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暮らし

害獣

2009.9.22.
2009.9.25. 更新

 「害獣」の定義を、いつもお世話になっているフリー百科事典で調べてみると、「人間活動に害をもたらす哺乳類に属する動物一般をさす言葉」とある。
 我が家でその筆頭に上げられていたのが、今までは台所に出没するネズミだった。しかし近頃では、それにも増して私に害を及ぼしているのが、学名で「Homo sapiens」と言われている哺乳類だ。この学名は、「知恵のある人」という意味なのだそうだが、私はその人に知性を感じない。自分でもあまり頭が良くないと思っている、この私にそう言わせるのだから、それは人ではなく害獣なのである。
 まともな人間なら、知らない人の家の中庭に入ったときは、「ご免ください」とか「誰かいますか?」とかいう、いわゆる「挨拶」をするものだろう。それは、私の知る限り万国共通のことだと思う。
 以前私は、中国やインド、ネパールなどを旅行した際、外国人旅行者が行かないような、いわゆる辺境の地を訪れたことがある。そこには、今の日本の文明とはかけ離れた生活をしている人たちがいた。そのような人たちに対して、「未開の民族」とか「野蛮人」とかいう偏見を持っている人もいるようだが、それは違うと思う。
 彼らはあまりお金や物を持っていないが、他人に対しては常に礼儀正しかった。だから彼らは尊敬すべき立派な人間だ。むしろ、中途半端な文明に浸って、人権を踏みにじったり自然を破壊したりする者の方がずっと野蛮だ。

我が家の中庭

 2009年9月20日(日)午前10時半頃、我が家の中庭に突然人が現われた。恰幅の良い白髪頭の男性だ。ここを公道と勘違いして通り抜けて行く人がたまにいるので、私はその男の動きを黙認しつつ、窓ガラス越しに屋内から観察した。
 しかし、母屋に近付いて来たその男は、窓越しに私と目が合っても何も言わず、そ知らぬ顔で鼻歌などを歌い始めた。今までここを通り抜けて行った人は数多くいるが、こんな人は初めてだ。
 庭を通り抜けて山の方に上がって行くのかと思ったら、間もなく中庭に戻って来た。
 やがて玄関の前を通り過ぎ、台所の前あたりに行ったかと思うと、いきなりそこに生えている竹を鋸で切る音がした。そこには、亀甲竹(キッコウチク)という非常に珍しい竹が生えている。これはただ事ではないと思った私は、玄関を開けて見た。するとその男は、手を止めることなく、
「あー、どうもー! 農協(JA)の者だけど、竹を貰おうと思って。」
 と言った。それには有無を言わさない響きがあった。この地域の農家は、農協に逆らうと食っていけなくなるので、そのような威圧的な習慣が身に付いてしまっているのだろう。その天下の農協の偉いさんともあろう御方が、他人の敷地の中で何をしてるんだ?
 私は、思いっきり迷惑そうな声を出して言った。
「あの……それ、ここの大家さんに断ってしてるんですか?」
「あー、〇〇さんに言ったよ。」
 〇〇さんの許可が下りているのなら、まあ仕方ないか。彼らは大家さんのご両親だが、実質上の大家だ。この家をただ同然の価格で貸して貰っている上に、毎年お米や野菜を頂いている。その彼らと揉めても困るので、私は下手に出ることにした。
「人んちに勝手に入って来て、何をしてるのかと思いましたよ。」
 すると、男いわく。
「XXさんにも言ったんだよね。この鋸、そこから借りてきたんだ。」
 XXさんとは隣の家の住人だ。我が家に侵入して物品を持ち出すのに、なんで隣の家に断る必要があるのだろう。要するに、「大家と隣の家の者の承諾を得れば、借家住まいで他所者の出る幕じゃない」ということが言いたいのだろうか。『こいつ、バカじゃねーか?』と思ったが、そうは言わずに私はこう言った。
「それなら、私にも言ってほしかったのぅ。」
 すると、男は素直に謝った。
「それは、すみませんでした!」
 しかし、その後の言い訳がいけなかった。
「だって、いないと思ったんだもん。」
 その言葉に、私は思わず絶句してしまった。それは、「住人が留守だろうと思った」と、「この家が空き家だろうと思った」という、二通りの意味に解釈することが出来る。
 もし前者だとすると、そこの住人が留守なら、その庭に生えている植物を勝手に持って行っても良いという理屈になる。もし後者だとすると、ここが空き家だなどと〇〇さんやXXさんが言うはずはないので、この男は嘘を言っていることになる。
 しかしいずれにせよ、私が屋内にいることを知った上でこのような言動を取っているので、明かに悪意があるとしか思えなかった。
 以前私は、少し頭の弱い権力者に対し、こちらが思っていることをそのまま言ってしまって、散々な仕返しを喰らった覚えがある。そんな奴をまともに相手にしたこちらも大バカだったのだが、それによって、そのような人間の行動パターンを学習した私は、玄関を閉めて、おとなしく家の中に入った。
 間もなくその男は、根元から切った二本の亀甲竹を手に持って、私が仕事をしている部屋の前を通り掛かり、パソコンの前に座っている私に向かって、窓越しに「どうもー!」と言って立ち去って行った。このように、家の中の私の居場所をちゃんと知っているのに、「いないと思った」などと言って物を盗って行くのだから、どう考えても、まともな人間ではない。

 日本では春になるとウグイスが鳴き、秋になるとモズが鳴く。それらは暇だからやっているのではない。そこが自分の縄張りだと主張しているのである。犬のオスが木や電柱に小便を掛けて回るようなものだ。このようにして鳥や獣にはそれぞれ、その種特有のルールがある。
 人間にだってそれがある。だから、人が居住している空間に無断で侵入し、そこに生えている樹木を居住者に無断で奪っていくような者は、「住居侵入罪」、「窃盗罪」という法律に抵触する以前に、人間としての本能的ルールから逸脱していることになる。
 これが野生動物なら私は何も言わない。なぜなら、私だって彼らの縄張りの中で生活しているわけで、それはお互い様だからだ。それは彼らもよくわかっているので、我が家の敷地内にはタヌキテンが出没し、屋内ではコウモリが飛び交っているが、彼らは私のことを攻撃しないし、私も彼らを排除することはしない。
 但し、台所に侵入して来るネズミに関しては、私の食物となる物を盗んで食べるし、人間にとって有害な病原菌や寄生虫を運んで来るので例外だ。しかし、彼らは生きるためにしていることなので、私はいつも「ごめんね」という気持ちで駆除している。
 ところが、故意に私の人権を侵害しようとする害獣の場合は話しが別だ。それは、とっつかまえて見世物にするのが一番良い。

 この「山の我が家」は、検索サイトからのアクセスが、お陰さまで多いときだと一日に200件以上ある。それは日本全国からだけではなく、もちろん海外からもだ。現在の多い順だと、アメリカ、中国、香港、イギリス、韓国、フランス、マレーシア、オーストラリア、台湾、シンガポール、フィリピン、インド、ドイツ、カナダ、タイ、ベトナム、その他数ヶ国だ。その殆どが、日本語のキーワードで検索しているので、多分現地の日本企業で働いておられる方々なのだろう。
 ネットの検索をご存じない方のために、ここで簡単に説明しておこう。検索エンジンとは、世界中のホームページに書かれている単語を分析して、そのデータを保存している。パソコンや携帯電話の使用者が、検索したい任意の単語を検索サイトで検索すると、それは検索エンジンのデータの中から検索され、それが記載されているページが順に表示されるという仕組みだ。
 例えば、もしこのページが検索エンジンに登録されたとすると、Google や Yahoo! などの検索サイトで「害獣」を検索すれば、このページへのリンクが表示されるということだ。他の単語でもいい。登録されてさえいれば、「農協 恰幅の良い白髪頭の男性」とか「JA 窃盗」で検索してもヒットするはずだ。
 さて、このサイトの中には、我が家周辺の動植物の写真を公開しているコーナーがある。その一環として、今後我が家に害獣が侵入して来るようなことがあれば、その住居侵入と窃盗まがいの行為の証拠写真と動画も公開することにした。但し、自然に生きている動植物とは違い、不自然な行いをしている獣のものなので、それとは別のカテゴリー扱いにする。
 このことをこのレンタルサーバーに抗議しても無駄だ。今の時点では、利用規約に違反するようなことは何もしていないし、画像も動画も別のサーバーにあるからだ。まあ、「私がやりました」と、わざわざ自分から名乗り上げるほど愚かではないと思うが。
 おっと! 人を雇って我が家のパソコンを破壊しても、その画像と動画のファイルはレンタルサーバー側にあるので、それは無駄な行為と言うか、むしろ状況を悪化させるだけだ。我が家のパソコンの中の特別なファイルが、一定の間隔で更新されなければ、証拠の画像と動画ファイルが自動的に下の画像と入れ替わって表示されるプログラムが、レンタルサーバーの方に既に組み込まれている。
 しかも、パソコンか私のどちらかが壊れれば、レンタルサーバーにアクセスするパスワードもわからなくなってしまうので、画像や動画ファイルが消去できなくなり、それらは半永久的に全世界の人の目にさらされたままの状態になってしまう。
 また、肖像権だのプライバシーだので訴えたら、こちらもそちらの詳細な勤務先と実名を画像と共に公表し、人権問題として全世界に向けて訴えるまでのことだ。
 我が家に侵入する害獣の画像や動画は、今後この下に順次掲載されていくことになる。



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