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七輪(七厘・木炭コンロ)の使い方
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2004.06.28
更新 2019.01.17
形と材質はいろいろあるようだが、我が家のものはいずれも珪藻土(けいそうど)製。左側のものは木炭用、右側のものは焚き木用にしている。
七輪でできる調理
- 鍋や鉄板などでの調理
家庭用のガスコンロとほぼ同じように使うことができるが、火力を最大にすればガスコンロよりも強火になるし、最小にすればガスコンロにはできない弱火にすることができる。燃料を少しにしておいて煮物の鍋を掛けておけば、煮詰まるのと並行して火力が弱くなり、最後は自然に火が消えてしまうので、うっかり焦がしてしまうことがない。これは、マイコン内蔵の電子調理器具と同じような優れた機能だ。
- 遠赤外線で焼く
肉や魚や野菜や餅などを焼けば、遠赤外線(えんせきがいせん)によって、表面の焦げが少ないのに中まで火が通る。この効果を出すため、電子レンジにわざわざ電熱器を付けている製品もあるので、七輪は時代の最先端を行っている?
焼くための道具は、こちらを参照。
- 直火による調理
チャパティを焼くときは、仕上げに直火に当てると、それまで平らだったものがサッと風船のように丸くふくらみ、中が蒸気で蒸されて最高の焼け具合になる。このわざは、ガスコンロはもちろん電子レンジやオーブントースターでもできない。
構造
木炭・豆炭用の七輪は、おおよそ上の画像のような構造になっている。
- 七輪本体
珪藻土というものを円筒形に焼いて作られていて、中は空洞になっている。断熱効果がある。
- 風口(かざぐち)
空気の入り口で、そこには窓が付いており、その開閉によって火力を調整する。その材質は、七輪本体と同じものと、金属製のものとがある。前者は衝撃で破損したり、長年の使用で溝が摩滅して外れることがある。後者は最初頑丈だが、何度も使用しているうちに熱で金属が腐食してボロボロになり、最後は使用不能になる。私の経験だと、丁寧に扱えば前者の方が長持ちした。
- 火皿(ひざら)・サナ
この隙間から灰だけ下に落ちるので、空気の通り道のためには欠かせないもの。
この直径はいくつかあるので、本体内部の底の方にある、これ用のでっぱりに乗せられるものを選ぶ。
素焼きのものと鋳物のものがある。素焼きのものは安いが壊れやすい。鋳物のものはサナとも言い、衝撃には強いが、肉や魚に塩やタレをしたとき、そこから落ちる汁の塩分と熱によってすぐに錆びて壊れてしまう。そのため、両方を用意しておいて、焼き物には素焼きのものを、煮物には鋳物のものをというように使い分けると良いだろう。
必要な道具
火を起こしたり燃料を扱ったりするための道具類
燃料の種類
木炭(もくたん)
一般に「炭(すみ)」と呼ばれているのは左の画像のもので、これは黒炭(くろずみ)と言う。
右の画像は備長炭、白炭(しろずみ)。これを硬い物で叩くと、「キンキン」という美しい金属音がする。火力・火持ち共に黒炭よりも優れているが、その分高価だ。
石炭(せきたん)
もとは古生代に繁栄した植物。木炭よりも火力と火持ち共に優れているが、一般では手に入りにくいし、燃やすと臭いにおいがする。
木炭などの粉を結着剤を混ぜて練り、乾燥させたもの。約4センチ四方の四角い凸レンズ型をしている。必要に応じて個数を調整し、火力を調節できるので便利。
火力・火持ち共に通常の木炭よりも優れている。木炭用の七輪でも使えるが、着火してからしばらくは強い臭いがするので、焼き物料理よりも煮物や鍋物に向いている。
我が家では調理ではなく、炬燵(コタツ)で用いられている。
熾(お)き
木や竹を燃やして、灰になる前に消したもの。火力・火持ち共に木炭より劣るが火がつきやすいので、燃料としてはもちろん、木炭などの着火材になる。
我が家では、風呂や薪ストーブで燃やした木が赤々として煙が出なくなったら、火消し壷に入れて完全に消火し、その後一斗缶などの容器に移してたくわえている。ただし、この中に少しでも火の粉が入ると、あっという間に全体に火が回るのでとても危ない。そのため、これをたくわえておくなら、必ずその容器の蓋をきっちりと閉めておくこと。
小枝や木片
すでに炭などに火が起きていて、急に強い火力が必要な場合そこに少しだけ加え、風口からうちわであおぐと炎が出る。ただし入れ過ぎると、不完全燃焼を起こして煙ばかり出ることになる。
燃料の分量
木炭や豆炭1個だけでは火力が足らず、満足に調理することが出来ないので、一度に2個以上の燃料が必要になる。以下は、その目安。
- サンマを2~3匹焼くなら、木炭では大人の両手に山盛り一杯ほどあれば充分。
- パーティーなど、大人数分の食材を長時間焼くためには、大人の両手2杯分の木炭から始め、必要に応じて足していくようにする。
着火(火のつけかた)
ご注意:火を扱う際には、万が一の場合に備えて、消火のための水または消火器を手元に置いておきましょう。
炭を燃やすと一酸化炭素が発生し、その中毒は生命にかかわります。充分な換気がなされている場所で使いましょう。
木炭や豆炭などの燃料に、マッチ一本で直接火を着けても着火しない。それにはまず何かの着火材に点火し、その火力によって燃料に火が移ることになる。
ここでは、その代表的な方法をご紹介する。その際、着火材や燃料がちゃんと乾燥していなければならない。
七輪の中での着火
我が家では、まず第一着火材に点火し、その火が第二着火材に移って、それが燃料に移るようにしている。そのため、それらを右上の図のようにあらかじめ仕込んでおく。ちなみに我が家で使うのは、それ専用に化学合成された「着火剤」ではなく、天然の枯葉か紙などだ。
- 第一着火材を入れる
これを火皿の下に入れる。あまり詰め過ぎず、フワッと入れておくのがコツだ。
これに最も良いのが枯れた杉の葉だ。右下の画像のように、茶色になってよく乾燥し、なおかつ油を含んでいてツヤツヤしているものが良い。大きな杉の木の下によく落ちているので、我が家ではそれを晴れた日に集めておき、段ボール箱などに蓄えている。
これが手に入らなければ紙を使うこともできる。それには無着色無印刷のボール紙が一番良い。着色料やインクなどは煙を臭くするし、灰を食品の加工や畑の肥料などに使うときにも悪影響が出るからだ。新聞紙は、火が付いたまま風にあおられて舞うことがあり、危ないのであまりお勧め出来ない。
- 第二着火材を入れる
これに最も適しているのが熾きまたは消し炭(けしずみ)だ。それが手に入らない場合は、細い木や竹の小枝でもよい。
それを火皿の上に厚さ3cm くらいに敷く。
細長いものなら、なるべく火皿の目と直角になるように置き、その上に重ねるのも井桁(いげた)状に置く。そうしないと空気の通りが悪くなって思うように着火しない。
- 燃料を入れる
第二着火材の上に、木炭などの燃料を置く。
- 第一着火材に点火する
火力調節窓を全開にして、風口から第一着火材にマッチで点火する。
- うちわで扇ぐ
第一着火材に火が移って勢い良く燃え出したら、すかさず風口からうちわで風を送る。うちわの角度は、魚を焼くときとは違って水平に持つこと。その方が効率良く空気を送り込むことが出来る。
このとき、あまり強く扇ぐと火が消えてしまうし、弱過ぎても火が第二着火材に移らない。もし第二着火材に火が移る前に第一着火材が燃え尽きてしまったら、それを入れ直して4からやり直す。
火が燃料に移れば、あとは自然に広がるので、急いでいなければ、あおぐのを止めても構わない。ちなみに私の場合、仕込みから燃料への着火の時間は2分弱だ。
煮物や湯沸しなどなら、この時点で鍋を掛けることが出来る。但し、七輪の上を完全にふさいでしまうような鍋を掛けると、空気が通らなくなって火が消えてしまうことがある。
- 火が広がるのを待つ
炒め物や焼き物は、燃料に火が充分広がり、七輪の中が高温になってから調理を始める方が良い。それまで火力調整窓はずっと全開にしておく。
七輪の外での着火
- 囲炉裏の中で
囲炉裏(いろり)の中で着火するなら、まとまった量の木炭の上に、やはりまとまった量の枯れて乾燥した杉の葉を置き、それに火を付けて上からうちわで激しくあおげば着火する。
- ガスコンロで
着火材が手に入らなかったり、煙や灰をなるべく出したくないようなときには、家庭用の据え置きガスコンロで着火することも出来る。カセットコンロだと、ボンベが過熱されて爆発することがあるそうなので、使ってはいけない。
これには、左の図のような火熾し器が必要だ。この中に木炭や豆炭などの燃料を入れてガスコンロの火に掛ければ、1~2分ほどで着火する。
左の図では、わかりやすいように炎を見せているが、実物の火熾し器は、鍋のようにしてガスコンロの上に置いておけるものだ。
ただし、この方法では燃料の粉や灰がガスコンロの中に入って故障の原因になることがあるので、あまりお勧めできない。
- 焚き火(たきび)で
キャンプなどでは、焚き火の中に燃料を放り込んでおくと、2~3分で着火する。
- 着火した燃料は
豆炭が真正面から着火すると、この下の左の図のようになる。着火の状態によっては、この赤い部分が上下左右のどちらかに寄っていることもあるが、片面の4分の3以上がこのように赤くなっていれば大丈夫だ。
これを火ばさみで七輪の火皿の上に移し、右の図のようにして、その赤い部分同士がなるべくくっつくように置く。こうすると燃料同士が熱を高め合うので、火が回りやすくなる。燃料に確実に火が回るまでは、七輪の火力調整窓は全開にしておくこと。
確実に着火した燃料の上に、まだ着火していない燃料を足して火力調整窓を開けておけば、やがてその燃料にも火が回る。
これは、木炭でも同じことだ。
火を消す
七輪を使い終えたら、その中の燃料全てを右の画像のような火消し壷(炭壺)に移して壺の蓋を閉じれば、しばらくしてから火が消える。これは「消し炭」と言い、先に述べた「第二着火材」として利用することが出来る。
水を張った金属製のバケツに七輪から取り出した燃料を入れて消火することも出来るが、水を吸っている燃料を再利用することはできない。
また、珪藻土製の七輪は水に弱いので、火災の恐れがある場合を除いては、七輪に水を掛けてはならない。
燃料を入れたままで火力調整窓を完全に閉じ、上を完全にふさぐような大きな鍋や鉄板などを乗せれば消火出来なくもない。しかし、地震などでそれが転倒すると、火が再び燃えることがあるのでとても危険だ。長時間弱火が必要な煮物をするような場合を除いては、必ず消し壷で消火するようにしよう。
燃料を全部取り出しても、しばらくは火皿の下の灰の中に火の付いている熾きが混じっているし、七輪本体にも余熱が残っている。これを利用して、煮物の水気をとばしたり、洗ったフライパンを乾かすなどといったことが出来る。
ただし、七輪を移動させたり灰を取り出したりするときには、この熾きによる火災に注意すること。また、余熱のためにしばらく本体や火皿が熱くなっているので、火傷(やけど)にも注意すること。
手入れ
道具は手入れが必要だが、七輪は特に難しいことはない。
- 火力調整窓の溝に詰まった物を取り除く
ここに何かが詰まると、窓を完全に閉じられなくなる。爪やマッチの軸などを使って、こまめに取り除くようにしよう。
- 火皿の下に溜まった灰を取り除く
ここに灰が溜まってくると空気が通らなくなり、火起こしが難しくなったり、火力が弱まったりする。この灰を掻き出す専用の道具も売られている。ただし、使ってすぐ後の灰には火の付いた熾きが混じっているので、火災や火傷には注意すること。
これが木炭の灰なら、食器洗いやワラビのあく抜きなどにも使える。また、野菜の根の成長に欠かせない成分が含まれているので、畑の肥料としても使える。
ところが豆炭の灰を畑にまいたら、野菜も雑草も枯れてしまった。これは生き物にとって害のある物が入っている証拠なので、豆炭の灰を食品関係のことに使ってはいけないし、燃えないゴミとして捨てるのが望ましい。
- 汚れを拭き取る
土で出来ている七輪は、水洗いしてはいけない。水を硬く絞った布で汚れを拭き取る程度にする。
火加減(ひかげん)
七輪の火力は、家庭用のガスコンロをカバーしている。強火にすればガスコンロ以上の火力になるし、ガスコンロでは得られないほどの弱火にすることもできる。その火加減は、慣れればガスコンロとあまり変わらない。その変化がガスより緩やかなだけだ。
七輪の中の燃料全体に火が回ったら、試しに火を見ながら火力調節窓を閉じたり開いたりしてみよう。するとその動きによって、ごくわずかだが火が弱くなったり強くなったりすることがわかる。これが見た目よりも、かなり火加減に影響してくる。
例えば、その隙間を1ミリにするのと3ミリにするのとでは、火力にかなりの差が出る。
火を弱める
- 火力調節窓を閉める
窓の隙間が小さいほど火力が弱くなる。
急ぐときは一旦完全に閉じてしまって、その後必要なだけ隙間を開ける。
- 燃料の量を減らす
七輪の中の燃料を取り出すと、それだけ火力は弱まる。これから火に掛けるものが何もなく、煮物の仕上げをするときなどに便利。
火を強める
- 火力調整窓を開ける
火を弱めるときとは逆だ。急ぐときには全開にする。
- 風を送る
もう火力調節窓が全開になっているが、もっと強火にしたいときには、燃料へ着火するときのようにして、うちわで風を送る。
- 燃料を足す
多少時間が掛かってもいいから安定した強火が欲しいとき。
熾きだと火の着きが早いため早く火を強めることができるが、その分すぐ燃え尽きてしまう。それとは反対に木炭や豆炭だと、火の回りは遅いが、一旦着火すれば比較的長い時間強い火力を得ることができる。用途に応じて燃料の種類を使い分けたり混ぜたりしても良いだろう。
- 燃料の質を高める
燃料が熾きだけの場合には、そこに木炭を加えると火力が上がる。普通の木炭だけが燃料の場合には、そこに備長炭か豆炭を加えるとさらに火力が増す。
実際の調理
燃料の着火と消火がちゃんと出来るようになったら、実際に使ってみよう。
液体を加熱する
最初は複雑な料理ではなく、薬缶(やかん)か鍋に水を入れて湯を沸かしたり、味噌汁を作ったりして、燃料の性質と火力、その火加減の仕方などを覚えていこう。
七輪の上全体を覆ってしまうような大きな鍋だと、空気の通りが悪くなって火が消えてしまうことがある。それを防ぐ方法はこちら。
その一方、小さな鍋の木製または合成樹脂の取っ手は、焼けてしまうことがあるので注意すること。その場合、取っ手が金属製か上向きの鍋にするか、取っ手無しの鍋にする。
肉や魚を焼く
食材を焼くなら炭火が一番。遠赤外線で中までよく火が通るからだ。
七輪の上に焼き網を乗せ、その上に食材を置けば焼けるのだが、もう少し手を加ればもっと上手に焼ける。
焼き物の基本は「強火の遠火(つよびのとおび)」。これは、炎を直接当てるのではなく、遠赤外線によって加熱するということだ。耐火煉瓦などを用いて素材を火から遠ざけ、七輪の火を強火にすると「強火の遠火」になる。
それができたら、次はうちわの使用だ。どんな肉や魚にも、多かれ少なかれ油分が含まれており、肉の脂身や旬の秋刀魚(さんま)などのように、それが多い物では熱を加えると流れ出てきて下に落ちる。これによって余分な油が取り除かれ、すっきりした味に仕上がるし、健康にも良いだろう。
ところが、落ちたその油が燃え上がると、食材の中に火が通らないうちに表面だけが焦げてしまうし、煤(すす)が表面に着いて真っ黒になる。これでは、味も見た目も悪くなってしまう。これを防ぐのが、うちわによる風だ。これによって、炎と煙は直接素材には当たらず横にそれるので、上手に焼けるというわけだ。うちわは、燃料への着火のときとは違って地面と垂直に持つ。こうすると七輪の中に余計な風が入らずにあおげる。
右の画像は、その「強火の遠火」と、うちわでの送風をあらわしたものだ。
料理としての魚の焼き方は、鯵の塩焼き。
ご注意:
- 火を扱う際には、万が一の場合に備えて、消火のための水または消火器を手元に置いておきましょう。
- 炭を燃やすと一酸化炭素が発生し、その中毒は生命にかかわります。充分な換気がなされている場所で使いましょう。
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