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文字列の部屋

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2002.11. 田野呵々士

森  我が家は、生活排水を直接山に流している。その溝の泥は真っ黒で、掘り返すと文字通りドブの臭いがしている。これは排水に含まれる有機物を、バクテリア等の生き物が分解した時に発生するガスの臭いだ。水はここを二メートルも流れればゴミは沈澱し、ある程度澄んで下の池に溜り、その後もっと下の渓流に注いでゆく。この環境が私達の汚した水を浄化してくれているのだ。

 さて私は、「環境保護」という言葉に常日頃から疑問を感じている。細菌、ゴキブリ、蝿、蚊、鼠等のような私達の身の回りにいる小さな生き物は、人類が発生する遥か以前から存在している証拠が化石として残っている。その強靭な繁殖力と、様々な環境の変化に対する周到な適応力によって、仮に人類が滅亡しても彼らは存在し続けるであろうと、私は確信している。現に抗生物質が効かない細菌、蚊取線香でも死なない蚊等が続出しているではないか。
 彼らのしたたかさに比べれば人類の大脳が生み出した科学技術など、その安全性という点ではたかが知れている。特にバイオテクノロジーは、医学に貢献するという大義名分の影に隠れ、大自然の叡知の結晶である遺伝子をいじくり回し、とんでもない伝染病を流行させたりして、人類だけでなく地球全体の生態系を破滅に導く危険性を孕んでいる。核融合反応という同じく大自然の持つ力が、兵器として悪用されたり、何の目的だかは知らぬが、事故が起こるのを承知で無理やり原発を稼働させているという、過去と現在の例を見れば、そのことは容易に想像がつくだろう。問題を抱えていて、保護されなければならないのは、むしろ人類の脳味噌の方なのかもしれない。

 そんなわけで、私は自然環境に対して「保護してやろう」なんてことは、おこがましくて言えない。普段からこっちが守られているので、せめて恩を仇で返さないようにしたいと思っているだけだ。これを間違えて本末転倒すると、全てがおかしくなってくる。
 話が少し脱線したので元に戻そう。この排水の行く先にはサワガニ、山椒魚、メダカ、カワニナ等の様々な生き物がいる。「弱肉強食」という言葉につい踏み付けられそうになる「多様性」を、無言のうちに示してくれている彼らの存在は、私の心を和ませ、絶えず励ましてくれている。
 妻と息子の私達一家三人が引っ越して来る前から、冬になると山椒魚が母屋の横にある小さな池に産卵しにやって来ることを私は知っていた。新居の補修工事に通っていたからだ。ところが、私達が生活排水を流すようになってからは、沢の水が汚染されて、もう産卵しに来なくなるのではないかという危惧が出てきた。
 麺類の好きな私も、熱い茹で汁は直接流さず一旦溜めておいて、油を布で拭き取った後、食器を洗うのに使っているし、お湯が無いときは、七輪のきれいな灰(豆炭、煙草の吸い殻、ビニール等の灰が混じっていないもの)を洗剤として使う。これがまた汚れを良く落とす。但し、漆塗りの椀の場合は表面に細かい傷が付くので、使用を控えたほうが良い。

 短い手足をペタペタと動かしながら、健気に故郷の池に這い登ってくる山椒魚が、今年も安心して産卵し、元気な子供が生まれてまた川に帰っていくようにとの思いで開発したのが、この料理「かんたんグラタン」。平たく言えば、ホワイトソース作りとパスタを茹でる作業を一体化させ、川に流れこむ生活排水を少しでも減らそうという趣旨のマカロニグラタン。ちゃんと作った物の味と比較してもさほど遜色は無い。水道代の節約、小麦粉の節約、燃料の節約、調理時間の短縮にもなるので、浄化設備があり排水にあまり気を使う必要のない方にもおすすめです。次にそのレシピをご紹介しましょう。
かんたんグラタンの作り方
 「ちゃんと作ったグラタンの方がやっぱり旨い。こんなのただの手抜き料理じゃないか!」ですか。そう感情的になられるのも無理もありません。「!(感嘆)グラタン」なんですから…。
 こうして我が家の夕食のささやかな贅沢は、生きている化石と言われている山椒魚と、なんとか共存することが出来ている。

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