便所の汲み取り
2009.03.07
更新 2022.03.26
糞は金なり
私は自分の糞尿を肥料にして野菜を育て、他の食材と共にそれを食べるという生活をしている。
今の日本だと、糞尿は汚い物であり単なる廃棄物でしかないので、そういうことに抵抗を感じる人が少なくないと思う。また、業者にその処理を頼めばお金を払わなければならない。
ところが人糞には、野菜の葉や茎の生育に欠かせない窒素と、果実の生育に必要な燐酸が豊富に含まれているし、その他の肥料成分も含まれているので、これを捨てては勿体ない。
江戸時代の江戸では、各家庭から出る人糞を処理業者が購入し、それを近郊の農家に売っていたそうだ。それによって江戸の町は常に清潔に保たれ、近郊の農地は肥えていたというのだから驚きだ。要するに、ウンコが金になったのである。
また、私が十代後半から二十代半ばに生活していた共同体では、各家庭の糞尿を汲んで肥え溜めに溜めておき、醗酵したそれを畑の肥やしにしていた。その作業に従事したことのある私は、そういう物に対して、文字通り糞度胸が付いているようだ。
そんなわけで、「自分たちの畑の肥料にしてしまえば良いではないか!」という単純な発想で、1994年から2022年2月まで我が家の糞尿は一度も廃棄されず、全て畑の肥料となっている。そうすると、処理にお金が掛かるどころか、野菜や果物が手に入ってしまうのだから、なんとも有り難いことだ。
そのための便所は当然のことながら、水洗式ではなく汲み取り式トイレでなければならない。
我が家での処理法方
- 必要な道具
この天秤棒だけは手製だが、いずれもホームセンターで手に入るはずだ。
- たご桶
容量を知るための目盛りが内側に付いている。
- 天秤棒
たご桶の紐を掛けた際、それがすり抜けないように、両端にこのような細工がしてあること。
- 柄杓(ひしゃく)
便槽の深さに応じた柄の長さが必要だ。
- 行き先を作る
まずは汲み取った糞尿の行き先の穴を、あらかじめ掘っておく。畑の肥料にするならこちらを参照。
- 汲む
さて、いよいよ汲み取りだ。
たご桶が汲み取り口に面する向きを定めておき、この上の画像のようにして紐を常に外側に垂らすようにしておくと、それを汚さずに済む。
下の方に濃いものが溜まっているので、なるべく柄杓を下の方に突っ込んで汲むようにする。
二つの桶の中の量は、なるべく均等になるようにする。
- 運ぶ
これが最も技術の要る作業だ。最初は水を入れて練習し、本番の始めは少量にしておいて、慣れてから量を増やしていけば失敗が少なくて済む。
この上の図のようにして、右肩と右手(左利きなら、いずれも左)の2点で支え、二つの桶のバランスを取りながら歩く。桶が揺れると中の物がこぼれるので、歩く際には体を前後左右にではなく、なるべく上下に動かすのがコツだ。
掘った穴の容量に応じて、何回かに分けて運ぶ。
- 穴に流し込む
穴がある場所に着いたら、そっとしゃがんで桶を地面に下ろし、天秤棒を紐から外す。
勢い良く入れると飛び散るので、静かに注ぐのがコツだ。
- 土を掛ける
放置しておくと悪臭のために近所迷惑になるし、誰かがうっかり足を突っ込まないとも限らないので、終わったら速やかに土を被せる。
- 道具を洗う
糞尿が付着した道具を洗う。我が家では水で流すだけだが、醗酵した糞尿なら大概それできれいに落ちる。
- 道具を保管する
我が家では、天秤棒だけ納屋に収納し、その他は普段人目に触れることのない裏の軒下に置いている。
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