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暮らし

水道管凍結

2010.01.27
更新 2013.03.07

水道管凍結とは

 上水道または下水道の管内の水が凍ること。

上水道

 一般の一戸建て住宅の上水道の水は普通、まず金属製の蛇口の中から凍り始め、次に管の温度の低い部分から凍っていく。そして、水が凍ると体積が増える作用(膨張)によって、最後は管が破損することになる。
 たかが「水だ」と思ってなめてはいけない。たとえ少量の水であっても凍って膨張すれば、塩化ビニールはもちろんのこと、金属までをも破壊する力を持っているのだ。
 以下、症状の軽い順にあげてみた。

症状と対処
症状原因対処禁止行為禁止の理由
水が少しずつしか出ない水道管内部の水が凍りかけている水量が正常になるまで水を出し続ける水を止めて放置する完全に凍って水が全く出なくなり、最後には管が破損する
水道管が破損していて、どこからか水が漏れているいつまでたっても水量に変化がなければ、元栓を閉めて破損箇所を修理する。水を止めて放置する水がどこかで漏れ続ける
蛇口の回転が重たいか全く回らず水が出ない蛇口内部の水が凍っている風呂の湯程度の温度の湯を蛇口に少しずつ掛け、水がポタポタと出てきたらそのまま出し続ける熱湯を蛇口に掛ける
  • 急激な膨張によって金属や塩ビが破損する
  • 内部のパッキンが変形する
お湯を掛けて蛇口は回るようになったが水が出ない水道管内部の水が凍っている元栓を閉め、管の内部の氷が溶けるのを待つ
何もしない管が破損している場合、中の氷が溶けると水が噴き出す
管の継ぎ手が抜ける水道管内部の水が凍って膨張した元栓を閉め、管内部の水を抜いてから、抜けた継ぎ手を接合する
何もしない中の氷が溶けると水が噴き出す
管が破裂する水道管内部の水が凍って膨張した元栓を閉め、管内部の水を抜いてから、破損した管を交換する
何もしない中の氷が溶けると水が噴き出す
予防

下水道

 一般の一戸建て住宅の下水道は普通、各家庭に設置された浄化槽か公営の下水道へとつながっている。ところが、山間地などで直接地下浸透をしていると、下水管の内部が凍結することがある。

症状と対処
症状原因対処禁止行為禁止の理由
排水口から水が少ししか流れない排水管内部の水が凍りかけている60度くらいの湯を少し流ずつして溶かす冷水を流すその水が凍って管が塞がる
排水口から水が全く流れない排水管内部の水が凍って管が塞がっている気温が上昇して溶けるのを待つ水や湯を流すそれが凍って事態が悪化する
予防

 冷水を流すなら、ケチらず思い切って大量に流す。そうすると、少しぐらい凍っていても次第に溶けていく。逆に、ちょこちょこと少量の水を流していると、それが管内でツララ状になり、しまいには管を完全に塞いでしまうことになる。

我が家での凍結の実例

地震・雷・火事・凍結!
雪に埋もれた我が家

 私が子供の頃には、「地震、雷、火事、親父(おやじ)」という言葉をよく耳にしたものだ。この世で恐れられているものを順に並べているのだと思う。
 だが近頃では、それをあまり耳にしなくなった。「親父」の権威が落ちたせいだろうか? それなら、それは悪くないことだと思う。
 現在の世界の国々の中で、日本の一般的な家庭の「親父」は、かなり多くの収入を得ている方だろう。それによって養われている家族が、自動車や家電製品などを購入することが出来るのだから、日本人は物質的にかなり恵まれていると思う。だから、そういう点で「親父」は尊敬に値する。そこに人格の高さが加われば、その念は更に高まるのだが。
 以前ネパールを旅したとき、農家に間借りして2ヶ月間ほど生活していたことがあった。その人たちは、水牛は飼っていても自動車など高くて買えないし、家電製品といえば裸電球数個しか持っていなかった。そのため私は、自動車や家電製品があれこれ無くとも、健全な空と水と大地があれば、人は生きていけるのだということを、理屈ではなく体験として知っている。
 だから思うのである。子を産んで育て、家事という立派な仕事をこなし、時にはパートなどで現金収入を得ている日本の「おふくろ」は、「親父」よりもっと基本的な部分で尊敬に値するのではないだろうかと。
 ここで恐れられている「親父」とは、家長という紙の上での制度、もしくは現金収入の高低によってその価値が決まるという、極めて不安定な存在なのではないだろうか。だからこそ、家長という目に見えない権威を振りかざしたり、やたら怒鳴ったり暴力を振るったりでもしなければ、その存在をアピール出来ない人もいるのだろう。その程度の人格なら、恐れはしても敬おうと言う気持ちにはなれない。
 そのため私はこうも思う。人類共通の敬うべき存在は、「親父」よりも「おふくろ」の方にあると。
 だから、本当は親父の権威が地に落ちたのではなく、ただ元に戻りつつあるだけのことではなかろうか。要するに日本の社会は、武家全盛時代のときに確立された制度が形骸化しており、太古から長く続いていた女性中心の社会という、本来のものに戻ろうとしているだけのことではないだろうか。
 サラリーマンだった私の父親は、「家族を養ってやっている」ということに対する見返りのような特権意識は多少あったが、暴力を振るうような人ではなかった。しかし、その彼も既に他界してしまっている。また、私自身は年齢的に「おじさん」ではあるが、キャラクターとしての「親父」ではないと思う。
 そうすると我が家において、先ほどの言葉の前の三つに次いで恐ろしいものは、「親父」ではなく「凍結」、厳密に言えば水道管の凍結と言うことになる。

2004年

間取り図

 2月のある朝のこと。
 夜が明けて、寝床の横の柱に掛かっている寒暖計を見たら、摂氏2度だった。
 朝食をすませ、いつものように茶の入った熱い湯呑で手を温めながら、パソコンでメールのチェックなどをしようとしてコタツに入ると、台所の方から何やら雨の降るような音が聞こえて来た。
 不審に思ってそちらへ行くと、その音は風呂場の方からしていた。我が家では、施工者である私の手抜きのせいで、台所の土間の延長線上にある風呂場には台所とを隔てる壁が無い。そちらを見ると、なんと浴槽の上を通っている水道管の継ぎ目から、噴水の如く水が噴き出しているではないか!!!
 濛々と立ち込めている水煙は、朝の光に輝いて虹のよう。
『ちょっと美しい……………』
『……………………………』
『……………いやいや、見とれている場合ではない!
こ、これは、災害なのだーーーっ!!!』
 私は自分の間抜けさを振り切るようにして、玄関で長靴を履き外に飛び出した。
 さて、ここからが大変だ。水道の元栓を閉めなければならないのだが、そのありかを探すために、とにかく手当たり次第にスコップで雪を掘りまくった。掘りながら、様々な思いが頭の中をよぎる。
『昨夜は、水をチョロチョロと出しとくの、うっかり忘れてたんだよな……』
『元栓に、目印の棒立てとけば良かったよな……』
『今月の水道料金は覚悟しとこう……』
 15分ほどかけて雪を掘りまくった末に、ようやく空色をした物体が雪の下に透けて見えた。メーターと元栓が収納されている箱の合成樹脂製の蓋だ。雪をさらに掻き分けてそれをこじ開け、ようやく元栓を締めることができた。

水道のメーターと元栓の蓋 水道のメーターと元栓
雪の下から現われた空色の蓋 メーターの右に小さく銀色に光っているのが元栓の中心のネジ

 今回の災害の原因は、もうわかっている。
 我が家の水道工事は私が自分でしたのだが、上水道の塩ビ(塩化ビニール)管を接続する際、管の方には接着剤を塗ったが、継手(つぎて)という接続のための部品には塗っていなかった。そのため、中の水が凍結して膨張した際に押され、その弱い部分がはずれたのだ。そして夜が明けて気温が上昇したために中の氷が溶け、一気に水が噴き出してきたというわけだ。
 しかし、もししっかりと糊付けしていたら、管は抜けずに破裂してしまい、この程度の損害では済まなかったかもしれない。
 管の水を拭き取ってから、今度は管のオスとメスの両方にしっかりと糊付けしてそれをはめ込み、糊が乾くのを1時間ほど待ってから元栓を開ける。かくして、この災害は難なく復旧した。

2005年~2006年

まずは断水

蛇口の下のツララ
 2005年12月17日。
 ラジオの天気予報によると、翌日の最低気温は平野部でも-3度以下になるとのこと。標高約300メートルの我が家では、それよりさらに1~2度下がると思う。それに備えて、浴槽の中に少しずつ水を出しておいたのだが、フン! そんなもの!
 このようなときの最強の防衛手段は、まず非常用の水をどこかに蓄えておいてから水道の元栓を閉める。そして、全ての水道の蛇口を全開にする。そうすると、最も低い位置にある蛇口より上の水道管から水が抜けて、その部分の管の凍結を防げるのである。
 しかし、面倒臭がりの私は、そのような面倒なことは、なるべく避けたかったし、貧乏性と言うか何と言うか、水は出しても捨てるのは厭なので、浴槽から溢れない程度に、ポタッ…………ポタッ………という水滴しか出していなかった。そういうことが重なって今回の災害が起きたのである。
 翌18日朝、目が覚めた私は、寝室にしている「おまえ」という部屋の隣の、玄関入り口にある洗面台の蛇口を回してみたが、凍っていて全く動かなかった。
 台所の蛇口も、ウンともスンとも言わない。普通なら、蛇口の栓の部分にぬるま湯を掛ければ、しばらくしてからポタポタと出て来るのだが、栓は回るようになったが、いつまでたっても水は出て来なかった。
 風呂場を見に行けば、なんと出しておいたはずの水が、ツララになったままで止まっており、浴槽には有無を言わさぬような厚さの氷が張っている。
 私の胸に恐怖が走った。『もしかして、水の入り口が凍ったとか?』
水の出入り口
 我が家の上水道は、勝手口の外で地中から立ち上げ、その敷居の下を潜って屋内に引き込んである。その部分が凍ってしまえば、家の中の管をどうしようとも水は出て来るはずがない。それなら、気温が上がるのを待つしかないので、成す術も無い私は、たまたま前の日から入れてあったポットのお湯で朝食を作ることにした。
 ガスの無い我が家で熱い朝食を作るには、まず薪ストーブで火を起こし、しばらくしてそこから出る熾(お)き七輪に入れてそこに蓄えてある熾きを足し、その火で調理することになる。そのため私は、そのストーブがある「おまえ」に向かった。
 呑気なものだ。本当の災害は、これから始まるというのに……

間取り図
ドスン! ドスン! ドスン!

 普通だと、気温が最も低いのは夜明け頃で、たとえ雲っていたとしても、日が昇れば少しは気温が上がるものだ。ところが、この日はよりにもよってその逆だった。
 ストーブに火を入れていたら、外が俄かに暗くなってきて、上空に強い寒気が流れ込んで来ていることが明らかにわかった。
 それから10分ほどしてから、物を取りに行くため台所へ向かう途中、洗面台の横を通りかかったら、ドスン! という大きな音がした。反射的にそちらを見たら、なんと洗面台の下の水道管の継ぎ目が、たった今抜けたところだった。その管の中からは、棒状の氷が冷ややかに突き出ていた。
 どうやら、私が通りかかったときの微かな振動が引きがねになって、それまで凍り掛けていた管の中の水が一挙に氷になったようだ。そして、その膨張で押されたことにより、一番弱い管の継ぎ目の部分が抜けたのだろう。
 台所へ入ると、またもやドスン! そこを通っている管の一箇所が、やはり同じようにして継ぎ目で抜けたのだ。
 次は風呂場の方でドスン! と鳴った。
 朝なのに暗く冷え切った台所の中で一人立ち尽くした私は、目に見えない何物かによって次々と家が壊されていくという、今まで経験したことのない恐怖を感じた。
 氷が突き出ている水道管からは、一滴の水も出ていない。どうやら完全に凍ったようだ。2004年のときのように、これをしっかり糊付けして接続すると、今度凍結したときは、抜けるのでなく破裂する可能性がある。そうすると、手持ちの材料では修復することが出来ず、町まで管を買いに出なければならない。
 ところが、私の愛車は2輪駆動。しかも、道路脇から倒れている竹のせいで除雪車は、西隣の家から我が家に至る100メートル余りの道路の雪を掻いていない。要するに、その雪が溶けるまで車を出せないのだ。それでは町に買い物になど行けない。天気予報では明日も氷点下になると言っていたし、この分だと2~3日はこのままの状態だろう。
 自分の手が届く高さにある、洗面所と台所の抜けた水道管から出ている氷を引き抜いた私は、糊付けせずにとりあえずそれを繋ぎ合わせた。
 このあと出来ることは、ただ一つ。それは…………飯を食うことだ~~~っ!!!
「水道の元栓を閉める」という基本的なことを置いといて、「食べる」とか「飲む」とか「寝る」といったことを優先するのだから、こういうときの私は良く言えば楽天家、ごく普通に言えばバカだ。
 自分の名誉のために、少しだけ言い訳させてもらうと、去年雪を掘った記憶を頼りにすれば、元栓が埋まってる場所はすぐに見付かるという自信があったのだ。しかし、その「記憶」とやらが、とんでもない代物であることを、後になってから思い知らされるのである。

お次は洪水
浴槽に溜めてある水

 不幸中の幸いだったのは、浴槽にきれいな水を溜めておいてあったことだ。それによって顔や手足を洗ったり、歯磨きや食器洗いも出来たので。
破損した手桶  以前インドを旅行したとき、水道の来ていない山岳地帯の村に滞在したことがあった。そこでは、家から200メートルほど離れたところにある泉の水を毎朝汲んで来ては家の中の瓶に蓄えておき、手桶で汲んでは大事に大事に使っていた。そのような経験をしているので、今の状態は苦になるどころか懐かしささえ覚えた。
 だからむしろ、最初に浴槽の水を汲もうとしたとき、そこに張っている氷を割ろうとして風呂用のプラスチック製の手桶で叩いたら、厚い氷が割れず逆に手桶が欠けてしまったことの方が不愉快だった。
 いやいや、郷愁など感じて楽しんでいる場合ではないのだ。夕方になってから、ほんの一瞬ではあるが、お日様が何日ぶりかで顔を出したのである。それによって、屋内外の全ての氷雪が一挙に溶け始めた。すると、風呂場の方で何やら不気味な音がした。
 浴槽の上には手が届かなかったので、そこだけは管が抜けたままになっていたのだが、台所から覗いて見ると、そこから氷の棒がソロリソロリと抜け出て来ているではないか。それがある程度の長さになると、自らの重みでポキンと折れて落下する。それを何度も繰り返しているのである。そこの管はたまたま7メートルほどの直線になっていたので、それは壮観というか何とも奇妙な光景であった。まるで、水道管が細長い氷の卵を次々と産み落としているようだ。
 そのようにして、中の氷が出てしまっても水は出て来ない。やはり、入り口で凍っているのだろう。いつもの私なら、これから起こることをすぐに想像出来たのだろうが、入り口の管の中の氷は容易に溶けないだろうという、固く悲観的な思い込みをしていたので、そこまで頭が働かなかった。
 それから1時間もしなかっただろうか、先ほど氷が出てしまった管の先から、今度は水滴が落ちて来たのである!!! こうなると、いくら頭の働いていない私にでも、これから起きることは厭でも想像することが出来た。
 手早く作業着に着替え、玄関で長靴を履いた私は、雪掻き用のスコップを持って母屋の北西へと向かった。このときの積雪は、多いところで50センチ以上もあり、今もなおチラホラと降り積もっている。一歩踏み出すたびに、足が雪の中にズボッと膝上まで沈む。
 そもそも水道の元栓というものは、母屋の近くになければならないものだろう。ところがこの家のそれは、なぜか北隣の家のコンクリートブロックの石垣の下という、とんでもないところにある。距離にするとうちの母屋から50~60メートルは離れているだろうか。しかも、その辺一帯には笹が密生しているし、目印になるようなものは何も無い。
 前述したように、1年ほど前にも雪を掘りまくって探したはずなのだが、そのときに生えていた植物や雪の積もり方がかなり違っているのでよくわからない。とにかく、「ここぞ!」と思われる場所の雪を手当たり次第に掘りまくった。15分ほどやってみたが、上水道の元栓とメーターが収納されている箱の蓋の空色は現われない。
 気になったので様子を見に行くと、母屋に近付くにしたがって、ジャジャジャジャーーーッという激しい水音が聞こえて来る。勝手口から中に入ると、果たして土間の奥には予想通りの光景があった。
 浴槽の上の外れた水道管の先からは、それまでとは打って変わって水道水が勢い良く噴き出しており、それがコンクリートの土間の上に落下して、先ほどのような音を立てていたのであった。
 浴槽の縁の上に立ち、水の流れに逆らって管と管とを繋ぎ合わせてみたが、それは強力な水圧によって、たちどころに押しのけられてしまう。それならばと、蛇口の栓を全開にして繋ぎ合わせてみたら、事態はさらに悪化することとなった。今度は台所の方で「雨音」がしたのである。
 頭から水しぶきを浴びていた私であったが、それを拭く間もなくそちらへと向かった。すると、先ほど糊付けせずに繋いでおいた台所の管がはずれていて、なんとそこから水が噴水の如く噴き出しているではないか!!!
 木の床のそっちが水浸しになるのなら、コンクリートの床から外に排水することが出来る風呂場の方で水を出しておく方が、ずっとましだ。急遽風呂場に戻った私は、先ほど繋ぎ合わせた管をはずし、また台所に戻って、そちらの管を繋ぎ合わせた。するとまた、風呂場の方から激しい水音が聞こえた。なんだか、水とイタチごっこをしているようだ。
『とにかく元栓を閉めなきゃ……』
 発掘現場に戻った私は、笹の間の雪を、掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘って掘りまくった。
 水道管から流れ出ている物が、いずれ莫大な額となって銀行から引き落とされるという恐怖から、私は錯乱状態になっていた。そのため、一度雪を除けた場所にまた雪を置き、そこをまた掘るというような無駄な行為もしていたように思う。
 それから30分もすると周囲はかなり薄暗くなってきた。これでは夕食の準備どころではない。家に戻った私は、電気コードのドラムを電源に挿してから現場に引いて来た。そして、そこに工事用の電球を接続し、それを笹の上に掲げて、日没後暗くなってからも作業を続行した。遥か家の中からは、依然として滝の音が聞こえて来ている。
 電灯をともし、がむしゃらに雪を掘りまくっている私の奇行は、当然のことながら隣の家の台所の窓から見下ろせるはずだ。しかし私は、誰にも来て欲しくなかった。この状況を近所の人に説明することは、自分のバカを披露するような気がして、かなり恥ずかしい。筆者と読者の顔が互いに見えないネット上だからこそ、幾分かは恥じらいながらも、まだこうして公開することが出来ているのだ。
 午後7時半が過ぎた。絶え間なく噴き出して下水溝へ流れて行った水は、既に小学校のプールの半分ほどの量になっただろうか。私は、作戦を変えることにした。
 滝の音を尻目に家に上がった私は、「おまえ」の電灯をともすと、電話機が置いてある棚の下から電話帳を取り出した。その中のあるページを見ながら受話器を耳に当てた私は、番号のボタンをプツプツと押した。市役所から委託されて水道のメーターを調べに来る業者に、メーターのありかを尋ねることにしたのだ。
 電話には、社長の奥さんらしき年配の女性が出た。それによると、担当している人が今は不在なので、連絡を取って聞いてみるとのこと。こちらの電話番号を伝えて、一旦電話を切る。
 それから10分もしないうちに、担当者の中年の女性ご本人から直接電話があった。それによると、大きな杉の木があって、メーターボックスはその手前3メートルくらいとのこと。この前見に行ったとき、目印に杉の枝を立てておいたそうだ。これは正に「地獄に仏(ほとけ)」。彼女に深く礼を述べた私は電話を切ると、早速発掘現場に舞い戻った。
 その言葉に従って大きな杉の木の手前を掘ると、間もなく雪に埋もれていた杉の枝を発見。その周りの雪をさらに掘り、スコップの先であちこちザクッザクッと雪を突き刺すと、ガツンという手応えがあった。そこをさらに掘ってみると、あったあった! 待望の空色の蓋が!!!
 果たして、ようやく水は止まった。
 電源コードなどを撤収している私の頭の中は、麻痺しそうな身体の疲れとは対称的だった。そこに、さまざまな思念が流れた。
『やれやれ、ようやく終わったな……』
『焼酎が飲めるぞ!』
『こんなに長時間運動したの何十年ぶりだろう……明日は筋肉痛かな?』
『もう8時を回ってるだろうか……4時ごろから出始めて、その間ずっと全開状態だったわけで……水道代いくらになるんだろう? 極貧の俺に払えるかな……』
『もう遅いけど、晩酌のつまみは何を作ろうか? 簡単なのがいいな……』
 片付けを終えて家の中に入った私は、風呂場の電灯を付けて、被害の状況を改めて確認してみた。
 噴き出した水が梁に当たり、それがあちこちに飛び散っていたので、煤で真っ黒の壁も柱もビショビショだった。そこから落ちた水滴が浴槽に流れ込んだため、そこに溜まっていた水は、やや茶色くなっているが、不潔な感じではない。当分、手足を洗うのはこの水にしよう。
 離婚してからの我が家では、浴槽の掃除はしても床までは掃除をしなくなったので、そこには土や落ち葉が積もっていた。それがこの一件できれいになっていたのが、唯一の「怪我の功名」と言えるものだった。
 あとの面倒なことは、全て明日することにして、私はいつものように台所で晩酌をしながら料理を作った。

被災生活

 地震や火事などで家を失った人からすれば、こんなことは災害のうちに入らないのだと思う。しかし、糊付けによる管の接続をすれば、今度水道管が凍結したときは破裂する可能性がある。そうならないように、あらかじめ水道管から水を落としておけば良いわけだが、「今回のような失敗を二度と繰り返さないと誓えるか?」と問われると、「それは出来ない」という答えしか返せない。
 それは、面倒臭がりで貧乏性の自分自身に対する不信なのだが、自分の愚かさに対する懲罰という意味もあったし、その制限によって、失われた水の何割かでもいいから取り戻せたら……というセコイ思惑もあった。それによって私は、災害を復旧するのではなく、上水道の機能を制限するという対策にした。
外の立ち上げ  この状況のままで上水道を使おうと思えば、我が家で最も低い位置にある外の水道の蛇口から出すしかない。まず、その栓を全開にしてから雪を掻き分け掻き分け、はるばる元栓まで行き、それをほんの少しだけ開ける。すると、メーターに付いている流水インジケーターが、ごくゆっくりと回り始める。そしてしばらくすると、鍋の中に水が落ちるチョロチョロという音が遥か我が家の方から聞こえて来るのだ。
 そのようにして鍋に溜めた水は、まず浴槽の中に補充する。必要と思われる量に達するまで、それを何度か繰り返すのだが、この蛇口の栓を閉めたり、これ以上水圧を上げたりすると、屋内の管の外れているところのどこかから、また水が噴き出すことになるので、風呂場へ行っているあいだは別の鍋に溜めておく。
 最後は鍋の中に飲料水を溜める。元栓を閉めに行くあいだに出ている水も、もちろん溜めておく。あれだけ無駄に流したのだから、もう一滴も無駄にするわけにはいかないという意地があった。
 元栓との間を何度も往復していられないので、水を出すのは一日一回、雪が止んでいるときに集約することにした。食事の際に使った食器は、朝昼は洗わずそのまま使い、夕方のそのとき一度に洗う。そして、私が最も楽しみにしている晩酌には、ツルツルピカピカの食器で臨むのだ。それを使った後は朝までそのまま。これは、台所の気温が平均摂氏3度(冷蔵庫内部より低い)で、ハエその他の虫の活動が完全に停止しているという、真冬の我が家だからこそ出来ることだ。
 以前、間借りして生活していたネパールの農家の水道の立ち上げは、中庭に一つしかなかった。だから、炊事も洗濯も体を洗うのも全部その場所ですることになる。そのときのことが懐かしく思い出された。しかし、今の我が家で顔や手足を洗うのは、浴槽に溜めてある水だ。ちょっと手を洗うのに、一々外に出るよりこの方が楽なので。
 風呂用の手桶で汲んだ浴槽の水を右手に注げば、片手ではあるが顔が洗える。手桶の取っ手を両手で持ち、そちらに傾けると、中の水が取っ手側に流れるので、両手と取っ手が一度に洗える。前にも述べたように、このようなことは初めてではないので、あまり苦にはならなかった。
 その一方、最初は風呂に入れないのが困った。それでも、薪ストーブで湧かした湯によって、部分的に洗うことは出来たので、その問題も克服することが出来た。
 洗濯も工夫すれば出来ないことはなかったが、その手間暇を考えると面倒なのでやめた。冬のことなので、ほとんど汗が出ていないせいか、着替えるペースは夏に比べてずっと長い。あとは溜まったものを、屋内の水道が再開してからまとめて洗えばいい。
 蛇口をひねれば、好きなだけ水が出せるということに慣れてしまっていると、恐ろしく不便な生活をしているように思える。しかし、ドスン! という音を立てて管が抜けたり破裂したりする恐怖をまた味わうことを思えば、このくらい何ともない。
 このまま春になり、管が糊付けされて屋内の上水道が再開し、「メデタシ、メデタシ」となるかと思えたが、世の中そう甘いもんではなかったのである。

二次災害

 上水道管の中の水が凍結するということは、今までの経験から知ってはいた。ところが、ここに及んで全く予測することの出来ない事態が生じたのである。
 それにまず気付いたのが1月も半ば過ぎ、風呂場のコンクリートの床の上で手を洗っているときだった。
『あれ、水が溜まってる。』
 風呂場の床に水が溜まっているのである。つまり、外に流れていないということだ。
 そのうち溶けるだろうと思い、放っておいたのが間違いだった。それはどんどん溜まっていき、夜や寒い日には氷になった。そのうち、風呂場の床全体に水が溜まってしまい、飛沫が跳ね返るので、もうそこで手や顔を洗うことが出来なくなった。
 その下水の表面に氷が張った。浴槽の中のきれいな水に氷が張っているのには慣れてしまったが、下水に張った氷には慣れなかった。
 仕方なく、浴槽から汲んだ水を、今度は台所や洗面台に持って来て使うようになった。すると、またもや怪奇現象に遭遇した。
下水の凍結 『あれ、水が流れて来た……』
 夜、台所で晩酌をしながら、浴槽から汲んで来た水でジャガ芋を洗っていたら、流し台の下からサンダル履きの足元に向けて水が流れて来たのである。どうやら、芋を洗った水が外に排水されず、流し台の下の管の継ぎ目から逆流して来たようだ。それは、見る見るうちに氷になった。
『管の中も凍ってるのかな? 湯を流せば溶けるだろう……』
 私は軽い気持ちで、ポットの中に溜めてあった湯を、流し台の排水口に注いだ。
 ところが、それはまた先ほどのようにして、床の上を流れて来たのである。試しに洗面台の排水口に水を流してみたが、結果は同じだった。洗面台の排水は、台所の流し台の下でそこの排水と合流するような配管になっている。そのため、それはやはりそこから流れて来たのだ。
 飲んでいるときに面倒なことをすると、酒がさめて勿体無いので、この怪奇現象の調査は翌日することにした。
 翌日、明るくなってから勝手口の排水管を見てみると、管の中はカチンカチンに凍っていることがわかった。次に、雪山を乗り越えて風呂場の方へ回って見ると、排水口のある場所には、1メートル近い雪が被さっていた。ここも多分カチンカチンなのだろう。
 洗面台と台所兼用の排水口は、先ほども登場したこの下左の画像に「下水」と示してあるものだ。風呂場のものは右の画像に「排水」と示してある。
水の出入り口 洗面台と台所兼用の排水口
 ここに屋根から一度に大量の雪が落ちると、この下の画像のように、それぞれその先が塞がってしまう。
風呂場の排水口 風呂場の排水口
 雪の量が少なかったり、流す水の量が多かったりすると、管の先の雪は溶けてしまうので、それ以上何も起こらない。
 ところが、今回のように雪が多く、水の使用をチビチビと制限していると、その水は中で氷になって外へ排出されなくなる。それはどんどん蓄積されていき、やがて管の中は氷の塊りになってしまうのだ。そうすると、湯を流してもなかなか溶けないし、中途半端に溶かしても、またチビチビと水を使っていれば夜間に凍ってしまうので元の木阿弥だ(死語か?)。
 そんなわけで、なんと今度は下水道も使えなくなってしまった!!!
 その中の氷を溶かすには、管の外から全体に少しずつ湯を掛け、通り道を確保してから湯を流す。そうすれば、湯が少しずつ流れながら氷を溶かすので、復旧することが出来るのだろうが、それには大量の湯と、多大な労力と時間を要し、台所の床を水浸しにしなければならなくなる。そのため私は、中の氷が自然に溶けるのを待つという道を選択することにした。
 さあ、それからが大変だ。ちょっと手を洗うだけでも、浴槽から手桶に水を汲んで来て、わざわざ玄関や勝手口から外に出て洗うという生活になってしまった。家の中に水が入って来ないのも困るが、下水を排出しなくなるということが、これほどまでに不便なことだとは思わなかった。

 それから約2ヵ月後の3月24日、友人に送ったメールである。

 この冬は、我が家を乗っ取り兼ねない巨大鼠軍団の侵入(結局大小12匹あの世へ送って壊滅)、上下水道の凍結と破損による約三ヶ月間の水周りの障害(一昨日ようやく完全に復旧)等、今までになく大変なことになりましたが、それだけにその終焉は事のほか喜ばしいものです。
 家の周辺の雪も今月一杯で完全に溶けることでしょう。

   田野呵々士

 よりにもよって我が家のは、前の冬に死んでしまって不在となっていたので、この冬のネズミの害は入居当初と同じくらいひどかったのだ。
 我が家がある集落は雪深いため、冬期間の水道メーターの記録は行われず、月々の請求は予測値によって行われる。そして、春になってから3か月分まとめてメーターが記録されて計算され、誤差を修正することになっている。それが、あれだけ大量の水を放出したのにもかかわらず、いつもの月と同じ「2立方メートル未満」であったのには驚いた。それは、これだけの長い期間、いかに水の使用が制限されていたのかを物語っている。

2006年~2009年

暖冬

 この3年間は、水道管を壊すことがなかったどころか、一度も元栓を閉めに行かずに済んだ!
 学習機能が壊れているというか、怠け癖がそれに勝ってしまうような私なのだが、前回のことがかなりこたえて、災害予防のための努力をしたからだろうか?
 いやいや違う。
 この期間は、積雪が滅茶苦茶多いときもあることはあったが、全体として気温がそれほど下がらなかったからだろう。それしか考えられない。自分では、特別なことを何もしていないのだから。

2010年

人災は忘れた頃にやって来る

 「地震・雷~」と同じような感じで、「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉がある。これも、あまり耳にしなくなった。近頃の地球上では、忘れられないような規模の天災が次々と起きているためかも知れない。
 しかし、我が家における「水道管破裂」は、今のところ天災ではなく人災だ。人間の力で防ごうと思えば防げるものを、手を抜いたがために災害にまで発展させたのだから。
 また、「三歩歩いたら忘れる」という言葉もある。主に犬や猫に対して使われる言葉だが、これは自分に当てはまると私は密かに思っている。
『アレ? 今何を取りにここへ来たんだっけ???』
 とか、便所を出てからそこの電灯を消したのに、
『アレ? ちゃんと消したっけ???』
 と、見に行くようなことが少なからずあるからだ。
 そのため今回の我が家では、「人災は三年たったら忘れて起きた」と言える。水道の元栓を閉めて水を落とすということを三年間していないと、あれだけの恐怖や不便さの記憶までもが薄れてしまうのだから、自分の学習能力がいかに低いかを痛感させられる。
 それは、2月に入って間もなくのことだった…………

対策->ヌケサク

 いつも利用している某社のネット天気予報を何気なく見ていたら、節分の日、すなわち2月3日の最低気温の予報が、なんと-3度になっていた。北海道の人からは笑われるかも知れないが、これは一大事だ! 日本海の暖流に洗われているこの地域で、そこまで下がるということは滅多にないことだからだ。しかも我が家は山間地にあるので、それよりも更に下がる恐れがある。
『その対策をしておかねばならないな。』
 そう思った私は、コタツから重たい腰を上げてコートを着た。
 この作業の前には、まず水道の元栓の場所を確認しておかなければならない。そのために、例の如くスコップを持って雪を掻き分け掻き分け行くわけだが、それはいつものようにはいかなかった。数日前から降り積もった雪のため、その小道には竹や笹が何百本も倒れており、それらはなかば雪に埋まっている。その道無き道に沿って、長さ10メートル、幅4メートル、深さ1メートルほどの池があるのだが、凍った水の上に雪が積もっているので、その場所がはっきりと確認出来ない。その底には、永年の間に降り積もった落ち葉などが堆積しており、底無し沼のようになっている。
『こりゃ遭難するわ。』
 ここを進んでいくと、生命に危険が及ぶであろうことを、私の本能が強く感じた。
 そこを迂回して、なるべく雪が少ない場所の倒れている竹の上を歩くようにしたのだが、たまにそれを踏み外すと、脚は膝の上まで雪の中に埋まった。
 ようやく、例の大きな杉の木のところまでたどり着いた。そして、思い当たる場所を掘ったら、それはすぐに出て来た。いかに学習能力の低いこの私でも、さすがにあれだけの期間、毎日往復をしていたのだから、脳の奥深く、いや、遺伝子の中にまでその情報が刻み込まれているのかも知れない。
 元栓の場所が確認出来たので、また雪に脚を取られながら家に戻る。
 まず、大きな鍋と薬缶に飲料水を蓄える。次に風呂場の水道の蛇口を全開にして、浴槽にその水を溜める。そして、台所の流し台に大きな鍋を置き、そこに水を流しっ放しにする。これも飲料水だ。あとは、洗面台と洗濯機の蛇口もそれぞれ全開にする。
 外の蛇口は、多分管の中まで凍っているだろうと思ったので、そのままにしておく。そしてまた元栓のところまで行って、それを閉め、作業を完了する。
『やれやれ、これでもう安心だ。』

余裕の笑み

 その翌日も、そのまた翌日も、天気予報での最低気温は-3度になっていた。しかし、私は何も怖くなかった。水道管の中に水が無ければ凍ることはないからだ。
 3日目、飲料水が切れてきたので元栓を開けてみた。家に戻って確認してみたが、どの蛇口からも水は出なかった。屋内のものは、その入り口で凍っているのだろう。そこには断熱材が巻いてあるので、一度凍ると容易に溶かすことは出来ない。
 その一方、外の水道の立ち上げなら、比較的簡単に溶かすことが出来る。日中気温が上がったときを見計らって、まずその蛇口に湯を掛けたら、それはすぐ回るようになった。次に、その立ち上げにも少しずつ湯を掛けていくと、3分ほどしてからポタリポタリ蛇口から水が落ちて来た。こうなればもう、放っておいても中の氷が自然に溶け、やがて勢い良く水が出て来るようになる。
 外の蛇口が自由に使えるようになったので気分爽快だった。余裕の笑みだ。
 あとは気温が上がれば、管の中の氷が全て溶け、家の中からも水が出るようになるはずだ。見たところ、どこも外れていなかったし……
『見えていない部分、例えば地中で外れているのでは?』
 という一抹の不安はあったが……………………

不安的中

 5日目。予報では、最高気温が4度まで上がるとのこと。
『来るかな?』
 と思っていたら、案の定来た。午後になってから、突然台所の方で水の落ちる音が聞こえたのだ。水は勝手口横の分基点という、意外な部分から噴き出していた。そこには断熱材が巻かれているので、管が外れているのが見えなかったのだ。不安が、ある程度的中したわけだ。
破損した箇所
矢印のように水が噴き出した
 そのように、ある程度予想していたので、そのこと自体にさほど驚きはしなかった。しかし、雪に脚を取られながら、またあの元栓まで何往復かしなければならないことと、管の断熱材をはがしてまた糊付けしなければならないことを思うと憂鬱になった。
 普通の人なら、ここですぐに管の修理をするのだと思う。しかし、面倒臭がりで、少しぐらいの生活の不便さを何とも思わない私は、元栓を閉めたままの生活を、またしばらくすることに決めた。予報だと、明日も氷点下まで下がるそうなので、もっと気温が上がるのを待つことにしたのだ。この破損箇所よりも低い位置にある外の蛇口を全開にして、そこから水を少しだけ出すようにすれば、破損箇所から水が噴き出すことなく水道が使えるのだし。
 さて、水を落としたはずなのに、なぜこんな場所が凍ったのだろうか? 単なる推測でしかないが、それは外の蛇口を開けなかったからだろうと思う。
 下の二つの図は、いずれも我が家の水道の蛇口の上下関係を示している。洗濯機と風呂場のものは、実際にはこの図の面に対して垂直方向にあるのだが、全部一度に見れるようにするため、このように描画した。灰色の管の中の水色は、水を示している。
正常 今回
 左側は、全ての蛇口を全開にして正常に水が抜けた状態。右は今回のもので、外の蛇口が凍っていたためにそれを開かない場合だ。
 これを比較してお気付きの通り、外の蛇口を開かないと、水は風呂場の蛇口の高さまでしか下がらない。そのため、今回破損していた部分が凍結していたことを証明することが出来る。

復旧工事

 災害の復旧工事は、その3日後の2月10日に決行する。
 まず、水道管を建物に固定するための「サドル」という金具のネジを外すことから、それは始まった。
 次に、水が管のどこから噴き出したのかを調べるために、断熱材に巻いてあるビニールテープをはがす。
怪しい箇所 水道管
 水が噴き出した方向から推測するに、それはTの字をした継手(専門用語で「チーズ」と言う)の、横方向の部分が破損したと思ったので、私はまずそこの断熱材をカッターナイフで切ってチェックしてみた。しかし意外なことに、横に引っ張ってもそれは抜けなかったので、上方向の部分を切開してみた。そして、管を持って上の方に引っ張ると、果たしてそれは継手からスッポリと抜けた。それによって、ここが破損した箇所だということがわかった。
 前章の図でもご説明した通り、これより上の管の中は空になっていたはずなので、縦方向に氷が膨張しても、それによって管が押されることはなく、むしろ水が詰まっている横方向に抜ける方が自然だと思うのだが、水の動きは以外と奥が深いので、他に何らかの理由があったものと考えられる。
抜けていた箇所
 管を継手から抜いて、双方の口の水を布で拭き取り、そこに接着剤を塗る。その際、管と継ぎ手の双方に塗らないと、またこのようなときに管が抜けて水が噴き出すことになる。また、速乾性の接着剤を使用する場合は、作業を出来るだけ迅速に行なわなければならない。
水道塩ビ管用接着剤
塩ビ管の水道工事に無くてはならぬ強い味方
 管を継手の中にしっかりと押し込む。
糊付けして管をはめ込んだところ
 次に断熱材を元の通り巻き付けて、その上からテープを巻き、最後にサドルで元通り固定して工事完了だ。
『やれやれ、ノーモア凍結! ノーモア手抜き!!!』
 北国もしくは雪国にお住まいのあなた。凍結予防の手抜きには、くれぐれもご用心を。


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