発酵梅酢の作り方
2009.07.24
更新 2023.11.30
発酵梅酢とは?
「梅酢」と言えば、普通は梅干の副産物の汁のことだ。また、梅の果実に氷砂糖や酢を加えたものも「梅酢」と呼ばれているようだ。
ところが、ここでご紹介する作り方は、梅の果実の皮に付いている菌によって果実を発酵させているので、その製法も味も世間一般の梅酢とは異なっている。そこで、それらと区別するために「発酵梅酢」とした。
また発酵させるにしても、その菌が主体であるか、それを仕込む人間が主体であるかによって作り方が違ってくる。具体的に書くと、自然の気温によって自然の菌が自然に作り出すものを人間が少しお手伝いをして有難く頂戴するのか、人間の都合で発酵を早めるためにミキサーのような電動調理機を使ったり、不自然な温度管理をしたり自然界にはない砂糖やイースト菌などの食品添加物を入れるのか。要するに、自然食品にするのか、工業製品にするのかということだ。ここでご紹介するのは、自然食品である前者の方だ。
法律上の問題
- 酒税法
一般に「梅酢」と言われている梅干しの汁や、梅を焼酎などに付け込んだ「梅酒」にアルコールは発生しないので、この法律は関係ない。ところが、発酵梅酢の醸造の過程ではアルコールが発生する。酒税法で定義されている「酒類」の中に「酢」という文字は見当たらないが、「酢の製造の過程で発生するアルコールは除く」と明記されているわけでもない。そのため、この法律のことを一応知っていた方が良いだろう。
第1章
第3条
(前略)
24. 酒母 酵母で含糖質物を発酵させることができるもの及び酵母を培養したもので含糖質物を発酵させることができるもの並びにこれらにこうじを混和したもの(製薬用、製パン用、しようゆ製造用その他酒税の保全上支障がないものとして財務省令で定める用途に供せられるものを除く。)をいう。
25. もろみ 酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じたもの(酒類の製造の用に供することができるものに限る。)で、こし又は蒸留する前のもの(こさない又は蒸留しない酒類に係るものについては、主発酵が終わる前のもの)をいう。
(後略)
とある。これらの()内の但し書きが重要なポイントになってくる。
製パンなどの際にもアルコールが発生するが、「酒税の保全上支障がないものとして財務省令で定める用途に供せられるもの」として除外されている。また、その原料は「酒類の製造の用に供することができるものに限る」ということだが、米や麦ならともかく、梅がそれに該当するとは思えない。
また、全文を探しても「酢」という文字が出てくるのは、たった2箇所だけしかない。
第8章
(前略)
第44条 酒類製造者が第7条第1項ただし書の規定により製造免許を受けないで製造した酒類を当該製造場から移出しようとするときは、政令で定める手続により、その製造場の所在地の所轄税務署長の承認を受けなければならない。ただし、酒類製造者が自己の他の酒類製造場において製造免許を受けている酒類の原料(移出する製造場において製造免許を受けている酒類と同一の品目の酒類の原料とする場合に限る。)とするための酒類で、かつ、第28条第1項の規定の適用を受けて移出する場合については、この限りでない。
2 酒母又はもろみの製造者は、酒母又はもろみを処分し、又はその製造場から移出しようとするときは、政令で定める手続により、その製造場の所在地の所轄税務署長の承認を受けなければならない。ただし、次に掲げる場合については、この限りでない。
1.第8条各号に規定する者が酒母又はもろみを当該各号に規定する目的に使用する場合
2.酢の製造業者が酒母又はもろみを酢の製造に使用する場合
(後略)
この一行の2箇所だけなのである。
ネットで調べてみると、酢の製造業者は「酒母又はもろみの製造免許」というものを取得している。これは、原料に酒類の製造の用に供することができるものを用いた、販売することが目的の製造業者のための免許なのだと思うので、梅を用いた自家消費のための醸造酢の製造に関しての法的な規制は、明確に定まっていないということになる。だとすれば、個人家庭で発酵梅酢が作れるような政令を、「製パン」と同様に是非ともはっきりと定めて頂きたいものである。
私は現行の法律に違反したり、そのようなことを他人に勧めるは気は毛頭ないので、これから述べることは販売目的ではなく、あくまでも自家消費のためのものであるということを明記しておきたい。
- 食品衛生法
食品を製造・販売販売するなら、その営業所所在地を所轄する保健所衛生課に、食品の製造・販売・処理業の許可を申請しなければならないことになっている。自家消費だけのために製造するなら、その必要はない。
なぜ梅なのか
- 発酵に必要な天然の菌が付いている
これが酢の発酵には欠かせない。どんな野菜や果物でも、表面に多少なりとも付いているものだと思うが、無農薬の梅の場合はそれが確実なのだ。
- 糖度が適度な範囲にある
酢の発酵には糖分が必要だが、その濃度のことを糖度と言う。糖度が低過ぎれば酵母菌が繁殖しないし、逆に高過ぎればアルコール濃度が高くなって、酢酸菌が繁殖できなくなる。青い梅だと糖度が低過ぎてうまく発酵しないと思うが、黄色か橙色に熟した梅だと、酢の発酵に必要な糖度があるようだ。
- 経済性
農家の場合だと、市場には出荷しない、いわゆる「傷物」「B級品」「2級品」「規格外」といった農作物で酢を作れば、その分費用が安くなるわけで、これは一般家庭でも同じことだ。せっかく高いお金を出して買った米や果物を酢にしてしまうよりも、なるべくなら無料もしくは安価で手に入れたもので作った方が良いだろう。
我が家にはたまたま上の画像のような巨大な梅の木があり、これが毎年大量の果実を実らせる。梅干は好きなので作るが、それが全部無くなるのには数年掛かるので毎年は作らない。そのため、収穫しない年の梅の木の下は、熟れて落下した果実のために足の踏み場が無いほどになるので、下に落ちる前にそれを利用することにしたのである。
- 安全性
自分の家の梅の木なので、農薬を散布していないことが確実にわかっている。
材料
世間では、砂糖や酢を加えて作るのが一般的なようだ。確かに青い梅なら糖度が低く自力では発酵しないので、そのように味付けする必要があるのだろう。しかし、黄色もしくは赤く熟れた梅の糖度は意外に高く、糖類無添加でも、やり方を間違えなければ必ず発酵する。
というわけで、ここでご紹介する製法での材料は混ぜ物一切無し、梅100%ということになる。
発酵の仕組み
ここでご紹介する方法は、ワインビネガーの製法と基本的に同じだ。
果実の皮の表面に付いていたり空気中に浮遊している酵母菌によって、果実の糖分がまずアルコールに変化して梅ワインになる。次にそれが、やはり天然の酢酸菌によって酢になるという、二段構えの発酵だ。
ちなみに、日本の一般市場のワインの多くには、酸化防止剤が添加されている。それでは酢酸菌が繁殖できないので、そのようなワインからビネガーを醸造することはできない。
酢に適した品種
特にないと思う。
ただ、前述したような発酵の仕組みから、なるべく完熟した糖度の高い果実を用いることが必須条件だ。
このくらい熟していれば、ちゃんと発酵する
酢の味と香り
元々梅の果実は酸味が強い。しかも、そこに含まれている糖分が酢になってしまうので、甘味が少なく鮮烈な酸味になる。そのため、一般に市販されている米酢や穀物酢よりも、むしろワインビネガーの方に近い。もう少し具体的に言うと、梅酒から糖分とアルコールを抜いて、果てしなく酸っぱくしたような感じだ。
また、同じ自家製の酢でも柿酢は酸味が比較的マイルドで甘味もあり、タンニンという渋味成分のせいか舌の奥にやや引っ掛かりがある複雑な味わいだ。それに対してこの発酵梅酢の場合は、梅の果汁本来の酸味と醸造された酸が足並みを揃えたストレートな酸っぱさだ。
一本気な酸味と爽やかな梅の芳香。これはもう、他の酢では代用することのできない新感覚の調味料だ。未体験の方は、是非とも作ってお試しあれ!
用途
ドレッシング、マリネなどの洋風料理から、天麩羅に付ける酢醤油までと幅広く利用できる。また、梅の香りを生かした新しい和食・中華料理などの創作意欲も掻き立ててくれる。
梅酒のようにアルコールが入っていないので、お茶や氷水で割れば、暑さを吹き飛ばす爽快な「ウメドリンク」になる。
また、焼酎をこれと水で割れば、梅酒とはまた違った味わいの爽やかな和風カクテルになる。
興味のある方は、是非ともお試しあれ。
作るための容器や道具
材質が合成樹脂だと、そこからアルコールや酸に溶ける物質が溶け出す恐れがあるし、金属だと錆びて、それが品質に悪影響を及ぼす。そのため、釉薬(うわぐすり)が塗られた焼き物やガラス、木や竹や木綿が適している。
- 発酵させるための容器
果実酒用の口が広いガラス瓶で良いが、大量に仕込むのなら焼き物の瓶(かめ)が最も適している。いずれも、ホームセンターなどで手に入るはずだ。
- 潰したり掻き混ぜたりする道具
このような木か竹のへら一本があれば済むことだが、もし無くても、すりこ木と、オタマで代用出来る。
- 濾すための道具
笊と、すくうためのオタマと、それを受けるための鍋は、一時的に使用するだけなので、金属性でもステンレスのものなら構わない。銅や鉄はすぐに錆びが出て、味にその影響が出るので使用不可。
布は木綿の豆絞りかガーゼが良い。わりと強い酸性なので、派手に着色された布や化学繊維のものは使用不可。
- 保存容器と道具
光をある程度遮断して口が狭く、取り扱いが楽なので、保存容器は茶色の一升瓶が最も適している。
そこに詰めるには漏斗(ろうと)を使ってもよいが、我が家では酒を注ぐための急須に一旦鍋の酢を移して、その細い口から一升瓶の中に注いでいる。
最後に濾す段階で不純物が少なく仕上がっていれば食卓用のガラス容器も使えるが、不純物が多いものだと、その細い口が詰まったりする。
作り方
- 梅を入手する
- 完熟している無農薬のもの
青い梅だと発酵に必要な糖度に達していないので、木に付いたままで黄色か赤に熟したものを手に入れる。地面に落ちているものには虫が侵入していることが多いので使用不可。また、この方法では皮ごと使うので、必ず無農薬のものにする。
一般のスーパーなどで市販されている梅だと、農薬使用で完熟していない「青梅」が多いと思う。しかし、ネット上ではそうではない。試しに「完熟 無農薬 梅 販売」で検索してみると、理想的な梅を販売しているサイトが意外と多くあることがわかる。そのような梅を購入しても良いだろう。
- 量は?
一個の梅でも小瓶の中で発酵させることができるが、そこから取れる酢の量はごく微量になる。2kg 以上はあった方が良い。果実に含まれている水分の量にもよるが、大体の目安としては、梅3kg で約1.8リットルの発酵梅酢が取れる。
- 傷の有無は?
皮の表面に斑点があっても全く問題無いが、皮が破れている場合は、そこからカビが発生することがあるので、なるべくなら避ける。
- 皮の汚れは?
前述したように、梅の皮の表面に付いている酵母菌を利用して発酵させるので、無農薬のものなら洗う必要はないし、皮を剥いてはいけない。
鳥の糞や自動車が巻き上げる粉塵などの付着が気になるようなら、水で軽く洗ってもよいが、乾燥させて表面の水分を必ず完全に除去すること。酵母菌が落ちてしまうので、なるべく布では拭かない方が良い。
- 発酵させるための容器に詰める
後で潰したときに量が減るので、容器一杯に詰めても構わない。
詰め終えたら、虫や埃の侵入を防ぐために大きめの紙か布で容器の口を覆い、その周囲を紐でしっかりと括っておく。酵母菌の呼吸が阻害されると腐ってしまうので、ビニールなどの通気性の無い物で密閉してはいけない。
ちなみに、今回ご紹介している画像は、2009年7月14日に2.7kgを収穫して、その翌日容器に詰めた。
- 保管する
ショウジョウバエの進入を防ぐために、必ず屋内で保管する。
特に温度管理をする必要は無い。この時期の我が家の気温は摂氏20度~28度、平均約24度。
- 潰して掻き混ぜる
梅が自然に潰れるのを待っていると、この時期の気温では確実に腐るので、発酵容器に詰めてから5日後に、熟れて柔らかくなっている梅を木べらなどの先端で割るようにして潰して全体を掻き混ぜる。まだ実が硬いと思わず力が入り、容器を破損する恐れがあるので、そのような梅は自然に柔らかくなるのを待つ。
このように蓋を開けているとき、ショウジョウバエが進入しないよう、細心の注意を払うこと。
それからは、一日一度木べらなどで底の方からしっかりと掻き混ぜながら潰していく。これによって発酵が均一になり、酵母菌が梅全体を占領してしまうので、カビや腐敗を防ぐことができるのだ。もし表面にカビが生えてしまったら、その部分だけ取り除いて良く掻き混ぜればよい。
この下の二つの画像は、収穫してから9日後のもの。
左は蓋を開けた直後の状態で、梅の良い香りがしている。表面の白い幕はカビではなく、酵母菌のコロニーと思われる。これがカビの発生や腐敗菌の進入を防ぐのだ。これを掻き混ぜると泡が盛んに出て、右の画像のようになる。既にサラサラの液状になっている。このような状態になったら、もう毎日掻き混ぜる必要は無い。
量が少ない場合は、このようにガラス瓶の使用も可能だが、その際直射日光に当たらないように注意する。
- チェックポイント
発酵梅酢作りには、主に三つの関門がある。
我が家では毎年秋になると柿酢を作っており、それにはもう10年以上の実績がある。その知識と経験を生かしてみることにしたのだが、初回の2008年は大失敗だった。
柿酢の時期とは違って、梅の実が熟れる時期は梅雨の真っ只中。高温多湿のためにまず腐敗し、そこにショウジョウバエが入り込んで繁殖してしまうというオマケまで付いて惨憺たる結果に終わったのだ。何が「10年以上の知識と経験」だ~~っ!!!(笑)
「失敗は成功の元」と自分に言い聞かせ、前回の教訓を生かして改良したのが2009年。……………なんと、思ったよりもあっさりとそれが成功した。要するに、柿酢に比べて時期的には作りにくいが、以下の三つのポイントをしっかりと押さえておけば失敗しないということだ。
- ショウジョウバエ
様子を見るために蓋を開けてみて、まずショウジョウバエが飛び立たないかと、その幼虫である小さな細長いウジ虫が表面で動いていないかを確かめる。
このウジ虫が発生してしまった場合、殺虫剤は人体にも影響するので使えない。
虫が少量しかいない場合には、梅を鍋に移して加熱し、摂氏65度を30分間ぐらい持続させると殺すことは出来る。しかし、当然のことながら酵母菌も一緒に死んでしまうので、40度くらいに冷めてから新たに菌を加えなければならない。また、たとえ少量ではあっても虫の死骸という動物性蛋白質が加わることになるので、品質の低下も免れない。
その一方、虫が大量に湧いてしまった場合だと、ウジが酵母菌をたくさん食べてしまうし、その排泄物によって腐敗菌が繁殖する。そのため残念ながら、捨てるか畑の肥やしにするしかないだろう。
とにかく、その成虫であるハエを入らせないことに、細心の注意を払うことだ。これがいなければ第一関門突破。
- 腐敗菌
次に臭いを嗅いでみる。梅の香りがしていれば、失敗していないと見ていいだろう。それなら第二関門突破。
- カビ
発酵が進むと表面に白っぽい幕のようなものが張るが、それは酵母菌または酢酸菌のコロニーでありカビではない。
それとは逆に、初期の段階で掻き混ぜていないと、梅の表面に白い綿のようなカビが生えることがある。そんなときは、その部分だけ除去して良く掻き混ぜ、一日一度掻き混ぜながら数日間様子を見る。その後数日間放置してから見てみて、もうカビが生えなければ第三関門突破。
- 味見をする
容器に詰めてから10日ほどしたら、第一回目の味見をする。
空気に触れている表面から先に酢になっていくので、下の方はまだそうではないことが多々ある。そのため、まず掻き混ぜてから臭いを嗅いでみる。カビもしくは生ゴミの臭いではなく、梅の香りがしていれば失敗していないはずなので、今度は汁をお玉ですくって味見をしてみる。それが鮮烈に酸っぱければ確実に成功している。アルコールがまだ残っていれば、気分がフワーッとなってくるかもしれない。それが好きな人は、もう少しぐらいこの味見をしても許されるだろう。
この「フワー」の段階で発酵を止めてしまおうと思えば、これを濾してその汁を一升瓶などに詰め、65度30分間程度の湯煎をすればよいが、それを無許可ですると法律に引っ掛かる。酒税法第7条、第54条によれば、酒類の製造免許を受けないで酒類を製造した場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられるほか、製造した酒類、原料、器具等は没収されることになるので気を付けよう。
容器に詰めてから早ければ2週間くらいで、アルコールが完全に酢になるはずだ。酢の臭いとアルコールの臭いの違いが分かりにくければ、台所から実物の酢と酒を持って来て、まずそれらの臭いを嗅ぎ、次に梅を仕込んだものの臭いを嗅いでみればわかると思う。アルコール臭がしていれば、それはまだ完成していない証拠だ。
仕込んでから20日後の状態。梅の香りはしているが、もうアルコール臭はしていない。
- 濾す
酢になっていることが確認されたら、濾(こ)して精製する。チェックポイントのところでも述べたように、この上の画像のような液の表面の白い幕はカビではないので、一緒に濾しても構わない。
我が家では、この上の画像のように、ステンレス製の鍋の上にステンレス製の笊を置き、その中に発酵した梅を入れて、汁が自然に下に落ちるのを待つだけだが、一旦このように濾してから、その絞りかすを取り除き、今度は笊の上に布を敷いてもう一度濾すと、不純物がより少ないものに仕上がる。最初から布ですると、布の目に梅の繊維が詰まってうまく濾せなくなる。
昔ながらの造り酒屋や醤油蔵を見学された方ならお分かりになると思うが、いずれも自然の力によってゆっくり濾している。
ここで油断できないのがショウジョウバエだ。笊の上から鍋の蓋をして、笊と鍋の隙間に布を巻いてその進入を防ぐ。
この上左の画像のようにある程度濾せたら、その右の画像のように皿などを置いて、その上から重石をすると早く濾せる。
濾した梅酢。梅といえば一般的に青いものを連想されると思うが、熟するとこのような色になるのだ。
今回は、2.7kg の梅から 1.7 リットルの発酵梅酢が取れた。
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濾した直後 |
約1年後 |
濾した直後では、浮遊している色素や食物繊維により左のように濁っている。ポリフェノールたっぷりということで、健康にも悪くなさそうだし、この色による味への影響は特にない。
それが約一年経つと、不純物は容器の底に沈殿して透明度が増す一方、熟成して液の色が濃くなる。
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保存容器に詰める
完全に酢になってしまえば自動的に発酵が停止するし、その酸によって雑菌は繁殖することが出来ない。そのため、この段階になれば、わざわざ湯煎などによって強制的に発酵を止めたり殺菌したりする必要はない。要するに、この酢自体が殺菌剤になっているのだ。
容器は茶色の一升瓶が最も良い。日本酒や焼酎などのアルコール類か酢が入っていて、空いて間も無いものであれば、中は洗わずにそのまま使っても構わない。もし内部を洗った場合には、必ずその水分を完全に除去すること。そこに、漏斗(ろうと)などを用いて詰める。
ここからは、発酵の段階とは逆で、容器を密閉しなければならない。そうしないと酢の気が抜け、やがて水になってしまうからだ。
但し、発酵にむらがあり、酵母菌の発酵が終わっていないと、そこから発生するガスのために栓が飛ぶことがある。そのような場合は、栓を斜めにしておいて隙間を作っておき、この容器の中で酵母菌の発酵を終了させてしまえば、その後栓で密閉してもそれが飛ばなくなる。その際、ショウジョウバエが中に進入して産卵すると、ウジ虫が発生するので注意すること。
保存
一般に市販されている酢同様、冷暗所にて保存する。我が家では、台所の流し台の下の戸棚に入れている。
酢酸菌がまだ生きていると、その表面に白い幕を張ることがある。その臭いを嗅いでみて、カビや腐敗の臭いがしていなければ、それは保存料無添加の味噌や本醸造醤油の表面に張られる幕と同じく、菌の「コロニー」と言われるものなので無害だし、放っておいても大丈夫だ。
お疲れ様でした! 長いあいだ大事に育ててこられた、あなたの発酵梅酢を味わってください!
ご注意
- 酒類の製造免許を受けないで酒類を製造することは、たとえ販売しなくても酒税法で禁じられています。ここでご紹介しているのは、あくまでも酢の作り方です。
- 作った酢を販売する場合は、食品の製造、販売、処理業ということになるので、保健所への営業許可申請が必要になります。また、「酒母又はもろみを製造する者」に該当する可能性もあるので、それなら所在地を管轄する税務署から、その免許を受ける必要があります。
- 発酵の段階ではアルコールが含まれていることもあるので、お酒を飲めない方や飲んではけない方は、絶対にその「味見」をしてはいけません。
- 「味見」し過ぎると、お腹の中でも発酵するので、オナラがたくさん出ることがあります。
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だいどころ 客間