たり前だ。
強い酸味とほのかな甘味。緯度が低い地域、すなわち暑い地域ほど酸味が強くなるように思う。
日本でプレーンヨーグルトは砂糖をかけて生で食べることが多いが、あちらでは塩味の料理に調味料として加熱して使われることも多い。ただし、ライタ(Raita)という料理では生で使われる。
南インドの定食では、生のものが小鉢に入って出されることが多い。日本人の感覚だと「デザートなのかな?」と思ってしまうが、食事が終盤になってきたら、おかずをかけたご飯にこれを混ぜ、それらを混然一体にして食べるためのものなのだ。そういう意味ではデザートに近いと思う。
腸内細菌の強い味方。
インドに多いヴェジタリアン(菜食主義者)にとって重要な蛋白源となる。

salt
नमक (namak)
(namak) نمک
உப்பு (uppu)
高山または海岸より採取現地では主にヒマラヤ産岩塩と海岸地帯産の塩田のものがある。どちらもただの NaCl とは違ってミネラルがいろいろ含まれている。生命維持に不可欠。X/〇
No Image/塩
黒塩
black salt
काला नमक (kala namak)
(kala namak)
کالا نمک
கருப்பு உப்பு (karuppu uppu)
高山より採取日本では「ヒマラヤ岩塩」とか「ブラックソルト」とも言われている。何億年か前にヒマラヤ山脈が出来上がる際、当時の海水が高温で煮詰まってできたそうだ。
見た目は黒というより赤紫だ。食べると硫黄の味がする。日本の砂利のような形状で売られているので、砕いて粉末にして使う。塩というよりも旨味調味料として珍重される。その分、白い塩よりも高価だ。
これもただの NaCl とは違ってミネラルがいろいろ含まれている。
生命維持に不可欠。デトックス効果。X/〇

 日本のインスタントカレーには、調味料または食品添加物である「砂糖」「動物性油脂」「酸味料」「カラメル色素」「アミノ酸」のどれかがほぼ必ず入っているが、現地の料理でそれらを使うことはまずない。日本のインド料理店でもし使われているとすれば、日本人の味覚に合わせるためで日本でだけだ。チャトニーという調味料で砂糖を使うことがあるが、これは薬味のようなものであってメインの料理ではない。
 まず現地では、料理は料理、菓子は菓子というように、味をはっきり分業させている。日本の一般的な料理店や中華料理店で食べ慣れている人は意外に思われるかも知れないが、インドカレー文化圏では料理にほとんど砂糖を使わない。だから本場のインドカレーは日本のインド料理店のものよりずっと辛いし、インドの菓子は和菓子の何倍も甘くできている。
 次に、インドではヴェジタリアン(ここでは宗教上の菜食主義者)の比率が日本よりずっと多い。彼らは肉や魚介類そのものはもちろん、その加工品も食べない。ちなみに上記の「ギー」は乳製品であって「動物性油脂」ではない。またイスラム教徒は肉は食べても、豚肉とその加工品は(もちろん油脂も)食べてはいけないことになっている。
 次に、インドカレーで酸味を出すには、酸っぱいトマトヨーグルトタマリンドといった立派な天然の調味料や香辛料があるので、わざわざ化学合成物質を使う必要がない。日本のトマトは「甘く」を目指して品種改良が繰り替えされた結果なのかフルーツのように甘いし、日本のプレーンヨーグルトも日本人の味覚に合わせた製品作りがなされた結果なのか、甘みがやたら多く酸味が少ない。また、タマリンドは日本では手に入りにくいため無機物の酸味料を使うことになるのかもしれない。
 次に、料理を化学合成物質で色付けする習慣がないので、「カラメル色素」などの着色料は使わない。
 そして、次の項目で詳しく述べているように、インドカレーの多くは植物油でだしを取っているので、中国料理や日本料理のように化学調味料をわざわざ使う必要がないのである。

「だし」は2種類ある?

 日本の汁物料理には朝の味噌汁から始まって、ほとんど全てに「だし」が使われている。だから我々日本人は、「だし」がなければ汁物が作れないということを、早ければ子供の頃から知っている。「化学調味料」を発明したのが日本人だったということもうなずける。ところが、インドカレー文化圏には「だし」という概念がない。私の知る限り、スリランカに鰹節の親戚のようなモルディブフィッシュというものがあるくらいだ。というのもこの国には、インドカレー文化圏の中では珍しく水分で煮る料理があるので。
 あえて言うならば、インドカレーの多くは植物油で「だし」を取っているのである。つまりこれは私独自の仮説だが、「だし」には大きく分けて2種類あるのではないだろうか。まず、日本料理の基本中の基本、昆布やキノコ類や魚介類や肉類を水で加熱して旨味成分を引き出す「水溶性だし」。そして、インドカレーの基本中の基本、香辛料や香味野菜を植物油で加熱して香りと旨味成分を引き出す「油溶性だし」だ。水に溶ける「だし」と、油に溶ける「だし」。これが、日本のカレーとこれらの国々のカレーの調理法と香りと味の、それぞれ根源的な違いになっているのだと思う。
 もう少し具体的に書くと、日本人はカレーに肉または魚を入れて煮込まないと気が済まないのに対して、インドでは肉または魚のカレーよりも野菜のカレーの種類の方がずっと多いし、料理をあまり水で煮ないということだ。
 私は化学者ではないので、その油溶性だしの正体を分析することはできない。しかしはっきりしていることは、インドカレーは日本のカレーと違い、肉や魚が入っていなくて野菜だけでも充分旨味があるということだ。これは、水溶性だし以外の何らかの旨味成分が入っているということになる。インドカレーの多くは、必ず油で炒めても水を入れずに作ることが多いので、油溶性の旨味成分があるという仮説が成り立つのだ。

具の種類数の違い

 人参、玉葱、じゃが芋、肉といった3種類以上の食材を具にして一つの料理にするのではなく、単独か、多くても2種類の組み合わせにする。3種類のを見たことがあるが、それはかなり珍しいものだ。

インドカレーのカテゴリー
食材ヒンディー語(読み)ネパール語(読み)(読み)ウルドゥー語タミル語(読み)
野菜सब्ज़ी (sabzi)तरकारी (tarkari)(sabzi) سبزیகாய்கறி (kāykaṟi)
मांस (maans)मासु (mashu)(gausht) گوشتமாமிசம் (māmicam)
चिकन (chikan)चिकन (chikan)(chikan) چکنசிக்கன் ( cikkaṉ)
मछली (machhli)माछा (macha)(machhali) مچھلیமீன் (mīṉ)

 このように分けられている。
 例えば、北インドで「サブジー」と言えば野菜そのものか野菜カレー全般のことだし、「マーンス」と言えば肉そのものか肉カレー全般のことになる。日本で「スシ」と言えば寿司全般のことだし、「焼鳥」と言えば鶏の串焼き全般になるのと同じだ。
 このように大別しているうえに、その食材の名称によって分けられる。これはインドカレー文化圏の国々なら、言語は違うが大体同じようになっているようだ。例えば、北インドの大衆食堂で、「エークプレートパラク(パラク一皿)」と言えば、世界の料理の中の、インド料理というジャンルの中の、サブジーというカテゴリーの中の、ホウレンソウ(palak)のカレーが一皿出てくる。「エークプレートキーマ(キーマ一皿)」と言えば、世界の料理の中の、インド料理というジャンルの中の、マーンスというカテゴリーの中の、マトンの挽肉のカレー(keema)が一皿出てくる。日本の一般的な寿司屋で「イカください」と言えば、世界の料理の中の、日本料理というジャンルの中の、寿司というカテゴリーの中の、イカのにぎりが出てくる。焼鳥屋で「カワください」と言えば、世界の料理の中の、日本料理というジャンルの中の、焼鳥というカテゴリーの中の、鶏の皮の串焼きが出てくるのと同じ仕組みだ。
 日本人はカレーの中の具の種類が多いと喜ぶ傾向があるが、インドカレー文化圏では一つの料理に肉と野菜、あるいは魚と野菜が具として共存していることは珍しい。
 つまり、日本のカレーは料理の一品なのに対して、インドカレーは一品料理の集合体なのだ。別の言い方をすれば、日本のカレーは料理そのものなのに対して、インドカレーは大きなカテゴリーなのだ。これで、その違いがはっきり見えてきただろうか?
 「インド料理=インドカレー」だと思っている人がいるとすれば、その考え方は完全に間違っている。「日本料理=寿司」が完全に間違っているのと同じことだ。なぜなら、豆のスープ(ダル)や菓子ではない砂糖なし豆製ドーナッツ(ワダ)、菓子ではない豆粉の薄焼き煎餅(パパド)やカレー味の炊き込みご飯(プラオ)、インド風天ぷら(パコラ)など、カレーとは言えない料理も多数あるからだ。日本でも寿司だけではなく、味噌汁、炊き込みご飯、天ぷらも立派な日本料理なのと同じことだ。

豆と野菜のカレー

 各国共に、これが料理の基本なので種類が多い。
 例えば、パキスタンと北インドの単独の食材を使った代表的なものでは、バインガン(ナス)ビンディ(オクラ)、パラク(ホウレンソウ)(日本のカレーの常識を完全に覆す緑色のペースト状。これを応用したのが、我が家の大根葉のインドカレーだ。)、カリラー(ゴーヤー)、チャナ(ヒヨコ豆)のカレーが挙げられる。同じく2種類の食材を組み合わせたものでは、アルーマタル(じゃが芋とグリンピースのカレー)、アルーゴビ(じゃが芋とカリフラワーのカレー)が挙げられる。また、パラクパニール(ホウレンソウとカッテージチーズのカレー)も、野菜料理の中に分類される。
 ネパールではインドと同じような食材に加えて、サヤインゲンのドライカレーもごく一般的であった。なお、日本のインド・ネパール料理店では「タルカリー(ネパール語:तरकारी tarakarī)」という名称で肉入り野菜カレーが提供されているようだが、それは日本人の趣向に合わせたものであって、現地で「タルカリー」と言えば野菜だけなので要注意!

魚のカレー

 インド全体からすると魚料理は珍しいが、こと西ベンガル州とケララ州では魚料理が一般的になっており、主にアジやサバのような青魚が汁気のあるカレーに仕上げられる。
 パキスタンでは肉料理が発達しているせいか、魚料理はあるのだろうけれども、私は一度も見なかった。
 一方スリランカには魚だけでなく、蝦や蟹料理などもあった。
 ネパールには海が無いが、川や湖の魚を食べる習慣がある。但し、汁気のあるカレーにするよりも、香辛料を塗した唐揚にしている方が多かったように思う。
 我が家のオリジナル料理では、サバのヨーグルト煮込みインド風がある。

肉のカレー

 インド・パキスタンで最も一般的な肉は羊か山羊で、ネパールでは水牛だ。そして、いずれの国でも最も高級なのは鶏肉で、豚や牛の肉を用いた料理はあまり見かけなかったのが日本とは正反対だ。その理由は宗教上の制限によるものが大きい。
 日本で羊や山羊の肉を食べて臭いと思ったことはあったが、現地では一度もなかった。これは餌の違いによるものなのか、香辛料の添加など調理の違いによるものなのか、いまだに解明できていない謎だ。
 日本には、「カレーは長時間煮込んだ方が旨くなる」という伝説があるようだが、これは半分正解で半分間違っている。正解なのは、前にも述べた通り日本のカレーはシチュー系料理であり、シチューは煮込んだ方が具材の旨味が汁(ルー)に溶け出て旨くなるからだ。間違っているのは、香辛料を長時間加熱すると、せっかくの香りが飛んでしまうということだ。だから、具材を長時間煮込むのは良いが、ルーやカレー粉を入れてからはそれが全体になじんだら、すぐに火を止めた方が良い。つまり、シチューがカレーに変身してからは煮込まない方が良いということだ。
 インドカレー文化圏では、例外を除いて料理を長時間煮込んだりしない。普通は肉料理の肉を入れるのは最後の方で、その芯に火が通ったらもう料理完成。なぜかというと、肉を加熱するとしばらくは柔らかいが、すぐに固くなってしまう。そして、さらに加熱するとまた柔らかくなり、最後はトロトロになるのだが、肉の旨みの大半は水の汁の中に溶け出てしまう。「主な香味野菜と調味料」のところでも述べたように、インドカレー文化圏の料理の多くは、調理の初めに香辛料と香味野菜による油溶性のだしがしっかり取られているので、中国や日本の料理のように水溶性のだしをあまり重視していない。というか、「だし」には2種類あるでも述べたように、水で肉や魚のだしを取るという発想がないのである。そのためインドカレー文化圏では、カレー味焼きそばのようなものはあるが、中国や日本のような汁ものの麺類が発達していない。その反面、肉料理では旨みが外に出ておらず固くなる前に加熱を終わらせ、肉そのものの味と香辛料の繊細な味と香りを楽しむのだ。
 北インドとパキスタン共に最も一般的な肉料理はキーマだろう。「マトン挽肉のドライカレー」と言えば私たち日本人にはわかりやすいと思う。日本ではキーマカレーという名称で知られているが、現地の食堂でそう言っても通じない。ただ「キーマ」と言った方が通じる。
 また、挽肉を鉄の串に巻き付けて焼くシークカバーブや、ヨーグルトや香辛料などに付け込んだ鶏肉を土製の窯で焼くタンドーリチキンは日本でもかなり有名だ。

宗教による食材などの制限

ヒンドゥー教の聖地の沐浴場  今の日本だと、正月は神社へ初詣に行き、結婚式では十字架の下で愛を誓い、お盆にはお寺で墓参りをし、キリスト教の行事には仮装行列をしたりプレゼントを交換したりし、死ねばお坊さんにお経を上げてもらう、ということに疑問を持つ一般人は誰もいないだろう。それは、各宗教の教義とか哲理にはほとんど関心がなく、何でもいいからお祭りとか行事の雰囲気を楽しめればいいというのが、今の日本の国民性だからだと思う。
 ところが、このようなことは日本国外だと大変珍しいことなのである。だからほとんどの人は、たった一つの宗教にしか所属しておらず、各宗教による食材などの制限を厳格に守っている人が今でも少なくない。日本でも明治に入る前だと仏教色が強かったため、四つ足の生き物を食べることがその教えで禁じられていた。また、死後の霊魂に対する認識もあり、それが能楽などの古典芸能に反映されている。
 インドを少しでも深く旅したことのある人ならわかると思うが、現地の人がまず話しかけてくるのは、「あなたはどこから来ましたか?」。その次の言葉がほぼ必ず「あなたの宗教は何ですか?」だ。これは、好奇心と相手の宗教に対する尊敬の念の両方であり、その考え方や食生活をかなり知ることになる。そのため、その後の会話にかなり影響を与えることになる。今の日本の一般社会では、まず考えられないことだ。
 例えば、ヒンドゥー教徒は牛を食べないし菜食主義者 (Vegetarian) が多い。ここで言う菜食主義とは、健康志向とかではなく不殺生の思想から来ているものだ。そのため、肉、魚、卵とそれらの加工品は食べないが、牛乳や乳製品は殺生が伴わないので口にしても良いことになっている。というか、彼らはそれらを積極的に摂取しているように見える。
 イスラム教徒が肉を食べる場合は、その教義に基づいた方法で屠殺された肉(経典が書かれている唯一の言語アラビア語でハラール (halal) حلال 。直訳すると「許された」) しか口にすることはできない。その中でも、豚とその加工品はいかなる方法で屠殺されたものでも食べてはいけないことになっている(アラビア語でハラーム (haraam) حرام 。直訳すると「禁じられた」)。
 日本で一般的に売られている、いわゆる「合挽き肉」は牛と豚の混合なので、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒が大多数を占めているインドとパキスタンのいずれの人も口にすることが出来なくなる。そのため、外国の方を家に招待してご馳走するときには、このことに気を付けなければならない。
 しかも、ジャイナ教では昆虫や微生物を含む全ての動物と一部の植物の殺生が認められていない。それは食べるか食べないかという次元のことではなく、生き物を殺すか殺さないか、苦痛を与えるか与えないかということなのである。そのため、穀物と豆類と一部の野菜と一部の乳製品だけしか食べないのだが、私の知る限り彼らは体形が小さかったりとか病弱だったりするということはなく、その反対に肥満の人がほとんどいなかったように思う。その第一の理由は、豆類というたんぱく質は多く摂取しているが、動物性脂肪を全く摂取していないためだろうと思う。私の勝手な推測だが。
 その一方、スリランカの仏教徒が多く住む地区では、このような制限を一般人に対して行っていないようで、今の日本と同じような食材が用いられていた。
 また、ネパールのチベット系民族の多くには仏教徒が多いが、彼らの料理には肉が比較的多く使われている。なぜかというと、彼らの故郷チベット高原では降雨量が少ないため野菜が満足に育たない。それで仕方なく肉の比率が多くなったからだと思う。
 余談だが、私がチベットをヒッチハイクで移動していた時、現地のトラック運転手と、そこに乗せてもらっていた現地の巡礼や私などのヒッチハイカーが午前10時ごろ休憩したある一般家庭(多分運転手の親戚の家)でのこと。たまたま現地人と同じような格好をしていた私は巡礼と勘違いされたようで、その家のお母さんが出してくれた茶に、わざわざ金庫!から出した砂糖を一つまみ入れてくれたということがあった。おもてなしだ。巡礼という言葉は日本人には比較的わかりやすいと思う。四国の「お遍路さん」とほぼ同じだ。なぜなら、それを広めた空海(弘法大師)が日本に持ち帰ったのは、チベット仏教と源を同じくする教えだったのだから。ただしチベットでは白装束や杖や菅笠はない。また、五体投地(ごたいとうち)という日本ではまず目にすることのない方法(私は現地で実際に見た!)で巡ることがあるところが大きく違っている。
 また余談だが、現地のチベット人が日常的に飲む茶は砂糖ではなく塩とバター入りだ。なぜなら、ヒマラヤ山脈という超高山にさえぎられたネパール・インドや、遠く離れた中国平野部から入って来る砂糖はチベットでは金庫で保管されるような高級品。その一方チベットの一部の地域では、岩塩が見上げるような山になっており、ただ同然で手に入るからだ。要るのは何トンという岩塩の輸送費(燃料代)と人件費だけだ。私はヒッチのお礼として、乗ってきたトラックへの塩積みを無償で手伝ったので、人件費の相場は知らないが、そのような事実を知っている。また、常温では保存しにくい牛乳よりも、常温でも保存のきくバターが使われている。その反対にネパールでは、隣国インドならどこにでもあるサトウキビから作られる砂糖、平地ならそこら中にいる牛の新鮮な乳がすぐ手に入るので、茶にはそれらが入れられる。所変われば品変わる・・・

宗教名食材・飲料(制限の理由)
ヒンドゥー教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 卵(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
イスラム教
  • 豚(不浄)
  • イスラム教のやり方以外で死んだ動物の肉(不浄)
  • 酒(祈りの妨げになる)
シク教
  • 牛(神聖な生き物)
  • 酒(不道徳)
ジャイナ教
  • 植物以外の動物全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
仏教
  • 肉全般(不殺生の思想)
  • 酒(不道徳)
禁じられている
好ましくない


信者の多い宗教
インドヒンドゥー教・イスラム教・シク教・ジャイナ教
ネパールヒンドゥー教・仏教
パキスタンイスラム教
スリランカ仏教・ヒンドゥー教

 この一つの地球は、人類という一種類の生き物により、なぜか宗教や国家や民族などの各集団によって勝手に線引きされている。そして、それが戦争の原因になっていることが今も数多くある。それによって人や家畜だけではなく、それ以外の生き物も数多く犠牲になっている。
 何千年と続いてきたこのようなことを、いきなりなくすことは不可能に近いだろう。しかしこのまま何もしないでいると、人類はこれ以上進化しないと思う。進化とは、学校の理科の時間で習うような骨格的肉体的なことばかりではない。人類の場合は知能的ならびに精神的なこともあるのではないだろうかと私は思っている。このままその進化をしなければ、自分たちだけではなく地球の生態系すべてを滅ぼしかねないという、極めて未熟で不安定で危険な生物が今の人類なのではないだろうか。綿々と何億年も続き、しかも私たち人類を生み出し育んでくれてきた生態系に対して、たかが数万年くらい生きてきた私たち今の人類は、現在何を行っているのか。
 大脳という器官は、あくまでも数多くある器官の一つであり、その大きさが生物そのものの進化のように思っている人は意外に多いのではないだろうか。それが間違いの元になる。ただ大脳の形が大きいから自分たちは最も進化した生物だと勘違いして、人類がこのままやりたい放題をやっていたら、地球はとんでもないことになると私は思っている。恐竜の絶滅どころの話しではない。
 本当の知的生命体がすることというのは、核兵器や事故を起こすような原子力発電を考え出すことではない。宇宙戦争の下ごしらえをするようなことではない。地球の生態系のことをまだよく知りもしないのに、人間だけの都合のいいように生物の遺伝子を組み替えて生態系の秩序を乱すことではない。
 人間の目先の利益のためにドングリのなる木を杉の木に植え替えたため、腹を減らして里に降りてきた熊を射殺することではない。これは驚くべきことだが、半世紀ほど前に植えられたそれらの膨大な杉の多くは現在もまだ日本の山に放置されたままであり、その代わりに日本は世界の熱帯雨林を破壊し続けているのである。ただ「そちらの方が日本産の木より安いから」という理由で。それによって様々な熱帯地域の生物が絶滅や絶滅危惧になり、地球の気候変動を招いているということに問題意識さえ持っていない。これが知的で高等な生物であると私にはとうてい思えない。義理と人情のかけらすら感じられない。
 まず木材の輸入をやめ、日本の杉の木が高いのは、今まで熊によって殺傷させられた人たちへの供養とお詫びであり、また不当に我々が殺してきた熊たちへの供養と考え、日本で使用される木材はすべて国内の植林杉を使う。そして、それらの杉が伐採された土地にドングリのなる木を植えて熊を山に返す。これがまともな人間のすることではないだろうか? 明治時代以前の日本人なら必ずそうしていただろう。彼らは今の日本人より明らかに知的で高等であったと思えるからだ。日本の古典芸能を見聞きしていればよくわかる。
 「熊は山の使いであり、熊が人を襲うのは、勝手に生態系を乱された山の怒りなのだ。山の怒りを鎮めるためには、山の生態系を元に戻すことなのだ。」というような表現の仕方を聞いて、「そんな神話やおとぎ話のような馬鹿げたことは現実にあり得ない」と言って笑いとばす人が、科学妄信・工業妄信・経済至上主義によって人類を自滅に導き、人類の大脳の暴走から地球を救ってくれるというお役目を持った、尊敬すべき人なのだと私は思っている。私は、これ以上進化しないまま絶滅する人類と共に死んでも構わない。私は自分が生き残ることよりも、まず地球の生態系が生き残らなければならず、その中で運良く自分が生きていればいいのだから。
 今の人類は目先の利益のために、限りある地下資源をあちこちで燃やし、地球の気候変動を加速させ海水面を上昇させ、自分たちの居住地域を縮小させようとしている。これには近頃ようやく気が付いて方向転換をしようとしているようだが遅すぎる。もっと賢くなってほしい。現在私も月に2回ほど町へ買い出しに行く際などには、我が家の唯一の自動車であるガソリン軽自動車を使っているし、冬には暖房と調理を兼ねて小さな石油ストーブをたった一つだけにしても使っているので、これは私自身も含めてのことだ。
 私たちが本当にしなければならないのは、自分たちを含めた地球上の生態系を滅ぼさないという、ただそれだけのことなのだと思う。そういう意味では、人類以外の地球上のすべての生き物が知的生命体なのだと私は思っている。大脳という器官を持っていないとされている菌類やバクテリアもそうだ。私に言わせれば、彼らは今の人類よりも知的であり高等なのである。自分たちで自分たちを滅ぼすという、生物として最も愚かで下等な行為をせずに、今まで命をつないできたのだから。
 そのようなことを考えると、まずは猿の群れ同士の小競り合いのような規模ではなくなっている人間同士の殺し合いをなくすために、人類は知的精神的進化が必要なのではないだろうかと私は思うのである。そのためには人間同士で宗教や国や人種などの違いをお互いに無視したり批判し合うのではなく、認め合い尊敬し合っていくことが、人類のこれからの進化の始まりになるのだろうと私は思っている。そのため私はあえてそれらの違いを明確にするための項目をこのように設けた。小さな島国に住む私たち日本人が井の中の蛙(いのなかのかわず)にならないためにも、それを知っていくことが必要だと感じたからだ。
 しかし同じような島国でありながら、イギリス人の多くがそうなっていないのはなぜかと言うと、この国は世界各地からの移民を数多く受け入れており、国民それぞれの多種多様な価値観を互いに認め合わなければ、社会が成り立たないような状況になっているからだ。これは、彼らが精神的進化を始めている兆候なのかもしれない。それなら日本も同じように世界各地からの移民をもっと増やすべきだとまでは言わないが、インターネットという便利な技術がせっかく一般家庭にも浸透したのだから、より多くの日本人に、おしゃれなレストラン料理だけではなく、南アジアの宗教や国の食べ物の特色、そして素朴だが体の奥まで染み渡る南アジアの伝統料理のことをもっと知ってほしい。
 ちなみに私は特定の宗教団体には所属していないし、今後もそのつもりはない。宇宙と地球に対する自分独自の信仰というか、独自の考え方を持っていくだけだ。

国による特色

ここに掲載しているのは、たまたま私が現地で見たり体験してきたことだけだ。
これが全てではないので、もっと詳しく知りたい方は、ぜひネット検索で調べてみることをお勧めする。
インド・パキスタン共通

 パンジャブ地方は両国の国境にまたがっている。その料理は当然両国に共通してあり、それらは両国全土に広まっている。たとえば大きな鉄道駅の中の食堂のお品書きには、必ずパンジャブ料理のどれかがあったように思う。
 両国で最も一般的な肉料理といえば、やはりキーマだろう。

パキスタン

 この国では肉を使った料理が発達しているが、豚肉だけは肉屋に存在しない。また、海はあるのに魚料理も見掛けなかった。本当は、あるのだろうけれども。
 北から南の地方によって様々な美味しい料理がある。
 中でも感激したのは、北西部にあるアフガニスタン国境に近い大都市ペシャワール旧市街のシャッターの降りた大手銀行の出入り口の広い石階段で、夜間だけ営業している露天で食べた、ティッカという肉料理だ。丸く平たい小さな鉄鍋に油を敷き、香辛料香味野菜、トマトをジュッと炒めて、そこにマトンの角切りを放り込んでさっと炒めてあっという間に出来上がり。日本ではチキンティッカという名称はよく見かけるが、ここのはチキンではなくマトンだ。これをその鍋ごと出されて、ロティ(roti、روٹی)という小麦粉を練って平たく焼いたもので包んで食べるのである。とうとう病み付きになってしまい、私はこの街に滞在しているあいだ、この店に毎晩のように通った。
 この都市の東部には、隣国アフガニスタンの戦火から逃げて来た人々が多く暮らしているので、アフガニスタン料理なのかもしれない。固定した店舗を持たず、しかも夜間だけしかやっていないのでそう思う。いつも繁盛している店だった。

インド

インドの地図  とても広い国なので、地域によって言葉も文化も違う。特に、麦の栽培に適した気候で、ペルシャやイスラム文化の影響が濃い北と、水が豊かでインド古来の文化をかなり保持している南とでは、料理もかなり違ってくる。
 それが顕著に表れるのが主食の違いだ。インド亜大陸を北から南へ陸路で縦断したことがあったが、そこで面白いことを発見した。滞在する各都市で食べる大衆食堂の定食の主食が、最初は小麦で作ったロティ (roti、रोटी、روٹی) だけだったが、南へ下るにしたがって、ご飯が添えられるようになる。その量はだんだんと増えてきて、それに反比例するようにロティの枚数が減ってくるのである。そしてカルナータカ州あたりからはロティは完全に姿を消し、定食の主食はご飯一筋となるのだ。
 当然のことながら、おかずはその主食に合う味付けや形状になるわけで、それが定食の料理全体に影響を及ぼすのである。もう少し具体的に書くと、北インドでは油をたっぷりと使ったこってり料理をロティにくるんで食べることが多いのに対して、南インドでは油はそれほど多用せず、辛みは効いているが比較的さらっとした料理をぱさぱさのご飯に浸み込ませて食べることが多い。これは、北と南の農産物の違いに加えて、双方の気温の違いにもあるようだ。
 また北インドではイスラム教徒やシク教徒の比率が比較的多い。彼らは肉や鶏をよく食べるので、北では肉や鶏料理が発達している。中でもタンドーリチキンは日本でもご存知の方が多いと思う。それに対して南では、菜食主義のヒンドゥー教徒の比率が比較的多いので、野菜や豆料理がよく発達しているように思う。
南インドのバナナ畑
南インドのバナナ畑
 私はインドのどの料理も大体好きだが、「その中でも特に?」と問われれば、「南インド料理」と答えるだろう。なんと言っても、長方形に大きく切った一枚のバナナの葉っぱをお皿にして、その真ん中にまずご飯(お代わり自由の店が多い)を山盛りにし、その上にサムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))という野菜入りのカレー味豆のスープ(これもお代わり自由が多い)をかけ、その周りに何種類かのカレーや漬物を少しずつ置いて右の素手で食べる、ミールス(meals) という定食には特に感動した。菜食主義者(vegetarian)専用の店だと肉気は全く無いが、豆が豊富に入ったサムバールと、最後にプレーンヨーグルトをサムバールとカレーの混ざったご飯にかけて食べるので、栄養としては全く問題ないと思う。
 南インド料理は、そこで使われている香辛料と食材の多くが日本では手に入りにくいのと、身体を冷やす作用が強いのが玉に傷だ。私が作れる南インド料理はサムバールとマッサーラドーサというスナックだけだが、いずれも夏季限定にしている。
 東インドの西ベンガル州と南インドのケララ州も、日本と同じく基本的に米を主食にしているが、こちらは魚もよく食べる文化なので、いずれも魚のカレーを食堂で食べまくった。いや、その美味しかったこと! ケララ州では実際に作ってみたこともあった。

スリランカ

 人口で最も多いシンハラ族のほとんどは仏教徒、次いで多いタミル人のほとんどはヒンドゥー教徒だ。
 私が最初にインドからスリランカに渡る際、スリランカは内戦状態にあったため、両国をつなぐフェリーはずっと欠航していた。そのため南インドのケララ州から飛行機で首都コロンボへ飛んだのだが、1か月ほどこの島の各地に滞在して、今度は南インドのタミールナド州に飛んだ際、眼下の景色を目にして驚くことになる。スリランカの島全体がほぼ緑で覆われているのに対して、南インドのタミールナド州の大地は赤茶けており、緑はほぼなかったからだ。行きに気が付かなかったのは、ケララ州もほぼ緑で覆われていたからだ。これは、インドのケララ州とスリランカには調理のための燃料が豊富にあるということを示している。
 スリランカは海に囲まれているせいか、四ヶ国のうちで最も魚料理が発達している。他の国のメニューには存在していない、エビやカニなどもあったのが嬉しかった。また、水やココナッツミルクで煮る料理が多いのも特徴だ。それは、調理のための燃料が比較的手に入りやすいからだろう。
 日本と同じく米が主食だし、私の口に合う野菜料理もいろいろとあった。激辛料理が多いのも私は嬉しかった。
 それらの中で代表的なものが、「ライスアンドカリー(英語:Rice and curry)」と呼ばれる、読んで字の如く、ご飯とカレーの定食だ。カレーの味は店によってさまざまだが、南インドと同じくココナッツ風味のものが多いのは共通している。
 また、日本の鰹節と同じような「モルディブフィッシュ(英語:Maldive fish)」という調味料があって、それを粉末にして入れたカレーは旨味が強くなる。味も鰹節に近いので、日本人には親しみやすいと思う。
 また、中国人からの影響なのだろうか、茹でた冷麦(米製らしい)を小分けにして湯から上げ、丸く置いて冷ましたような「ストリングホッパー(英語:String hopper)」という麺もあった。これにカレーを掛けて、箸ではなく右の素手で混ぜながら食べるのが本式の食べ方だ。

ネパール

 多民族国家であり、ヒンドゥー教徒と仏教徒が多い。その中でチベット系民族の料理が基本的に影響を受けているのはインドよりも中国であり、チベット人の店でカレーのような料理は見かけなかった。
 ネパール広範囲では、「ダルバート タルカリー (ネパール語:दालभात तरकारी (dālbhāt tarkarī)」通称ダルバートという定食が最も一般的だ。ダルという豆のスープを、バート(ご飯)にかけて、タルカリー(野菜のカレー)を添えて食べる、読んで字の如くのメニューだ。これに「アツァーラ(ネパール語:अचार(acāra)」という漬物や「ツァトニー(ネパール語:चटनी(caṭnī)」という薬味が加わることもある。これをネパール特産の小型で激辛の青唐辛子「クッサーニ(ネパール語:खोर्सानी (khorsāni)」を生で齧りながら食べると、さらに食が進む。
 日本のインド・ネパール料理店では、タルカリーに肉を入れていることがあるようだが、それは日本人に対するサービスであって、現地のタルカリーは野菜だけのカレーだ。
 地理的には北インドに最も近いが、タルカリーは油をそれほど使わず香辛料の種類もずっと少ない。そしてなんといっても主食が小麦ではなく米だということだろう。とうとう病み付きになってしまった私は、間借りしていた農家のおかみさんから大よその作り方を教わり、約一か月間薪で自炊して、毎日のようにこのセットを食べていた。香辛料・香味野菜の配分と、メインとなる野菜の種類の違いによる味のバリエーションは、単純なのでかえって解りやすかった。何が解ったのかと言うと、何の食材と香辛料を食べたのかによって生ずる体調の変化だ。この毎日の実験的体験が感動の連続であり、もちろん味にも飽きがこなかった。この貴重な食生活が、今の私のインドカレー情熱の基礎になっているのである。基本的なインドカレーの作り方から覚えたいという人は、まずネパールのタルカリーから入ってみてもいいかもしれない。

主食

 英語:rice、ヒンディー語:चावल (chaval)、ウルドゥー語:(chaval)چاول、ネパール語:भात (bhāt)、タミル語:அரிசி (arici)。
 米が主食となっている国や地域は主に、ネパール、南インド、東インド、スリランカだ。その他の国や地域で米は、ビリヤーニとかプラオ、日本人にわかりやすく言えば、カレー味焼きめしカレー味チャーハンとか、カレー味炊き込みご飯といった独立した料理になることがある。
 日本の食用米はジャポニカ種といって、ご存知の通り炊くとふっくらモチモチとやや粘り気があるご飯に仕上がる。
 これに対してインドカレー文化圏の米はインディカ種といって、炊くのではなく茹でた汁を捨てる。そして細長くぱさぱさで粘り気が少ない。そのため大袈裟に言えば、寿司を握るとシャリが崩れ落ち、おにぎりは形にならない。ところが、これがインドカレー文化圏の料理には合うのである。この地域では、ご飯の上にかけるのはカレーではなく、ダルとかサムバールといった豆のスープだ。それがご飯全体によく浸み込んで食べやすくなるのだ。日本の、特に冷やご飯でこれをやると、スープはご飯にあまり浸み込まず、その多くは流れ落ちてしまう。

小麦

 小麦が主食となっている国や地域は主に、パキスタン、北インド、西インドだ。
 日本では普通、小麦粉と言えば精白されたもののことだ。ヒンディー語:सफ़ेद आटा (sefed aata)、ウルドゥー語:(sefed aata) سفید آٹا。
 インドカレー文化圏では逆に、精白していないものが普通の小麦粉になる。ヒンディー語:आटा (aata)、ウルドゥー語:(aata) آٹا。
 また、日本では「麦ご飯」といって、米に麦を混ぜて炊くことがあるが、インドカレー文化圏でそのような食べ方を目にしたことは一度もなかった。私が知る限り米は米で茹でて湯を捨て、小麦は粉にしたものを塩水でこねて焼くか揚げるかする。その形や加熱の方法などによって呼び方が違ってくる。

名称ヒンディー語(読み)(読み)ウルドゥー語形状や製法
ロティरोटी (roti)(roti) روٹی水と塩でこねた小麦粉を丸く平らに伸ばし、丸く平たい鉄鍋(tawa)で焼き、最後に直火で焼いたもの。下記のチャパティもこれに含まれる。
チャパティचपाती(chapati)(chapati) چپاٹی‎全粒粉(ぜんりゅうふん・精白していない小麦粉)を使ったロティ
プーリーपूरी (puri)(puri) پوری小型のロティ生地を焼くのではなく油で揚げたもの。出来立ては紙風船のように丸く膨らんでいる。
ナンनान (nan)(nan) نان精白した小麦粉をそれ自体の天然酵母で発酵させた生地に、塩、ヨーグルトまたは牛乳などを加え、タンドールという土で出来た大きな窯で焼き上げる。日本のインド料理店の主食は主にこれなので誤解されているようだが、現地では高級品なので、一般庶民の日常は上記のロティが主食となっている。
ちなみに私は日本のインド料理店で一度食べただけで、これらの国々でナンを食べたことは一度もない。
自家製ロティ
自家製炭火焼きロティ

タワ
ロティ(チャパティ)を焼く鉄製の専用器具タワ(tawa)

汁物

 ネパールや北インドやパキスタンでは、ダル(dāl)(ネパール語:दाल、ヒンディー語:दाल、ウルドゥー語:دال )という豆のスープが一般的だ。日本ではよく「ダルカレー」と書かれているのを目にするが、それははっきり言って間違っている。現地の食堂でそう言っても通じない。ただ「ダル」とか「ダール」と言わなければだめだ。私の個人的感覚からしても、ダルは汁物料理「スープ」であってカレーではない。味噌汁や吸い物やコーンポタージュは「おかず」ではない!と同じだと言えば、日本の方にはなんとなくご理解いただけると思う。ダル(豆)を使ったカレー(おかず)のことを「ダルカレー」と言っているのなら、話しは別だが。
 油や香辛料や具材多めのドロッとしたダルはカレーと思えなくもないが、現地の大衆食堂に多い、豆をただ塩で茹でただけのようなシンプルなものはやっぱり汁物だ。これは、油と香辛料を多用した料理と対極をなしている。そのため、定食に付いてくる何種類かのそのような料理を食べても、さっぱり味のダルスープを含ませた主食を合い間に食べれば、食事が終わるまで全く飽きがこない。現地の人の食べ方を見ていればそれがよくわかる。カレーなどのおかずとダルの扱いが明らかに違っているからだ。
 また店の方でも、カレー(おかず)のおかわりだとお金を取るが、ご飯とダルのおかわり自由という大衆食堂が少なからずある。日本の民宿や旅館でも、白いご飯と味噌汁のおかわりは自由という店が少なくないのと同じだ。これでダルがカレー(おかず)扱いでないことがわかる。現地の都市から田舎の村まで、地元の人しか行かないような、日本で言うなら下町の大衆食堂を食べ歩いてきた私が言うのだから間違いない。
 日本の味噌汁のような存在で、現地では基本的に人気がある。主食とダルと漬物とカレー1品があれば、ちゃんとした食事として最小限成り立つという感覚があるようだが、それは日本人のご飯とみそ汁と漬物とおかず一品に対する感覚にかなり近い。また、ネパール・北インドでは、カレーをご飯の上に乗せながら食べることはないが、ダルはご飯の上にかけて食べることが多い。日本でも味噌汁をご飯にかけることがあるだろう(好き嫌いはあると思うが)。
 南インドの基本的料理サムバール(タミル語:சாம்பார்(cāmpār))というスープもご飯にかけるし、これをおかわり自由にしている店も多いが、こちらは油と多彩な香辛料、そして豆以外でもナスやオクラなどの野菜具沢山なので、スープとしてもカレーとしても認識できる。これを例外とすれば、やはり通常のダルはカレーのような「おかず」ではない。

漬物

自家製大根葉の漬物
自家製大根葉の漬物

 インドカレー文化圏にも漬物があり、現地ではやはり基本的に人気がある。日本でも漬物がご飯に欠かせないのと同じだ。アチャール(achaar)(ヒンディー語:अचार、ウルドゥー語:اچار)、アツァーラ(acāra)(ネパール語:अचार)、ウールカイ(uuṟukāy)(タミル語:ஊறுகாய்)。
 ただし、日本の塩漬けとか糠(ぬか)漬けというものとはかけ離れている。なぜなら、さまざまな香辛料を加えたり、加熱したり、油漬けにしたり、保存容器を灼熱の陽光に当てて発酵させたりすることがあるからだ。むしろ、油を使うことを除けば、韓国のキムチの方に近い。
 素材も青唐辛子やジャックフルーツなど、日本の漬物ではありえない野菜や果物もよく用いられている。
 逆に日本の一般市場のもののように、ド派手な色の薬品で無機物的な着色をしているものは見たことがない。これは、これらの国々の宗教や伝統医学の「食」に対する影響力が日本よりずっと強いためだろうと思う。日本にも宗教や医学と関わりのある「精進料理」や「薬膳」というものがあるが、それらは一般社会の食生活の主流ではない。
 言い方を変えれば工業製品であるか食品であるかでも述べたように、戦中戦後の物不足と貧困から高度経済成長を遂げた日本では、食品が機械や薬品を使って安価に大量生産されるようになったので、多くの食品が工業製品になっていった。例えば、日本では本来その多くが発酵食品であるはずの漬物が、現在の市販のものの多くは発酵熟成させないで、酸味料や化学調味料や甘味料や着色料を使用し、いかにも発酵したように見せかけて作られた工業製品になっている。その方が、本物より早く安価で生産できるからで、そのような製品に対して何の疑問を持たず買い求める消費者が多くいるために、企業は当然のことながらそのような製品を数多く作り続けているのだ。
 それに対してあちらの国々では、食べ物は神からの授かり物であり、伝統的な製法や調理法であるほど、その神聖さが強まると信じて疑わない消費者が大多数を占めている。そのため食品が食品であり続けているのだろう。それはカレーにせよ漬物にせよ同じことだ。
 日本でも神社にお供えする餅だけは、今でも機械ではなく臼と杵でつくところがまだ多く残っているだろう。また、日本の一般家庭の大晦日の夜には蕎麦やうどんを食べて、元旦には雑煮を食べるという感覚が、あちらでは一般家庭の日常的な料理にまで今でも残っていると思っていただければ、ご理解いただけると思う。
 私は現地で実際に漬物を作ってみたことがある。北インドで一般的なピンポン玉くらいの形と大きさのレモン(ヒンディー語:नींबू neemboo)ニンブー(日本のスダチを黄色くしたようなもの)を使ったインドの伝統的な作り方を教わって。ヒンディー語:नींबू का अचार(neemboo ka achaar) 、日本語:レモンの漬物。
 横半分に切った皮が付いたままのニンブー1㎏ほどを大きめのガラス瓶に入れて塩と粉の香辛料をまぶす。鍋に多めの植物油を入れて熱し、粉ではない香辛料を入れて香り出しをする。そこに先ほどのニンブーを入れてしばらく炒める(油はねに注意)。火を止めたらガラスが割れるのを防ぐためにある程度冷ましてから、先ほどのガラス瓶に油ごと入れ、そこにひたひたになるまで常温の植物油を注ぎ足す。それを密閉して、ガンガンに陽の当たる窓際に十日ほど置いて出来上がり。
 作るのは初めてだったのに、食堂で出されるものと遜色のない味と香りに仕上がっていたことに我ながら驚いた。香辛料と微生物の力だ。レモンに元からある酸味と苦味に加えて発酵の酸味と旨味が加わり、さらに香辛料の香りと辛みと旨味によって強烈な味になっている。食事をしながらこれを時々かじると、40℃以上の気温にも負けずにどんどん食が進む。腹八分になるまでご飯とダルを何度おかわりしても腹を壊すことはない。だから、日本の夏よりずっと暑い地域にエアコンや冷蔵庫なしで長期間滞在しても、私は「夏バテ」することがなかったし、そのような地域で夏バテや熱中症になった現地の人を一度も見たことがなかった。当時の彼らの多くは、今の日本のような冷却機械類をほとんど持っていなかったはずだ。
 この天然の食材だけを用いた食欲増進と健胃効果! これこそエアコンや冷蔵庫のない古代から受け継がれた宗教と伝統医学が「食」に対して与えている影響なのである。食品添加物だらけの工業製品の漬物には、神様や健康の一つも見い出せない。
 インドカレー文化圏の大衆食堂で定食を注文すると、必ずこのような天然素材による漬物一品が付いてくる。ちょうど日本のカレーの福神漬と同じような存在だ。ただ、福神漬が日本のカレーの漬物の定番なのに対して、あちらには定番がない。店や各家庭によって使う素材や香辛料の配分がそれぞれ異なっており、その多様性がちょうどインドカレー本体とそっくりでおもしろい。
 余談ではあるが、インド旅行中にたまたま日本から送ってもらった昔ながらの梅干しを食べることがあった。私が宿泊していたゲストハウスのオーナーの息子とその友人が、私の部屋のドアの外からそれを見ていて、「その赤いのは何か?」と息子の方が英語で尋ねてきた。インドの小学生は、私を含めた日本の一般の大人より英語が上手だ。私はヒンディー語で「जापानी अचार(ジャパニーアチャール)」と答えた。「日本の漬物」という意味だ。すると彼はまた英語で、「食べてもいいか?」と言ったので私はそれを二粒小皿に取って彼らに渡し、「酸っぱいからちょっとにしとけよ」と今度は英語で言った。すると彼らはそれぞれ手でつまみ、ちょっとだけ齧ってから目を輝かせて言った。「これは食べれるよ!」そして二人とも丸ごと各自の口の中に放り込んでしまった。私は「種は硬くて食べられないからね」と言って小皿に出させたが、内心は驚きだった。梅干しを丸ごと食べる小学生は日本だと今どき珍しいのに! しかしよく考えてみれば、梅干しに油と薬用香辛料をまぶせば、私が作ったニンブーのアチャールに近い味になるはずだ。私は、インドと日本の伝統的食品の接点を見つけたようになり、とても嬉しくなった。

薬味・ソース・たれ


自家製トマトチャトニー

 インドカレー文化圏には、薬味・ソース・たれの機能を合わせ持っている調味料がある。日本では「チャツネ」と呼ばれているが、それは日本独自の発音なので世界各地では通じない。「1・2・3(ワン(wan)・ツー(tsuu)・スリー(surii))」が日本人同士でしか通じないのと同じだ。イギリスやインドカレー文化圏などでは、「チャツネ」ではなく「チャトニー」の方が通じる。
 日本では隠し味に使われることもあるようだが、現地ではあくまでも薬味・ソース・たれだ。七味唐辛子や和辛子やワサビを加熱調理中に入れないのと同じだと言えば、日本の方にはご理解いただけると思う。
 詳しくは、こちらをご参照ください。

配膳

 日本の一般家庭や喫茶店や大衆食堂の多くでは、肉や野菜などの三種類以上の食材を一つのカレーにして同じ皿のご飯の横にぴったりと添えるが、インドの大衆食堂で出されるものは全く違う。
 意外に思われるかもしれないが、料理の味はともかく、むしろ日本の懐石料理に似ている。つまり、「一汁三菜」に似た形だ。例えば、vege(菜食)の店の定食の場合、<主食ダル(一汁)+(ほうれん草のカレー(一菜)+オクラのカレー(一菜)+ナスのカレー(一菜))=(三菜)+アチャール(香の物)>が、それぞれ別々の小皿や、お椀くらいの大きさのボウル(ヒンディー語:कटोरी(katoree)、ウルドゥー語:(katora)کٹورا)に盛られる。ただし、それは懐石のきっちりした作法のようなものではなく、三が二になっても四になっても構わない。食べる順番も全くないが、マナーは少しある。それは次の食べ方に書いてある。
 主食を手前中央に置いて、その外側周辺に複数の料理や薬味を半円形に配置するのが一般的な定食だ。日本ではよくご飯にカレーをかけて食べるが、インド・ネパールでご飯にかけるのはカレーではなく、ダルのような豆のスープだ。
 例えば、Non Vege(非菜食)の店で定食を注文すると、ご飯やロティなどの主食を中心にして、その外側にダル、ほうれん草、オクラナスキーマ漬物チャトゥニー(チャツネ)などが半円形に置かれる。そしてまずダルをご飯にかけてから食事が始まるのだ。
 パキスタンや北インドでは、それらを個別の小皿またはお椀くらいの大きさのボウル(ヒンディー語:कटोरी(katoree)、ウルドゥー語:(katora)کٹورا)に盛り付けるのが一般的だが、西インドではターリー(thāli)(ヒンディー語:थाली、ウルドゥー語:تالی)という区画分けされた一枚のステンレス製の大皿に盛り付けられることもある。南インドでは長方形に大きく切った一枚のバナナの葉に盛り付けられることもある。ネパールやスリランカでは、ご飯に付けないようにして同じ皿に盛られることが多いが、ネパールでご飯にかけるのはカレーではなくダルだ。
 ちなみに、私が食べる側の立場なら、個人的にはインド式の配膳の方が好きだ。なぜなら、料理の単体もしくは何かと何かの組み合わせを変えれば、さまざまな具材と香辛料によって、一口一口で違う香りと味が楽しめるからだ。日本のカレー1品だけだと、最初から最後までずっと同じ香りと味だ。
 それとは反対に、私が作る立場もしくは、作るのと食べるのの両方の立場になった場合、個人的には日本式の配膳の方が好きだ。なぜなら、作るのは一つの鍋、食べるのは一つの食器で済ますことができるので、作るのも洗うのも楽だからだ。それは、昭和期に各家庭の主婦だった皆さんも同じことだったろう。日本でこれだけカレーライスが一般に浸透したのは、それによるものが大きかったからだと思う。また、食事の準備と後片付けが楽という点、栄養的にもバランスが取れているという点で、バーベキューと共に日本のカレーが日本のキャンプの定番料理になっていることもうなずける。

食べ方

 日本だと炊き立てのご飯が最高とされるが、これらの国では主食が冷めていてもあまり問題ない。
 それとは逆に日本だと、カレー丼が冷めた状態で売られていて後からレンジでチンするが、これらの国だとカレーは必ず作りたてでなければならないようだ。私がネパールで自炊生活をしていた頃、昼多めに作ったカレーの残りを常温で置いておいていたら、夕方にはもう腐っていたということがあった。当時これらの国々では、冷蔵庫はまだ料理店や一般家庭に普及しておらず、日本の猛暑日どころか40℃を超えることもよくあるので、そういうことへの防御策だろうと思う。
 日本では、「カレーは一晩寝かすと旨くなる」と言われるが、それはルーの中の旨味成分が大きく切ったジャガイモやニンジンなどの食材に浸み込むからだ。しかし、これらの国の料理にルーというものはないし、ジャガイモやニンジンなどの具材を大きめに切って調理することはないので、そのような習慣はないと思う。
 近頃ではスプーンを使う人も増えてきたようだが、道具を使わずに右の手で直接食べるのがいずれの国でも伝統的な食べ方だ。なぜかというと、左手はトイレでお尻を洗うときに使われ、「不浄」とされているからだ。かといって全然左手を使わないわけではなく、食事中に食器に手を添えたり、水を飲むときコップを持ったり、ロティなどを食べやすい大きさにちぎったりするときに使われている。
 最初私はその食べ方に抵抗を感じたが、慣れてしまうと、ことこれらの国々の料理は、手で直接食べた方が断然美味しく感じるようになった。ちょっと文学的な表現をすれば、指でも味を感じるようになったのである。すると何種類ものナイフやフォーク、スプーンなどの道具を使って食べる西洋のコース料理が、何だかロボットの食事のように感じられるようになった。
 食べるとき食器に手を添えはしても、日本でご飯や味噌汁を食べるときのように食器を持ち上げて食べることはマナーに反する行為となる。ネパールで農家に間借りして自炊していた頃、家の中は暑いので庭であぐらをかいて夕食を食べていると、「皿を下に置いて食べなさい」と、そこのお婆さんからよく注意されたものだ。また、日本で「犬食い」と言われているように、卓上に置かれた食器から直接口で食べることもマナー違反だ。
 背筋を伸ばし、卓上または大地に置かれた食器から、右手の指の第二関節から先だけに料理が付くようにして食べるのが、最も美しい食べ方とされる。実際にこれらの国の人々がそうして食べているのを見ると、確かに「美」あるいは「優雅さ」を感じる。もしかして我々日本人も、箸を使うようになるまでは、土器や漆器などからそうして食べていたのかもしれない。

我が家でのレシピ

 ここでは、日本で比較的手に入りやすい香辛料と食材を用いた、簡単に作れる北インド風料理をご紹介している。香辛料4種類(鮮烈な香りのクミンパウダー、フルーティーな香りのコリアンダーパウダー、辛みを付けるチリパウダー、黄色い色を付けるターメリックパウダー)。それとニンニク・タマネギ・トマト・塩があればほとんどが作れる。これに加えて日本の七味唐辛子的使い方のガラムマサラがあればほぼ完ぺきだ。

菜食(vege)大根葉のインドカレー ナスのインドカレー オクラのインドカレー タケノコのインドカレー じゃが芋と大豆のインドカレー
非菜食(nonvege)キーマカレー サバのヨーグルト煮込みインド風
主食 チャパティ(ロティ) 薬味 チャトニー(チャツネ)

 北インド料理作りのポイントは、まず最初に香辛料と香味野菜を多めの植物油で炒めることにより、それらの香りをしっかりと油に移すことである。そのとき加熱し過ぎて焦がさないようにすること、そしてシチューのように長時間煮込まないことだ。この三点に気を付ければ、ほとんど失敗することはない。

だいどころ  客間


(C) 2004-2023 Tano Kakashi All Rights Reserved.
inserted by FC2 system