特定の虫の種類を指すいわゆる和名とか学名のようなものではなく、「毛虫」とか「芋虫」のような総称。
芯喰い虫は、植物の果実の芯を食べるものと、植物の幹の芯を食べるものに別けられるが、ここでは後者について取り上げる。
根切り虫は、植物の根を食べるコガネムシの幼虫と、植物の茎を根から切り離してしまうガの幼虫がいるが、ここでは後者を取り上げる。
たくさんの枝や葉を茂らせて果実も実らせ元気だった植物が、ある日突然急にしおれて枯れてしまうことがある。それは、この虫の仕業の可能性がある。
植物がまだ小さな苗の段階で幹の内部に侵入し、そこを棲家にして幹の芯を食ながらその植物と共に成長する。芯を食べられて幹が弱った植物は、軽い衝撃などでも幹が折れてしまい、そこから上に水分が行かなくなり、たちまち枯れてしまう。
野菜では、トマト、ミニトマト、ナス、ピーマン、オクラなどがその被害に遭いやすい。
ミニトマト | |
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矢印で示しているのが幹の芯に開けられた巣の断面 | 取り出した虫 |
柳 | |
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この穴の中に入っていた | 取り出した虫 |
上の画像の例で食べられた植物は全く違うものだが、虫はいずれも長さ3cm弱で、多分同じメイガというガの仲間の幼虫だと思う。なぜ「思う」のかというと、これを発見した後は必ず殺すので、これが成虫になったところを見たことがないからだ。
これを取り出すのは簡単だ。進入された植物が枯れてしまう前に引き抜くか切るかして、それを水に漬けると苦しがって出て来る。文字通り「水攻め」だ。
芽が出て間もない野菜の茎や、定植して間もない野菜の茎が、朝起きて見たら突然根元から切られていたということを経験された方は少なくないと思う。それはこの虫の仕業であることが多い。トマト類、ピーマン、ナス、オクラなどの夏野菜が被害にあいやすい。
切られて間もなければ、その茎の周囲半径約4㎝以内を深さ1cmほど掘ると、たいてい太さ1~2mmほど、長さ10~20mmほどの地味な色をした芋虫が丸まって出て来る。それがこの犯人だ。他の苗にも被害を拡大させないためにも、見つけ次第駆除した方がよい。
これはカブラヤガなどのヤガの幼虫で夜行性だ。よくヨトウムシと混同されるようだが、同じ夜行性でもヨトウムシはヨトウガというガの幼虫で、こういう変な食べ方ではなく、もっと正攻法的な食べ方をする。ただし夜中にどこからか大群でやってくるし、ネキリムシより大型化するので、そうなると被害が大きくなる。
ネキリムシという名前だが根っこを食べるのではなく、根っこと茎の間の土から生え際をかじるので、「植物から根っこを切り離してしまう」というふうに解釈すればいいだろう。昼間は倒したその植物の葉を土の中に引きずり込んで食べていることが多い。それなら植物に上って普通に葉を食べればいいのにと思うのだが、昼間活動する鳥などの天敵から身を守るためにそうしているのかもしれない。しかし人間の立場からすると、苗一本を一晩でダメにされるのだからたまったものではない。
幅3~4cm四方に切った生のタケノコの皮を、図のように花や野菜の苗の幹と土が接触する部分にスカートのように巻く。なぜタケノコの皮なのかというと、タケノコが生えてくる時期の後に、これらの虫が野菜やその周辺に産卵するのと、生のタケノコの皮には内側に丸まろうとする性質があるため、ベルトのようにわざわざ紐で縛る必要がない。また、野菜が成長するにしたがって今度は自然に広がっていくし、幹が太くなった植物の茎はネキリムシは食べなくなり、この役目を終えたタケノコの皮は自然に土にかえるのでわざわざ回収する必要がない。そのためこれに最適な素材だからだ。もし生のタケノコが手に入らなければ、ビニールやプラスチックなどで代用してもよい。ただしアルミホイルなどの金属は、日光で熱くなり過ぎて植物の茎を逆に傷付けてしまう恐れがあるのでやめたほうがいい。
このようにすると、これら二つの虫の被害は大幅に減る。農薬を使いたくない人、あまり手間をかけたくない人にお勧めだ。
このような防御をしても、進入されることが稀にある。その発見が比較的早く、野菜が完全に萎れてしまう前なら修復することが出来る。但しそれが可能なのは、トマトやミニトマトや柳といった、挿し木の出来る植物に限られる。
中の虫を除去した株の根元を、たっぷりと水を張ったバケツに漬けて、直射日光の当たらない明るく風通しの良い場所に置いておく。