薪ストーブ
2009.03.16
更新 2012.04.05
薪ストーブとは
鉄や鋳物の箱の中で薪という燃料を燃やし、そこから放出される熱や遠赤外線を利用した暖房器具。
薪ストーブの利点
- 遠赤外線が体の芯まで温める
薪が燃焼して熾き(おき)になると、遠赤外線という電磁波を発生させる。これが人体に吸収されて体の芯まで温まる。
- 部屋の空気を汚さない
石油やガスストーブだと、部屋の中の酸素を二酸化炭素に変えてしまうが、薪ストーブの場合は、空気孔から吸入して薪の燃焼に使用された空気は、煙突によって屋外に排出されるので、二酸化炭素が部屋の中に溜まることがない。
- ストーブの上で調理が出来る
形状によっては、上部の面積が他のストーブに比べて広いので、複数の鍋を置くことが出来る。また、薪を沢山入れれば火力が非常に強くなるので、大きな鍋の水でも比較的早く沸騰するし、燃料を減らせば弱火も可能となる。また、ストーブの上に網を置いてその上に餅を置けば、理想的にぷっと膨らんでこんがりと焼くことが出来る。
- 燃料の転用
薪の副産物である熾きを蓄えておけば、ストーブが必要のない時期に七輪で調理することが出来るので、ガスや灯油代の節約になる。
- 停電や原油価格の高騰に強い
そういったエネルギーの供給が断ち切れても、薪さえあれば心配ない。
薪ストーブの大変な点
- 薪の確保
製材所などから出る廃材や、森林の伐採などによって無料で薪が手に入るような環境だと最高だが、そうでなければ購入するか自分で作らなければならない。
対策:我が家の場合、たまたま周囲が山なので購入することはないが、『人間たまには運動することが必要だ。』と思えば、薪作りも楽しくなる(笑)
- 煙突掃除
薪を燃やしたときに発生する煙には、乾留液(かんりゅうえき)英語では tar(タール)の成分が含まれている。これが煙突内部に付着することが慢性化すると、不完全燃焼の悪循環に陥って煙突が詰まってしまうことがある。
これは可燃性の物質で、ストーブの熱によって燃えることがあるので危険だ。そうならないように掃除をして、付着したタールを取り除かなければならない。そのやり方は、掃除の項目を参照。
生木を燃やしたときに、煙突の継ぎ目から流れ落ちて来たタールが固まった物。
これは引火し易く、ストーブの熱で燃え上がることがあるので非常に危険だ。
対策:後述するように煙突の縦横の比率を考慮して「引き」を良くすること、生木や湿った薪を燃やさないこと、そしてなるべく薪を完全燃焼させて煙を出さないようにすることによって、その付着がかなり防げる。そのようにして薪を上手に燃やせば、一冬一度も掃除しなくて済むこともある。
- 灰の処理
木を燃やすと必ず灰が出るので、これを定期的にストーブの中から取り出さなければならない。
対策:灰には野菜の根の生育に欠かせないカリウムが多く含まれているし、アルカリ性なので土壌の酸性化を防ぐことが出来る。そのため、我が家ではこれを畑の肥料にしており、出れば出るほど有り難いのである。
- 設置が大掛かりになる
煙突や断熱材といったストーブ以外の物も必要。
対策:無し。先に述べたような数々の利点を考えると、このくらい苦にならない。
種類
材質、熱の出し方、燃焼方式によって、いくつかの種類がある。
選ぶポイント
- 材質と価格と耐久性
鉄板製のものは3千円代からと安価なものもあるが、熱のために腐食し易く、毎日使えば1年で穴が開く。同じタイプでもステンレス製だと、価格は1万数千円になるが鉄板のものよりやや長持ちする。いずれも軽量なので、移動の際には便利。工事現場や製材所などで暖を取るのに適している。
一方、鋳物のものは中国製や台湾製なら3万円くらいからで手に入る。我が家のものは1998年に4万円で購入してから毎年使っているが、いまだにほとんど傷んでいない。欧米製のものは10数万円からと高価になるが、その分丈夫で長持ちするようだ。いずれも一人では運べないほどの重量になるので、屋内にどっしりと置いて使うのに適している。
- 出力
使用する部屋の広さによって決まる。大体、入る薪の量に比例しているので、大きければそれだけ出力が高いと見て良い。W(ワット)、kcl(キロカロリー)といった単位で表わされるが、カタログによっては単に「~畳用」としか表示されていないものもある。
- デザイン
インテリアという性格が強いのが、他のストーブとは大きく違うところだ。中国製でも、本場北欧調のデザインを取り入れている物もある。
ストーブで料理を作るなら、上に鍋をいろいろと乗せられるので、四角い箱型で煙突を背面から出せるものが適している。
- 薪を入れる扉
これが大きいと、その分太い薪が入るので、薪を割る手間が省ける。ただの焚き火だと太い木はなかなか燃えないが、薪ストーブの中でなら細い薪と一緒にすればちゃんと燃えるので心配要らない。
本体以外に必要な物
薪ストーブの使用には欠かせない物がいくつかある。
- 煙突
排気と煙を屋外に排出するためのもの。直径の規格が何種類かあるし、構造や材質によっても種類があり、それぞれ用途に応じた長さや形状がある。
- シングル煙突
一般のホームセンターなどで普通に見掛けるもの。
- 鉄
安価だが、熱のためにすぐ腐食して穴が開く。
- ステンレス
価格も手頃だし、軽いので取り扱いが楽。
- ホーロー
ステンレスよりやや高価だが、その分内部にタールが付着しにくく、丈夫で長持ちする。
- 二重煙突(ダブル煙突)
二重構造になっていて、その間に断熱材が入っている。かなり高価なので使ったことはないが、煙が冷却されることなく外に出るので、内側にタールが付きにくく、煙突掃除の手間が大幅に省けるようだ。
- 着火材
薪にマッチ一本で火を付けても着火しないので必要。さまざまな物が市販されているようだが、我が家ではその辺に落ちている杉葉か、捨てるような紙でしているので、完全無料だ。
杉葉
- マッチ
これは好き好きだと思うが、薪のストーブに着火するのにガスライターを使うのは何となく面白くないので、我が家では昔懐かしい徳用マッチを使っている。
- 火バサミ
火の付いた燃料を扱うための必需品。
- 鋤簾(じょれん)
スコップを縮小したような道具。火の付いた燃料を移動したり、灰を取り出したりするための必需品。
- 火吹き竹
ただ竹を切っただけの物。一方の穴に口を直接当てず真っ直ぐに息を吹き込むと、もう一方の穴から大量の空気が出る。
- 灰掻き棒
灰を掻き出したり、ストーブの上に付着したタールを掻き落としたり、火バサミの補助としてストーブ内の薪の位置換えをしたりするのにあると便利。
- 消壷(けしつぼ)
火の付いた燃料を消火するための必需品。土で出来ているので、ある程度の断熱効果がある。ホームセンターなどで薪ストーブや七輪を扱っているコーナーに行けば手に入るはずだ。
- 燃料の薪
必ず乾燥した物を使うこと。生木や湿った薪も、乾燥した薪と共に燃やせば燃えないこともないが、そこから出る水分が煙突内部に付着し、そこにタールが付くので、煙突が詰まったり火災になったりする原因となる。
また、海岸に落ちている流木や、海沿いで野ざらしになっていた廃材は、たとえ海水に浸かっていなくとも、暴風のときにその飛沫が降り掛かっていることが多い。そこに含まれている塩分によって、本来丈夫なはずの鋳物ストーブでもすぐ駄目になる。実際に海辺に住んでいる私の知人は、それを知らずにそのような木を燃やしていたため、1年余りでストーブに穴を開けてしまった。
- 広葉樹
樫(カシ)、クヌギ、ナラ、クリなどの広葉樹は密度が高く、じっくり燃えるので、ストーブには最高の燃料となる。
- 針葉樹
松、杉、ヒノキなどの針葉樹は、油分が多くて良く燃えるので、主に点火するときのメインの薪に使っている。
- 端材(はざい)
製材所などから出る端材は針葉樹であることが多いが、無料で手に入るのなら大いに活用するべきだ。但し、輸入して陸揚げする際に海水に浸かることが多い外材は、その塩分のためにストーブがすぐ傷むので注意。
- 廃材
建造物を解体したときに出る廃材も、無料で手に入るなら大歓迎だ。しかし、防虫剤やペンキなどの薬品や塗料が塗られていることがある。そういう物の中には、燃やすと有毒物質を出す物があるので要注意だ。
また、海水に浸かっていた建材を燃やすと、塩分のためにストーブが傷むのでこれも注意。
- 煙突掃除用具
これも必需品。
設置について
煙突などの関係から、その設置場所は限定されてくる。そのため、ストーブを購入する前に、あらかじめ設置したい部屋の条件をチェックしておく必要がある。購入したはいいが、安全な設置をするためには大工事が必要になるようなことも有り得るからだ。
また、ここで述べられていることと、ストーブに添付されている取扱説明書の記述に相違があった場合は、必ず後者の方を優先して参考にしてほしい。
- 部屋の中央が望ましい
薪ストーブの場合、熱と遠赤外線はストーブを中心とした円形に放出される。そのため、なるべく家屋の中央に位置する部屋の中央に置けば、暖房としての効率が最も良くなる。
- 壁や家具などとの距離
薪ストーブの火力はかなり強いので、壁からは60cm 以上離す。木材や紙や布などは直接火が当たらなくとも、高温が長時間持続した場合発火することがあるし、家電製品は変形したり故障したりする。そのため、そのような物を近くに置かないこと。
- 断熱材、遮熱壁の使用
部屋の床の材質が、石かコンクリートかレンガの場合はそのまま設置することが出来るが、木や畳や絨毯の場合は、必ずストーブ用の断熱材(炉台)を敷いて、その上に設置すること。
ストーブを木製の壁際に設置する場合は、必ず壁との間に煉瓦で遮熱壁を設けること。その方法については、薪ストーブを販売している各サイトで紹介されているのを参考にしてほしい。
- 煙突の問題
- 直径
煙突の径は何種類かあるので、必ずストーブに合ったものにする。
- どこから出すか
先に述べたような理由から、下の図の右のようにして屋根の中央から出すのが最も理想的だが、その場合は雨漏りを防ぐための特殊な工事が必要になってくるので、素人の手には負えなくなる。
壁から出す場合、図の左のようにすると、寒冷地では屋根から滑り落ちた雪が当たって煙突が壊れてしまう。そのため、中のようにして屋根のスロープ面の無い壁から煙突を出さなければならない。
- 縦横の比率
空気より暖かい煙は上の方へ向かう性質があるので、横の長さより縦の方が長ければ長いほど、空気口から入る空気の「引き」が良くなり、燃焼率が向上するという理屈になる。
我が家の薪ストーブの説明書には、この下の左側の図のように、「Cの長さをBの長さの1.5~2倍程度長くして下さい」とある。
ところが我が家の構造からすると、薪ストーブを使用する部屋から煙突を出そうと思えば、右の図のように縁側を通さなければならない。しかも、その先は屋根のスロープに面しているので庇より先に出すことも出来ず、屋根の裏側に煙が当たって危険なので、あまり高くすることも出来ないという三重の障害を抱えているのである。天井が高いのがせめてもの救いだ。
そのため、このような苦肉の策を取ってなんとか使用している。AとBがそれぞれ200cm、Cが15cm(笑)だ。風向きと強さによっては空気調整口から煙が逆流することもあるし、それを常に全開にしておかないと、煙の中のタールの成分が煙突内に付着し、最後には詰まってしまう。まあ、これが縦と横の比率の限界だろうと思う。
- 断熱
本体同様、煙突が建材に接近する部分には必ず断熱をしなければならない。
- 先端
トップとも言う。雨水や風の浸入を防ぐための工夫がなされており、種類も豊富だ。
最も単純なT型は、穴の空いている両横の方向から強風を受けると、煙の排出がかなり阻害される。H型では、この画像からもおわかり頂けると思うが、その影響が少ないように作られている。
基本的な構造
この図は、最も単純な構造で低価格のストーブのものだ。
一方、排出する煙や灰の量が非常に少なくてすむ、完璧に近い燃焼をするものは構造も複雑になっており、その分価格も高価になる。
使用方法
あらかじめストーブの底に砂か灰を厚さ2センチくらい敷いておくと、焚き付けがし易くなる。
- 燃料の薪を入れる
ハンドルを回して焚き口の扉を開け、メインの薪を2cm ほどの間隔を開けて二本平行に並べる。火の付きが早いので、良く乾燥した杉材を使うと良い。
- 着火材を入れる
この画像では杉葉を使っている。その上に薄い板切れか木の皮を置く。ここでは杉の板切れを使っている。
- 着火材に点火する
杉葉や紙の場合は、燃やしながらそれをある程度補充し続ける。
- 燃料を補充する
板切れと薪に火が移ったら、乗っていた板切れを薪の間に落として、その代わりに別の薪をもう一本乗せる。
- 空気調整口を全開にしておく
焚き口の扉を閉めて、そこに付いている空気調整口を全開にする。
- 火力を調整する
足した薪に火が移っことが確認されたら、流入する空気を調整して適当な火力にする。
- 消火の際は
まずストーブ内の熾きを消壷に移し、燃え残った薪は互いに離して扉を閉め、火力調整口を完全に閉じる。
火災など緊急の場合を除いて、水を掛けて消火してはいけない。ストーブ本体が鋳物の場合は急激な収縮によって破損して大変危険だし、そうでなくともストーブ内部から大量の灰が舞い上がることになるので。
掃除
- 本体
固く絞った布で表面の汚れを拭き取る。錆びの原因となるので、洗剤は使わない方が良い。
内部のガラスなどに付着した煤は、灰掻き棒で軽く掻き取る。あまり強く擦ると、ガラスの表面に付いた傷に煤が入り込み、かえって掃除が困難になるので注意する。
- 煙突
内部に付着した煤(すす)やタールを除去する。
その量が少なければ、空気の入り口を最大に開けてストーブをガンガンに燃やせば、その熱で煙突内部のタールも燃焼してしまうので除去することができる。
また、シングル式のステンレス煙突の内側に付着しているタールが少量で乾燥していれば、煙突の外面を木や竹の棒で軽くポンポンと叩くと、そそれがパラパラと下に落ちて除去できる。その際、火バサミなどの金属で叩くと煙突を破損することがあるので注意。ただし、ホーロー煙突の場合は、たとえ木や竹で叩いても煙突に穴が開くことがある。
タールが大量なおかつ湿っている場合は、ストーブの火が完全に消えてから、専用の掃除用具または木の棒などを使って、煙突内部をゴシゴシとしごいて落とす。煙突をストーブから外して分解するとそれがし易い。
除去したタールは、ストーブ内部で薪と一緒に燃やして処理することができる。
我が家の薪ストーブ
DANBOH-3 ST-286C |
サイズ |
H485×W570×D340 m/m |
煙突経 |
Φ105 m/m |
暖房面積 |
約15~20坪 |
重量 |
約65kg |
暖房方式 |
輻射式 |
煙突の取り付け位置 |
上部後方と背面のいずれか |
1998年に地元のホームセンターで4万円ほどで買って以来、毎年冬季の4ヶ月間毎日のように使っているが、いまだにほとんど傷んでいない。DANBOH-3 ST-286C という名前が付いているが、そのメーカーをネットで調べてもよくわからなかった。この価格からすると多分中国製だろう。いずれにせよ、良い買い物をしたと思っている。
ストーブでの調理
我が家の薪ストーブを上から見たところ。この上で調理するなら、煙突は上部からではなく背面から出した方がスペースをより多く確保することが出来る。このストーブではそれが出来るのだが、先に述べたような煙突の状況なので、少しでも燃焼効率が上がる上部に取り付けている。
鍋の大きさに応じて、穴の大きさを2段階に調節することが出来るようになっている。
また、中に入っているこの板を前後にずらすことによって、空気の流れを変えることが出来る。上の画像のように煙突側にしておくと、この穴の上に置いた鍋の底に炎が直接触れるようになる。下の画像のように焚き口側にしておくと、煙突に向かって空気がより多く流れて燃焼効率が増す。
左の画像は、圧力鍋で主食の玄米を炊くついでに薬缶も乗せて水を温めている。右の画像は鍋料理を作っているところ。
右の画像のように大きな薪を朝に入れておくと、午前中一杯は持つ。
七輪と連携すると能率が上がる。詳しくは、こちらを参照。
注意点
- 塩分は大敵
塩分のあるものをその上に直接置いたり、汁などをこぼしたりすると、ストーブ本体が錆びて寿命を早める。
- 揚げ物禁止
小まめな温度調節が難しいし、万が一ストーブの上に油がこぼれた場合は炎上するので非常に危険だ。
副産物
木酢液(もくさくえき)
薪ストーブの煙突からしたたり落ちる黒い液体がそうだ。
これを野菜の葉や根の周辺に振り掛けると虫除けになる。
灰
木や木炭の灰は、アルカリ性だしカリウムを含んでいるので、畑の土質改良材や肥料として使えるし、ワラビの灰汁抜きや食器の洗浄に使える。
ただし、豆炭などの練炭系の灰は植物を枯らすので、畑や台所などの食品関係には使えない。
また、紙を燃やした灰も、印刷のインキや蛍光剤などが含まれているので、ストーブ内部でそのような物を燃やしたなら、その灰は食品関係に使わない方が良い。
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