春は来ても端境期(はざかいき)なので、我が家の畑の野菜で食べられるものは、イタリアンパセリくらいになった。サヤエンドウ、じゃが芋、小松菜、春菊などは、種まきしたばかりで、収穫までまだ間がある。また、巷の店では白菜も大根も旬の倍の値段になっていて、容易に手が出ない。
こんなとき、うまい具合に山菜が次々と芽を出していく。今は畑の隅のアサツキと野蒜(ノビル)が食卓に登場している。どちらも葱やニンニクの仲間なので、肉や魚料理によく合う。しかし、事情があって肉や魚がしょっちゅう手に入らないときには、それなりの食べ方もある。アサツキは、味噌汁や麺類の薬味で生臭さが気になる場合には、油で炒めて食べるとよい。今宵の食材にと、一掴み引き抜く。
フキノトウは、花が咲いてしまうと誰も採らなくなるが、花の下に付いている小さな葉が、なんと食べられる。これを両手に一杯ほどちぎって来る。
種まきの季節柄、畑をほじくり返していたら、昨年取り残したじゃが芋が一個出てきた。得した気分だ。これも今宵の食材にしよう。
自家製の漬物の汁は、普段は雑炊に入れたり、麺類の汁に利用したりしているが、これも今夜の料理に使おう。
揚げ物の油はオイルポットに移し、当然再利用しているが、ポットで濾された「揚げかす」も立派な食材だ。但し、その中に紛れ込んでいる魚の目玉は美味しくないので、あらかじめ取り除いておく。さて、それではこれらで一体何が出来るのだろう?
それが「えこのみ焼き」だ。よくありそうなネーミングだが……。
お好み焼きだと、ソースとマヨネーズを塗り、青海苔、鰹節、紅生姜をトッピングするのところだが、山菜の繊細な味を楽しむのなら、やはり醤油だろう。酢醤油、辛子醤油などもよい。紅生姜も合う。余談だが、私は自家製梅干の汁(梅酢)に生姜の千切りを漬けて、自家製紅生姜を作って常備している。これを食べると、市販の真っ赤な紅生姜の味の大半は着色料の苦味であることがわかる。
だいどころ 客間