椎茸の宝船焼(たからぶねやき)
2007.03.18
更新 2020.01.10
宝船焼「下町のマドンナ」祝祭用
秋から春に掛けて、我が家の食卓を賑わせるのが自家栽培の椎茸だ。
気温の高い時期に出たものには虫が入っていることが多く、調理する前に切って見る必要があるが、晩秋から早春のものにはまず入っていないので、丸ごと焼いて食べるのには最適だ。
それに生姜醤油を付けて食べるだけでも充分旨いのだが、具や調味料を乗せて焼くと、それらの組み合わせの違いによって味の変化を色々と楽しむことが出来る。
これぞ人呼んで、「宝船焼(たからぶねやき)」。
概要
この料理は、「船」と「宝」と「帆」の三つの部分から構成されており、その全てを用いれば祝祭用となる。装飾的な部分である「帆」を省略すれば日常用となり、「たらい舟」に「宝」が積まれているものと見なされる。
「宝」の外見的味覚的その他の特長に基づいて、任意の名称が付けられる。
材料
- 「船」
- 大きめの生の椎茸。必ず傘が開ききっていないものにする。傘が開ききっていると、焼いている間に「宝」が滑り落ちて縁起が良くないのだ。
- 「帆」(祝祭用のみ)
- 「宝」
- 卵、魚、肉、チーズなどの動物性食材※
- ネギまたはタマネギなどの野菜※
- 胡椒やハーブなどの香辛料
- 塩または塩分が入った調味料※
- 食用植物油やバターなどの油類
※必需アイテム
作り方
- 日常用・祝祭用
- 椎茸の傘の上を軽く水洗いして石づきを取る。
- 逆さにした椎茸の傘の裏側の上に「宝」を乗せる。
順番は、まず肉や魚、野菜のみじん切り、調味料を全部混ぜ合わせて乗せ、油類は最後に掛ける。この下の二つの画像は、「下町のマドンナ」の場合だ。
- オーブンまたは、オーブントースターで両面同時に焼く。ホイール焼きより1~2分短めが目安。
- 「宝」と「船」の両方に火が通ったら取り出して皿に盛る。日常用はこれで出来上がり。
- 以下、祝祭用のみ
- 桂剥き(注)した大根を4~5センチ角に切ってU字型に曲げ、その両端に爪楊枝を1本通して「帆」にする。それを「船」の石づきの上に刺して立てれば出来上がり。
(注)桂剥き(かつらむき):長さ5センチくらいに切った大根などを、皮を剥くようにして外側からくるくると薄く包丁でむいていくこと。主に刺し身のけんを作るときに用いられる手法。
ポイント
- キノコは九割以上が水分で出来ているので、焼いているうちに蒸発したり垂れたりしてそれが失われる。すると、最初の見た目よりも小さくなるため、思ったより塩辛くなってしまうことがある。それを想定して塩分は控え目にした方が無難。
- 複数の種類の{宝」を作る場合、基本となる野菜のみじん切りと挽肉や塩胡椒などを、右の画像のようにあらかじめ混ぜておくと便利。
- 「宝」の量が多過ぎると、中まで火が通らなかったり、「船」が熱で収縮する際にその一部が落下することがある。欲も程々に。
- 「宝」に火を通そうとするあまり「船」を焼き過ぎると、パサパサになって美味しくなくなるので注意。
- 「帆」に使った大根はもちろん食べられる。爪楊枝は、これに使うだけなら洗って何回でも使える。
- ここで紹介している例以外でも、「宝」の素材は世界中に存在していると考えられる。発掘してみる価値大いにあり。
調理例
成功例
- 下町のマドンナ
|
|
焼く前 |
日常用 |
宝: | ニンニクと玉葱のみじん切り・粗挽き黒胡椒・醤油・バター |
解説: | 肉厚椎茸のみずみずしさとバターの芳醇な香り、それをニンニク・玉葱・黒胡椒という庶民的な味わいが引き立てるお勧めの一品。 |
- 銭形平次
|
|
焼く前 |
日常用 |
宝: | 葱のみじん切り・鯖の切り身・ニンニクの輪切り・醤油・胡麻油 |
解説: | 鯖皮柄の着物でニンニク輪切りの銭をシュッ!
「えーい、しゃらくせぇ! 銭形平次でぇ!!!」 |
- 黄金のモナリザ
宝: | ニンニクと玉葱のみじん切り・塩胡椒・ピザ用チーズ・エクストラヴァージン油 |
解説: | 古典的なイタリア風の味わい(?)と、焼き上がりが黄金になることからこう名付けた。 |
- パレルモの黒真珠
|
|
焼く前 |
祝祭用 |
宝: | ニンニクと玉葱のみじん切り・塩胡椒・バルサミコ酢・バターまたはオリーブ油 |
解説: | 玉葱にバルサミコ酢が掛かると黒真珠のような輝きを放つ。
そこにバターまたはオリーブ油が加わることによって地中海のイメージになる。
パレルモとはイタリア南部シチリア島の主要都市名だ。 |
- 金の池地獄
|
|
焼く前 |
日常用 |
宝: | 刻んだ葱と海苔・溶き卵・シラス・醤油 |
解説: | 悪いことをした人間は地獄に落ちる。でも、このシラスたちは何も悪いことをしていない。
ということは、これは地獄ではなくて天国なのだろう。
見た目が「血の池地獄」に似ているので、こう名付けただけだ。 |
- 佐渡金山
|
|
焼く前 |
日常用 |
宝: | 葱と生姜のみじん切り・ブリの薄切り・味噌 |
解説: | 各「宝」の持つ味わいが、お互いを引き立て合っている。和風宝船焼の最高峰! |
- 大判小判
|
祝祭用
|
宝: | 葱のみじん切り・生姜おろし・鶏肉薄切り・醤油・サラダオイル |
解説: | 鶏肉と椎茸の旨さをよく引き出している一品。 |
- メディチ家の金塊
宝: | ピザソース・ピザ用チーズ |
解説: | 椎茸で作るピザ! 名前はやや大げさかも。 |
- 以下、やったことは無いが、材料が手に入ったら即やってみたいと思っている例。
- 羽ばたくマハラジャ
宝: | ニンニクと玉葱のみじん切り・鶏挽肉・塩・カレー粉・サラダオイル。 |
解説: | 踊るマハラジャが感極まって羽ばたく一品。 |
- 女王様と私
宝: | 冷やご飯・桜海老・ナンプラー(タイ国の魚醤)・ココナッツオイル・激辛唐辛子の酢漬(これだけ焼いた後に乗せる) |
解説: | 激辛唐辛子の刺激が女王様の鞭のよう。マニアにはお勧めの一品。 |
- 以下、やったことは無いが、いつの日かお金が貯まったら是非やってみたいと思っている例。
- ラストエンペラーの秘宝
宝: | ニンニクと葱のみじん切り・豚挽肉・胡椒・醤油・胡麻油 |
解説: | 中国四千年の歴史がここに凝縮されている。 |
- モンテクリスト伯爵のルビー
宝: | 玉葱のみじん切り・牛挽肉・塩胡椒・バター |
解説: | シンプルだが深みのある味わい。 |
- 春のソナタ
宝: | 冷やご飯・牛タン薄切り・キムチの汁・胡麻油 |
解説: | 春椎茸を韓流で味わう。 |
- サマルカンドの宝剣
宝: | ニンニクと玉葱のみじん切り・羊肉細切り・塩胡椒・バター |
解説: | 中央アジアの風味。 |
食べ方
- なんと言ってもこれが最高の贅沢、豪快丸齧り!
- 例えば人が四人いて椎茸が四つあり、四種類の「宝」にする場合、焼けた物をそれぞれ四等分すればよい。
- 和風系のものは薄く切ってご飯に掛けるとまた格別。
- 洋風系のものはパンに挟むとこれまた格別。
だいどころ 客間