我が家の2代目コンピューター、Macintosh Classic Ⅱ。原因不明の故障をしたままなのだが捨てるにしのびなく、その姿を目にして思い出すたびに、軽く叩いたり本体を開けたり閉じたりしてから電源を入れてみる。そういうアナログ的な刺激によって故障が治ると期待させるような内部の構造をしているからだ。ディスクドライブやプリント基板以外では、コンデンサーとか抵抗器などの素子が林立していて、まるで昔のテレビの中身のようだ。いや実際に、そのような刺激に反応して画面の模様が変わったことが何度かあったのだ。
そうすると、「気候が変わったから」とか「機嫌を直したから」とか「ほとぼりが冷めたから」とか、そういう情緒的なことによる故障の回復までも期待してしまう私であった。
ところが、今回のその期待はいつもと違っていた。ネット検索による執拗なほどの情報収集を開始したのだ。最初は故障の原因を調べるためだったが、それは次第にあきらめに変わり、それと入れ替わったのが中古販売の情報収集だった。どこが故障しているのかがわからないので、何台かの中古品の良好と思われる部品同士を試しにあれこれと組み合わせてみて、使用可能な1台のパソコンに仕上げようという魂胆が頭をもたげてきたのである。
しかし、中古パソコンを扱っている業者を何件か調べてみても、この機種を扱っていないか、数年前に売り切れになっている情報しかなかった。それ以外では、個人の Web サイトやブログで、「かつての愛機」として紹介されているものだけだ。どうやらこの機種は本来の役割を果たし、各最終ユーザーの手元で、歴史的モニュメントとして保存されているようだ。
それなら、その後出た機種で、出来るだけパーツが使えそうなものを手に入れることにした。
中古パソコンは、今まで頂いたことはあっても、購入したのはこれが初めてだった。
Apple iMac G3 M8344J/A Indigo。2001年早期に発売されたモデルのようだ。
我が家の今までの慣例からすると「5代目」としなければならないのだろうが、平行して使うPCもあるので、より正確な表現の「5台目」とする。
OS 9.1 でリカバリ済みだが、「付属品なし」という肩書きが付いていたので、内部の電池が新品だという保障はなかった。でも、価格が価格だけに、そこまで贅沢は言えない。
本体 9,000円+送料 2,300円 + 銀行振り込み手数料 315円 = 11,615円!
発売当時の新品なら、恐らく10数万円したパソコンがこの価格で手に入るというのだ。バージョンアップによって古いハードやソフトが次々と切り捨てられてくという、パソコン業界の冷酷非情さを思うと何とも複雑な心境になるが……
2010年3月1日(月)の昼前に入金したら、翌日の午後4時頃には届いた。ここは離島の山間地なので、それにしては早い方だ。
ご覧の通りの美品なので、前のユーザーが大事に扱っていたか、あまり使っていなかったかのどちらかだろうと思うが、いずれにせよこちらとしては有難いことである。
早速、動作確認をしてみる。
電源コードは、思った通り CLASSIC Ⅱのものがピッタリ入った。次に、Windows PC で使っていた USB キーボード(BUFFALO BSKBU01SV)と、USB マウス(BUFFALO BOMUS02SV2A)を接続して、恐々と電源を入れてみたら見事に起動した。
おーーー!!! 久々に見た Mac のニコニコお顔マークだ!
キーボードは記号の配列が部分的に違うのと、マウスはホイールと右クリックが効かないなどの問題はあったが、一応ちゃんと認識されている。
一通り調べた結果、CD の取り出しのときに途中で引っ掛かって戻ってしまうという問題があったが、手で引っ張って助けてやると後は自力で排出するので、まあ良しとしよう。なんせ、この価格なんだから。それ以外では、本体のハード上の問題はなかった。
とにかく、まず音が非常に静かなのに驚いた。今まで私が使ったパソコンは、ノートも含めて、比較的うるさい方だったからだ。後で調べてわかったことだが、この iMac はなんとファンレス、ファンが付いていないのだそうだ。その静けさによって、このマシンがますます気に入ってしまった。
あらあら……
というわけで、本来パーツが目的で購入したのであるが、試験的に使っているうちに愛着が湧いてしまった……
しかし、パソコンメーカーとその量販店にしてみれば、私のようなユーザーはさぞ嫌われることだろう。新品を買わずに、なるべく中古を再生させようとしているのだから。でも、それは仕方のないことだ。このメーカーの製品の新品は、現在の私の収入ではとても買える値段ではないんだから。
5台目の主なスペック | |
---|---|
CPU | PowerPC G3 500MHz |
System Memory | 192MB (64MB + 128MB) |
L2 キャッシュ | 512KB |
Video Memory | 8MB |
ATA Hard Disc | 40GB |
光学ドライブ | CD-RW |
CRT Monitor | 15インチ (1024 X 768) |
Network/Modem | 10/100 Mbps Ethernet LAN 56K V.90 Modem |
Port | USB 1.1X2, FireWire400X2 |
Oprating System | Mac OS 9.2.1 日本語 |
OSをこれ以上アップグレードしようと思えば、もう OS X しかない。それにもいくつかのバージョンがあり、現時点での最新のものは OS X 10.6 Snow Leopard で、それだとこのマシンには対応しておらず、OS X 10.4 Tiger までが限界だということもわかった。しかし、それをインストールするためには DVD ドライブが必要なので、我が家の iMac には、OS X 10.3 Panther が最も適しているようだ。
早速ヤフオクで調べてみたら、あるある。何点かの中古品に何度か入札してみたが、いずれも私よりもお金を持っている人に持って行かれてしまった。
それと平行して、OS X 10.3 Panther についてネットで調べていくと、このバージョンは Mac ユーザーたちの間でも「古い」という意見が飛び交っていることがわかった。ブラウザなどのソフトウエアや、各種ハードウエアが対応しなくなってきているのだ。Windows の世界で言えば、Me とか 2000 のような感じだろう。
それなら、別のパソコンの DVD ドライブからインストール出来るか調べてみたところ、それは可能だが、そのパソコンとネットワークで繋がっていなければならない。それだけのために、わざわざネットワーク用のソフトを購入するのはアホらしい。
それならばとヤフオクで調べてみれば、なんと OS X 10.4 Tiger のインストール CD の中古も、希少ではあるが出ていることがわかった。それなら、それを購入するのがベストだろう。しかし高い!!! メーカーからもサードパーティーからも既に切り捨てられている OS X 10.3 の倍ぐらいの価格、7千円~1万円以上で取り引きされている。これでは、下手をするとパソコン本体の価格を上回ってしまう。
そこでこの問題は、ひとまず保留することにした。
他のパソコンとデータのやり取りするために、Ethernet による接続をしてみることにした。
まずは、Windows XP の入ったパソコンとLAN ケーブルで直接繋ぎ、少ない知識でいろいろ設定を変えて試してみたが、お互いを認識せず。
次に、ブロードバンドルータ(IO-DATA NP-BBRsx)に両機をパラレルに接続し、Windows の コマンド プロンプトの「ping」コマンドで、iMac のIPアドレスを入れて実行してみたところ、ちゃんと応答があった。しかし、Windows Network を設定しても、設定ファイルが iMac では実行出来ないし、その逆の AppleTalk に Windows XP は対応していない。
不審に思ってネットで調べてみたところ、OS 9 以下では、特別なソフトを用いなければ、Windows との LAN は組めないとのこと。それなら、Windows ネットワークに対応している OS X を入れてしまった方が、さまざまな意味において都合が良いということがわかった。
しかし、前章で述べたように、たとえ中古でも高い!!! そこで、さらなる情報収集をし、試行錯誤をしてみたところ、我が家のシステム構成で、Mac OS 9.2.2 と Windows Xp のデータのやり取りを、これ以上お金を掛けずに行える方法があることがわかった。
前回の接続で互いを認識しなかったのは、単に私の知識不足だったようだ。
Mac には「Web 共有」という機能があって、それを利用するとコンピューターの中のファイルやフォルダーを、別のコンピューターと共有することが出来る。それには、Apple Talk や TCP/IP というプロトコルが用いられる。前者は Mac 専用の仕組みだが、後者は Windows でも利用出来る。
Windows 側のファイルやフォルダを Mac 側に転送するために、FTP を利用してみることにした。FTP とは、File Transfer Protocol の略で、ファイルを転送するためのプロトコルだ。それには、Windows 側に FTP サーバーをインストールしなければならない。今回は、NekosogiFTPd というフリーソフトを使ってみた。
これによって、Windows 側のファイルを Mac 側に転送することも可能となった。
我が家のパソコンは、無線LANルータ(PLANEX COMMUNICATIONS BLW-54CW3)を経由して ADSL モデムに繋がっている。 このルータは、無線のアクセスポイントとして使っていても、1台のパソコンとは有線で繋ぐことが出来るので重宝する。前章のようにパソコン同士を直に繋ぐのではなく、 iMac もそのようにして接続すれば、インターネットに接続できるようになるはずだ。
Mac を使うのは、これが初めてではないので、事は簡単に終わると思ったら、そうはいかなかった。
無線LANルータと有線で接続してから iMac を起動させ、TCP/IP の設定をすると、すぐに無線LANルータは認識された。ところがそこから先、インターネットには繋がらないのである。そこで、OS 9 に付属している「インターネット接続アシスタント」というアプリケーションを使ってみた。
質問に答えてデータを入力していくと、インターネット接続の設定が出来るはずだが…………あれ、繋がらないぞ。
それなら、今度はヘルプを利用してみよう。
このウインドウの「◆教えて!:TCP/IP を設定する」をクリックすると、「TCP/IP (Ethernet)」ウインドウと、その下に説明用の小さなウインドウが開く。そして、その説明で指示された部分に赤い印が描かれるというユニークな機能だ。
それは良かったのだが、この中の「ルータアドレス」と「ネームサーバアドレス」という欄の意味がわからず、「わからなければ空白のままでいいです」という説明があったので、その指示の通りにしていたのが間違いの元だった。試しに、Windows で言うところの、「デフォルト ゲートウェイ」のアドレスをここへ入れたら、見事にインターネットに繋がったのだから。
私の如き一介のユーザーが今さら言うことではないかもしれないが、このような専門用語は各社で統一して頂きたいものだ。
さて、早速主要なサイトにアクセスしてみよう。
デスクトップの地球のアイコン「WWW ブラウザ」をダブルクリックすると、標準のブラウザとして設定いている IE5.0 が立ち上がった(Safari が Mac の標準ブラウザとなるのは、OS X v10.3以降のこと。)
『うっ! 表示が変だ!』
試しに、自分が普段よく見ているサイトにいくつかアクセスしてみたが、まともに表示されたものは一つも無かった。
これは、このサイトの「客間」のページだが、このサーバーが表示している広告の上部が切れてしまっている。これを Wndows XP の FireFox 3.6 で表示するとこうなる。
自分で HTML ファイルを作ったので良くわかる。これはレイアウトした通りだ。
このマシンには、Netscape 4.7 もインストールされていたので、それに切り替えてみたら更にひどかった。
『駄目だ、これじゃ………』
セキュリティーの点からしても、脆弱性が修正されていないこれらのブラウザでネット上を徘徊するのは極めて危険なことだろう。そのため、もっと見易く、安全に使えるブラウザは無いものかと探してみた。
すると、iCabというのが OS9 に対応していることがわかったので、早速その日本語版をダウンロードしてインストールしてみた。
起動するたびに、最初このようなダイアログボックスが現われるが、ここにも書いてある通り、お金を払えばその後現われなくなるそうだ。
再び自分のホームページを表示させてみた。
『う~~ん、本来中央にあるべきロゴマークが左に寄ってしまってるな。でも、このPCにインストールしてある三つの中では、これが一番まともだ……』
ということで、当面はこのブラウザを使うことに決めた。
Mac のマウスには、ボタンが一つしか付いていないので、右クリックは使えないものと諦めていた。しかし、長いこと Windows を使っていた右手には、右クリックの癖が深く滲み込んでいる。やってしまうたびに『バ~~カ』と自虐的になるのだが、ネットで検索すると、同じようなことで悩んでいる人が世の中には沢山いることを知って、やや安心した。
その結果、Windows 用キーボードの「Ctrl」キー(Mac では「command」キー)を押しながらマウスの左クリックをすると、右クリックと同じことになるということがわかった。
それならマウスのホイールは?
調べてみたが、これは Flash などの一部のソフトでしか可能ではないようだ。まあ、私自身がホイールの操作にはそれほど深く染まっておらず、右クリックほどの失敗回数はないので、これはクリアー。
Windows 用の USB キーボードを使っていて、最初から変だと思っていた。アルファベットは正常だが、記号の入力が一部おかしいのである。例えば「:」が「+」の場所にあったり、「^」を押すと「=」が出てしまったり。これは、Ubuntu でも同様の現象があったことだ。
その原因は、JIS キーボードと、US キーボードの配列の違いによるものなのだそうだ。さらに調べてみたら、それは「Roman-JIS」というキー配列をインストールすれば解決するようなので、試してみたら全くその通りだった。
インストール前 | インストール後 |
この iMac の利点の一つに、システムメモリー専用の窓が設けられているということがある。これを開ければ、一々大きな裏蓋を開けなくてもよいので、メモリーを入れ替える際には便利だ。
3月14日、久しぶりに3代目の蓋を開けてみて、このパソコンのメモリーとを見比べてみたら、どちらも168pinのようだったので、試しに3代目の 256MB のSDRAMメモリーをこのPCの 64MB のメモリと入れ替えてみた。すると、双方の機器でちゃんと認識されたではないか! それなら、巷に出回っている高価な Mac 用メモリーって一体何なんだ? わけわからんが、この問題にはこれ以上深入りしないことにする。
とにかくこれによって、このマシンのシステムメモリーは 192MB から 384MB となり、3代目は 288MB から 96MB となった。
これで、このマシンのソフトとハードのカスタマイは一区切りすることにした。
私の悪い癖の一つに、愛用している機械の中身を見たくなり、ついつい蓋を開けてしまうということがある。これは、好きな女のスカートをまくったり服を脱がせたりしたくなる衝動と相通ずると思っている。それがなぜ「悪い」のかというと、下手をすると機械を壊してしまうようなこともあるからだ。女性だって嫌がっているときに無理やりすれば、その関係が壊れてしまうこともある。
だから私はいつも、大事な機械を失ってしまうことを心のどこかで覚悟しながらこれを行っている。そもそも、今回のパソコン購入のきっかけとなった 2代目こと Classic II の故障の原因だって、それが元になっているのだ。
さて、いよいよ本来の目的であるその Classic II 復活の試みだ。
まず、両者の電源を切って蓋を開けてみる。両者が製造された年には、ちょうど10年の開きがある。そのため、共通している部品はほとんどなかった。ただ、電池が同じだったのと、ハードディスクドライブ(以下、HDD)の ATA の端子と電源プラグの規格が、外見では同じだったことぐらいだ。
それなら、Classic II の HDD を iMac に取り付け、起動するかどうか試してみることにした。
もし故障の原因が HDD にあるとすれば起動しないだろう。もし起動したなら、そこに入っているデータやアプリケーションのファイルを Windows PC に一旦移し、元の HDD を取り付けた iMac に移せば再び使えるものもあるかもしれない。
しかし、駆動に必要な電圧が違っていたりすると動かないどころか、下手をすると両方とも壊してしまうことになる。そういう意味でこれは、一か八かの賭けだった。
両者の HDD を取り外し、Classic II 側の HDD を iMac に取り付けて電源を入れてみる…………
「ボン!」
一瞬電源が入ったが、それはすぐ勝手に切れてしまった。こんな動作の仕方は初めてだ!
頭の中に暗雲が立ち込めた。とにかく HDD を元に戻して電源を入れてみるが入らない!!!
『も、もしや?!』
恐怖のために冷や汗が出た。私にとっては貴重なお金と時間を掛けてここまでにしたパソコンが、これでお陀仏になったか?!
藁にもすがる思いで iMac の電源コードを一旦抜き、再びさしてから電源を入れたら、なんとすんなり起動した。どうやら、少なくとも iMac の方は故障していないようだ。HDD を Classic II に戻して電源を入れてみると、相変わらず HDD が最初の3秒だけ回転してコトンと止まってしまう。こちらの症状も変わっていないが、今の行為によってどちらも壊れていないようだったので、「ホッ」と安堵の溜息をつく。
『駆動させる電圧が違うんだろうか?』
それなら、HDD の電源プラグは Classic II に繋いだままで、ATA ケーブルをiMac に接続し、iMac の電源を入れたらどうなるか?
やってみたら、先ほどと全く同じ症状だった。
「ボン!」
一瞬電源が入ったが、それはすぐ勝手に切れた。
これは、Classic II の HDD が、iMac のマザーボードに対応していないんだろうということだけわかった。そうすると、これ以上やっても結果は同じことだ。
HDD のデータの救出がほぼ不可能と判明した今、せめてフロッピーディスク(以下、FD とする)内のデータだけでも救出することを試みることにした。
我が家の現役の3台のパソコンの中で、FD ドライブを備えているのは3代目だけだ。そこには、Windows Me と Debian Linux という二つのOSがインストールされている。そのうち、Mac のファイルシステムを認識できるのは後者である。そのため、そちらの方を起動し、FD ドライブにディスクを挿入し、USB メモリーを挿入した。そして、FD の中のファイルを USB メモリーにコピーした。
それを iMac に挿すと、その内容が表示される。それらをダブルクリックすると、そのほとんどが「作成したアプリケーションがみつかりません」ということで開けなかった。それは当然のことなので仕方がない。ファイルの名称を見ると、10年前に作成したそれらのデータは、あまり重要なものではないことがわかった。
これによって私の2代目救出の意欲は、さらに低下してしまった。
ごめんな2代目。君を復活させることも、中のデータを再利用することもあきらめることにしたよ。でも、記念碑としていつまでも部屋に置いておくからね。
それなら、新たに購入したこの5台目を独立したパソコンとして活用しようかと検討してみた。
このOSに対応しているソフトは現在あまりにも少ないし、文章を作るのも画像を編集するのも音楽を作るのも4代目1台で間に合ってしまう。
それなら、どうしても5台目でなければならないことって何だろう?
モニターはCRTで電気を食う。その一方ファンレスという面では電気を食わない…………
本体の電源を入れながら、普段はモニターの電源を切っていてもできる作業って…………?
そうだ! 自宅 Web サーバーだ!!!