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暮らし

暮らしの実例

(2013年11月に石油ストーブに切り替える前のこと)
2004.02.10
更新 2022.03.08
間取り図

 我が家の冬季限定仕様では、客間、居間、仕事場、食堂、寝室の全てを、「おまえ」という10畳の1室で兼用している。そうすると、暖房はそこに置かれている薪ストーブ一つだけで済んでしまう。また風呂も薪なので、それらから出る副産物の熾きをついでのときにちょこちょこ蓄えておき、調理の燃料として使っている。

台所 薪ストーブ 豆炭

 その調理は、ストーブと台所の七輪の連係プレーとなり、炬燵(こたつ)に入れる市販の豆炭の着火もついでにそこで行っているという、我が家ならではの苦肉の策だ。そのため、ガスコンロはあっても、それは鍋や薬缶の置き場所となっているだけで、燃料のガスや灯油は全く使っていない。
 ちなみに、電気を要する調理器具といえば、ピザグラタン類を作るときにだけ灯がともる、オーブントースター1つだけである。
 それでは、ここで我が家の冬の暮らしの実例をご紹介しよう。

朝食と炬燵の仕込み

ストーブの着火  起床、偶然7時ちょうど。ラジオのスイッチを入れる。ニュースを聞きなら、昨夜の火がまだ残っている薪ストーブに新たな薪を足して火を起こす。
 次に、ストーブから火種を取り出して台所へ持って行き、七輪の中に入れる。そして、火消し壺の中に蓄えてある熾きをそこに加え、その上に豆炭2個を乗せる。
 この七輪の上に小さな鍋を乗せ、その中に、魚のアラで取った出し汁を入れて水を加え、生姜や人参を切って入れておく。これが沸騰するまでのあいだ、私は髪をとかしたり顔を洗ったりすることが出来る。
 それが沸騰してから入れるのは、昨日の朝4日分まとめて炊いておいた、玄米の冷やご飯一食分と白菜だ。これに火が通れば、そこに生卵を入れて火から下ろし、あとは味噌を溶いて一味唐辛子や葱や柚子などの薬味を加え、あっという間に「玄米おじや」の出来上がりだ。朝食は通常これ一品のみだが、飽きたことはまだ一度も無い。そうならないように、毎回季節の産物を加えたりして、あれこれと工夫している。
豆炭 こたつ  調理が終わる頃には、七輪の中の豆炭には火が移っており赤々と燃えている。それを火床(ひどこ)の中に入れて、炬燵の中に収める。その火は、火加減を絞っておけば8時間くらいはもつ。
 おじやが入っているステンレス製の鍋は、昔インドに行った際に購入したものだ。これには取っ手が付いておらず、食器として使用してもあまり違和感が無いので、お客さんがいるようなときは別として、私はいつもこの鍋から直に食べている。そうすると、その分食器洗いの水と手間が省けるからだ。

洗濯

 通常の洗濯は、風呂に入った翌日、時間の掛かる玄米の炊飯と平行して行う。
 昨夜入った風呂の蓋を取ると、残り湯はまだほのかに暖かく湯気が立っている。それをバケツで汲んで洗濯機に移し、昨夜沸かしておいたポットの熱湯で粉石鹸を溶くことから、それは始まる。合成洗剤に含まれているある種の成分は、人体にも自然界の生物にも有害なので、我が家では使用いていない。
 台所の土間にある洗濯機は2層式なので、止まればその都度、その進行を手動で次に移行させに行かねばならないのだが、私は衣類やタオル等を洗い終えて脱水機に移した後は、その水を捨てずにそれで靴下や足拭きを洗うことにしている。こうすれば比較的きれいな物とそうでない物を分けることができるし、2回分の洗濯を1回分の粉石鹸と水で済ますことが出来るからだ。濯ぎも同じことだ。1槽式の全自動では、これを同時進行させることが出来ない。

昼食前

 昼の1時近く、仕事にきりがついて外を見ると、雪がしんしんと降っている。昨夜から既に60cmは積もったか。積もれば積もるほど、除雪車が来てくれる確率が高くなるので、私はもっと降れと願う。
 薪ストーブの上には、定番の湯沸し用の薬缶がチンチンと音を立て、その横では鶏ガラの入った鍋が、食欲を掻き立てる香りを発している。
 ラジオの天気予報では、明日は晴れると言っていた。
『明日除雪車が来たら町へ買出しに出よう……。
ストーブに入れる薪が無くなってきたので、町から戻ったらすぐに薪小屋の薪を切ろう……。』
 そんなことを思いながら、パソコンが乗った炬燵を離れ、昼食を作る火種をストーブから取り出すための鋤簾(じょれん)を取りに、私は台所へと足を運んだ。

夕食

 我が家では、屋内が氷点下になることは珍しくない。台所には、縁の下への通風孔がある土間があるので、特に凄まじい。まな板の上の水が、目の前でじわじわと凍っていく様は、普通ではなかなか目にすることが出来ない貴重な光景だ。
 しかし、私は夕食だけは台所で立ったまま食べることもある。ストーブのある部屋で炬燵に入って食べれば寒くないのだが、夕食を作る直前から飲み始め、作ったものが冷めないうちにその場で飲みながら食べ、飲みながら片付けて夕食を終えるので、そうなってしまうのだ。石油ストーブはあるが、そんな便利な物を台所に置こうものなら、私の性格上しまいにそこで寝起きする羽目になりそうなので、あえて使わないことにしている。
 夕闇が迫る台所に明かりを灯し、ラジオのスイッチを入れて、凍てついた空気を打ち砕く。白い息が髭の先で結露となって滴り落ちる。
 靴下が好きでない私は、靴を履いて外出するときは仕方なく履くが、板の間の台所では素足のままでサンダルを履く。だが耳が凍傷になるのを防ぐために、毛糸の帽子は深々と被る。
 まず氷の張ったまな板で、柚子の輪切りを切る。それを放り込んだ熱い焼酎のお湯割りを音を立ててすすりながら、作り置きの煮豆をつまみ、夕餉を開始する。薄っぺらいガラスの向うは銀世界だ。重病や金が全く無いとき以外、ここ四半世紀というもの、日本国内では毎日休まずアルコールを飲んでいる身体だし、自分の好きなように料理を作れるこのひとときが、私のささやかな楽しみとなっている。
 さて、今宵は何を作ろうか。

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